Neetel Inside 文芸新都
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毒色3号電脳プシューケ
ある夜

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ある夜、西川口の町を散歩した。
別に何をするつもりでもなかった。
夏の蒸し暑い部屋よりは夜の町の風を感じたい気分だった。

色とりどりに彩られた光が歩く者を誘う。
ふと、一枚の張り紙に気がついた。
風俗店の名前とともに艶めかしい女性の写真がプリントされていて、なるほど男の欲を掻き立てる。
魅せられて、気がつくとその店の扉を開けていた。

「いらっしゃいませ」と見た目のわりに腰の低い男が迎え出る。
彼は大まかにシステムの説明をするが聞いていなかった。
別に何をするつもりでもなかったわけで、風俗店に入るのは初めてだったが興味はなかった。

「御指名はいかがなさいますか」

男は数枚の女性の写真を見せた。
何人かは美しかったが、何人かはさほどでもなかった。
その中で一人、ある女性に目が止まった。
まだあどけなさ残る感じの娘。美人ではないが可愛らしく魅力を感じる子だった。
幼馴染みに似ていた。初恋でもあった。

彼女は大学入学をきっかけに東京に引っ越し、以来連絡はない。
僕はその写真の女性を指名する。
忘れないからか、彼女が彼女でないことを確認したかったからか、僕は写真の女性を指名した。

個室で待つこと数分、娘はやって来た。

「失礼します」

---間違いない、そう思うと同時に胸が痛くなった。

「やっぱり・・・君なのか?」

「なんでこんなとこに…」

「君こそなんでこんなとこで…」

動揺のあまり声が振えていた。舌がもつれる感じがした。

「・・・私にだって、色々あるの」

淋しそうに呟く彼女が大人に見えた。
汚れた大人に。胸が切なかった。

「…する?しないの?」

僕の目を見ずに君は言った。
僕は月のように無言で

君の肩を抱いた


初めて見る彼女の全て。
もう僕の知らない人。
豊満な体、慣れた手つき、舌使い…愛撫。
何人の男たちが彼女を抱いたのだろう。
そう思うと僕は結局最後に彼女を汚すことができなかった。

「ごめんね・・・ごめんね」

彼女が申し訳なさそうに謝る。
事の後で何も答えることが出来なかった。
多分僕は涙を流さずに泣いていたのだ。
客と風俗嬢という形の幼馴染みとの再会は40分で終わりがきた。

「また会えるかな、今度は店じゃなくて」

「うん、きっと」

僕は嘘をついた。
二度と会うつもりはなかった。もう二度と。
僕の性欲と欲求不満は体内に残り、店のトイレでそれを自分で発射した。

ある夜、別に何をするつもりではなかったが、僕は・・・


ナニをしたのだった。

       

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