Neetel Inside ニートノベル
表紙

紅月の夜
2夜目 学校・体育・はぁいやな予感が当たった。

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夏休みも終盤に入り休みも後数えるほどになっていた。
リビングに居る俺の目の前の百鬼は暇そうにしながらソファーに寝転んでいた。
その横では白雪が小説を開き真剣な趣きで読んでいる。
かく言う俺はというと現在まで放ったらかしにしていた宿題の山と格闘中だ。

百鬼「マスター暇であります。」

百鬼はごろりと転がりながら俺の方を向いてそう言った。

十紀人「百鬼よ。俺は今猛烈に集中力を高めているんだ。」
白雪「百鬼。あまりご主人様を困らせるな。」
百鬼「うぅ~であります。」

百鬼は再びゴロゴロとソファーの上を転がり始めた。
ふと、俺はさっきまでいた静がいないことに気が付く。

十紀人「そういえば。静は?」
白雪「ん?先ほどちょっと出かけるといって出て行ったぞ。」
十紀人「そうか・・・」

丁度いいところで区切りをつけて持っていたシャーペンを投げ出しだ。
休憩しようとソファにもたれかかると宿題の山が眼に入る。
のこり4分の1といったところだろうか・・・。
空になったコップに眼をやると喉が乾いたことに気付かされる。
俺はコップを手にして何か飲み物はないかと冷蔵庫の中を漁ると牛乳が目に入った。
牛乳を取り出してコップに並々まで注ぎ終わり、ふと二人を見ると粋に言われたことを思い出す。

十紀人「学校か・・・。」

たしかに今後のことを思うと学校くらいは出ておいたほうがいいだろう。
まぁ、本人たちの意志も聞かないといけないわけだが・・・。

十紀人「はぁ~、ひとりで悩んでたってしょうが無いな・・」

俺はコップに入った牛乳を一気に飲み干して口を開く。

十紀人「百鬼、白雪。ちょっと話したいことがあるんだけど。」
白雪「何だ?」
百鬼「何でありますか?」
十紀人「学校に通ってみる気はないか?」
百鬼「学校でありますか?」
白雪「学校か?」
十紀人「そう学校、今後の事とか考えたらやっぱり学校くらい出ておいたほうがいいかなって思ってさぁ。まぁ学校は俺の通っている学校になちゃうけど・・・。どうかな?」
百鬼「行くであります!!」
白雪「私も賛成だ。ご主人様の護衛もできるしな。」

百鬼は今にもソファーから落ちそうになるくらい身を乗り出してくる。
白雪も嬉しそうにしながらそう言った。

十紀人「わかった。なら静と相談してみないとな。」
百鬼「学校でありますか。」

その日の夜に早速、俺は二人を学校に通わせたいと思っていることを静に相談した。
静は『いいと思いますよ。後は私がやっときますねお兄ちゃん』と喜びながら賛成してくれた。
こういう時は親父の子供でよかったと思ってしまう。
道明の名を出せば問題なく二人を学校に通わせられるだろう。
そうと決まれば後はこの宿題をとっとと終わらせて夏休みを終えるだけだ。
二人を学校に通わせることは不安ではあるが自分が思ったより嬉しそうにしているとに気がついて苦笑する。
・・・
・・


夏休みは終わり告げて普段の様に俺は教室の自分の席について教師が来るのを待っていた。
教室を見渡すと他の生徒たちは夏休みの出来事などを仲がいい友達と会話を楽しんでいる。
俺はというと一人で窓の外を眺めていた。
学校にはこれといって仲のいい友達もいない・・・いや、まともに話せる相手なんて静くらいしかいないのだ。
それを考えると俺にとっても百鬼や白雪がこの学校に来るのはいいことなのかもしれない。

十紀人「少しは学校も楽しくなるのかな?」

そんなことを考えていると教師がドアを開けて教室に入ってくる。

先生「静かにしろぉ。あと席に着け。」

教師の声にみんなが反応して各自の席についていく。

先生「さて、今日このクラスに転校生が3人ほど来ている。」

教師がそういうと静まり返った教室がまた騒がしくなる。
しかし3人とはどういう事だ?

先生「お前ら入って来い。」

当然のように白雪と百鬼が教室に入ってくる。
男子たちがざわざわと話し始める。
それはそうだろ、この学校には可愛い人や綺麗な人はいるが白雪や百鬼は群を抜て可愛い。
男子たちが騒ぐのも分かるというものだ。俺の初めてあったときは見とれたからな・・・。
そして最後に入って来た人を見て眼を見開いた。
それは俺の知っている奴で想像もしていなかった奴だ。

教師「おぉい。静かにしろよぉ。まぁ右から自己紹介を頼む。」
白雪「私は白雪だ。わけあってこの学校で世話になることになった。不束者だがよろしく頼む。」
百鬼「百鬼は百鬼であります。今日から世話になるであります。よろしくであります。」
粋「僕は伊集院粋です。よろしくお願いします。」
先生「みんな、仲良くするんだぞ。」

そう、転校生の最後の一人は粋たっだのだ。
粋は俺の方を見て笑いかけていた。
俺はというときっと驚いた顔をしているだろうな。

先生「席だが空いているところに適当に座ってくれ。」

教師がそう言い終わると同時に二人がすごい速さで走りだした。
その直後俺の隣にある空いている席で激しい衝突音がする。

百鬼「白雪、どうしたでありますか?」
白雪「百鬼こそどうした。ここは私の席になる場所だ。」
百鬼「この席は譲れないであります。」
白雪「いいか、百鬼よ。逆に考えるんだ。どこにいてもお主人様の近くであることは代わりがないと。」
百鬼「それなら白雪が別の席に付けばいいであります。」

