毒色3号電脳プシューケ
パノラマ星座展覧台
美しい夜の話をしよう。
夢と現実の狭間くらいの
暗いくて深い夜と、紫色になる朝の狭間くらいの話。
---僕が君の右手を持って、彼が君の左手を持って、君を案内した。
そこは雲にも届きそうな天空天覧台。
悲しみの底の君を慰めたくて、連れてきた。
パノラマの空は天気が悪くて真っ暗。
明かりの灯らない部屋も不気味。
本当はもっと星が出てると思ったからちょっとがっかり。
遠くの雲が雷鳴で光ったりして、
「ちょっと怖い」って君は笑いながら言った。
僕らは三人、寝ころんで、手を繋いだ。
僕と君の右手と左手、彼と君の左手と右手、
僕と彼の左手と右手は、君のおなかの上に置いて。
ずっと一緒にいようとか、そんなことを語りあってた気がする。
恋なんて無縁な、兄妹のような関係は壊れないと思った。
君の好きなオルゴールの曲が流れている。
暗くて深い夜の話。
僕は眠くなった。
目を閉じて、寝ようとした。
心地良い睡魔だった。
瞼の裏が明るくなったから、また目を開けて窓の外を見た。
大きくて紅くて神秘的な月が、雲の奥の地平線から顔をだした。
魔性のように美しい色で、宇宙と地平線の海を見たことない色に染めた。
例えるのが難しいけど、そうだな、
砂漠の月の夜明けとか、そんな言葉が頭に浮かんだ。
気がつくと夜空には星座さえ見えた。
名前は忘れちゃったけど。
星座を象る線がはっきり見えたよ。
朝が近づいたみたいだ。
天覧台は轟音を立てて回転し始め、ゆっくりと降下を始めた。
あんまり突然だったから驚いたよ。
いや正直に言おう、僕は本当に怖くて、
君といるドキドキなんてまったく忘れてた。
夜の街のネオンも綺麗だった。
誰か高名な職人が作った、ランプの星座。
天使の星座で、幾百万もの白いライトが夜空に輝いていた。
「本物の星よりも美しい星座、ガベリウスの最高傑作だ」と、老人は言った。
部屋は回りながら落ちていく。
「いつ終わるの?」
老人に聞いた。
「止まる前に合図として夜明けの調べが流れだす。つまり4時ごろじゃ」
時計なんてないから分かんないよ。
回転に身を委ねたまま、僕らは落ちていった。
落ちていった。
ロマンティックだろ、なあ