Neetel Inside 文芸新都
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変態+シナモン*2/生産的非生産/ぽろいも


 シャッシャッシャッシャッ……
 
 香辛料でいうところとの「シナモン」というのは
「シナモン」という樹木の樹皮を剥がし、乾燥、発酵させたものなのである。
 
 シャッシャッシャッシャッ……

「……ハァ、…ハァ…。」
 枝の表皮をナイフで薄く削ぎ落としていく。
 内側の樹皮を削らないように、薄く、丁寧に、表皮だけを削ぐのだ。
 シナモンはデリケートなのである。
 
 シャッシャッシャッシャッ……

「ハァ…ハァ…。スンスン、あぁ、いいにほひだ。…ハァ、ハァ…。」
 辺りにフレッシュなシナモンの香りが立ち込める。
 市販のものとは違う、発酵前のみずみずしい香りだ。
 この香りを嗅げるのは、シナモン生産者の特権だ。心から思う、生産者になってよかった。

 シャッシャッシャ。

「ハァ…ハァ…。一枚脱げて綺麗になったね。さぁ、もう一枚脱ごうかぁ……。」
 表皮を削り終えると、コルク状の樹皮が現れる。うすい緑色で、とっても綺麗だ。
 
 サク、スィーーーー

「あぁ、これだよぉ、これがいいんだぁ……ハァ。」
 コルク状の樹皮にナイフを突き刺し、そこから慎重に樹皮を剥いでいく。
 香りがよりいっそう強くなる。もう、匂いだけでイってしまいそうだ。
 樹皮の下から、真っ白な幹がチラチラと見えるのが、また刺激的だ。
 
 スィーーー、ぺろん。

「全部脱げたねぇ……ハァ…ハァ…。」
 樹皮が落ち、純白の幹があらわになる。
「きれいにぬげたねぇ……真っ白で、すべすべで、いい匂いだぁ……」
 ――もう辛抱たまらんのである。
 僕はこの作業を始めてからずっと固くなっていた自分の幹を右手でにぎり、動かし始めた。
 
 シュッシュッシュッシュッ……ぺろぺろ……
 
 右手を動かしながら、シナモンの匂いを嗅いだり、シナモンの幹を舐めたり、
 くわえたり、甘噛みしたりする。
 
 シュッシュッシュッ……はむはむ……

「シナモン、いいよぉ……真っ白で…ハァ…すべすべでぇ……いいにほひぃぃ…。
 ……あぁ、もうイク……イクよぉぉぉぉぉ」
「ちょっとあんた、またやってるの!いい加減まじめに仕事しなさいよ!」
 ――また、妻に見られてしまった。
「さっさとソレしまって。……まったく、今が一番忙しい時期なの分かってるでしょ。
 まだ剥かなきゃいけないシナモンいっぱいあるんだから。」
 そう言われ、ふと横を見る。そこにはシナモンの枝が大量に積まれていた。
「そうか、まだこんなにあるのか……。」
 そう言って、僕は再び体が熱くなるのを感じた。


参考:http://www.youtube.com/watch?v=gYU4PKaa0Qg

       

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