そんな百鬼と白雪の行動をクラスのみんなは何が起きたかわからないという表情で眺めている。
二人を学校に通わせるのはいろんな意味で間違いだったのかもしれないと思いため息を漏らす。
そんな二人を横目に粋は俺の前の席について俺の方を見て話しかけてきた。

粋「旅行以来だね。」
十紀人「粋。なんでお前が・・。」
秀人「まぁ説明すると長くなるからまたおいおいってことで。」
十紀人「お、おう。」

粋はそのまま自分の席について荷物をまとめだす。
再び横に目を戻すと白雪と百鬼は未だに席の取り合いをしていた。
教師も呆れたように二人を見ているが俺の関係者だから何も言えないのだろう・・・。

白雪「いい加減席を譲ったらどうだ?」
百鬼「白雪が譲ればいいであります。」
白雪「このままでは埒が明かないと思わないか百鬼。」
百鬼「そうでありますね。」
白雪「では、どうだ?ジャンケンで決めるというのは」
百鬼「望むところであります。」
白雪「ではいくぞ。せーの!!」

どうやら俺の隣の席をめぐる戦いは終わりを迎えたようだった。
結局、俺の隣の席には百鬼がご機嫌といった感じで座っている。
白雪はというと俺の後ろに用意された席に座って窓の外を眺めていた。

先生「連絡事項は以上だ。」

今日一日の連絡事項を話し終えると教師は教室を出て行った。

粋「久しぶりの学校だよ。」

そう言いながら粋が俺の方を向いてくる。

十紀人「それより説明しろ。なんでお前がここにいるだ?」

粋は政府から追われている身なのだ。
それに俺の誘いを断っていた粋がなぜここに転校してきたのだ。
粋が転校してきたことを驚かないほうがおかしい。

粋「いろいろ調べたら、しばらくの間は政府も動かないみたいだし。今は僕の周りも落ち着いてきて暇になったところに十紀人と同じ学校に通えるって話が来たから・・・それに黒川が十紀人の学校に行けって五月蝿いからね。」
十紀人「黒川が?」
粋「うん。それに僕も十紀人と一緒な学校で過ごしたいと思っていたのは確かだしね。」
十紀人「粋・・。」

俺は粋の一言に嬉しくなり目の前で微笑んでいる粋を見つめてしまった。

白雪「粋。黒川は来なかったのか?」
粋「うん。誘ったけど振られてしまったよ。僕や十紀人は好きでも人は好きになれないんだってさ。」
白雪「そうか。」
十紀人「残念だなぁ。」
百鬼「百鬼はマスターがいれば問題ないであります。」
十紀人「うわ!!」

となりで話を聞いていた百鬼がいきなり俺に飛び付いて来た。

白雪「なっ!!百鬼!!貴様!!なんとうらゴホゴホ!!ご主人様から離れろ!!」
百鬼「嫌であります。それに離れる理由が無いであります。」
白雪「貴様あぁぁぁ!!」
粋「はははは。相変わらず仲がいいね君たちは。」
十紀人「はぁ~。そう言える。粋が羨ましいよ。」

ふと、みんなの驚きの視線が俺に向けられている事に気が付く。
それもそうか・・・学校の中では俺は静くらいとしか話さない暗い奴くらいで通っているであろうそんな俺が今は笑顔で仲間と呼べる人たちと話しているのだ。
みんなが驚くのもうなずけるというものだ。
一人の生徒が俺達の方に近づいて来る。

生徒A「十紀人くん。」
十紀人「な、なにかな。」
生徒A「えっと、良かったら転校生の紹介をして欲しいんだけど・・・。」
十紀人「え?」

今まで話そうとしなかった生徒が俺に話しかけてきた。
嬉しいというより驚きのほうが先に来てしまった。

生徒A「いや、迷惑じゃなからでいいだ。」
十紀人「迷惑なわけないじゃないか。な!粋、白雪、百鬼。」
粋「うん。」
白雪「あぁ。」
百鬼「しかたないでありますね。」

そうして俺達の周囲に一気に人だかりができる。
クラスとの間に出来た溝が埋まった瞬間だった。
・・


生徒B「俺、十紀人くんのこと勘違いしてた。こんな面白い奴だとは思わなかったわ。」
粋「十紀人は人見知りするからね。話しかけられないとあまり話さないんだ。」
白雪「初耳だな?」
百鬼「百鬼たちには人見知りしていなかったであります。」
粋「十紀人は可愛い女の子に目が無いからね。」
十紀人「なっ!そんなことはないぞ!!」

クラスから笑い声があふれる。
みんなを勘違いしていのは俺の方だった。
昔みたいな理由で俺を避けていたのではなく誤解をしていたそうだ。
話しかけたら退学にさせられるとかいろいろな変な噂が立っていたらしい。
その誤解も解けて俺はクラスのみんなと打ち解けられた。
これも粋や白雪や百鬼のお陰だろう。
俺は難しく考えすぎていたようだ。きっかけさえあれば誰とでも打ち解けることが出来る。
そのきっかけをみんなが作れた。
俺は3人の顔を見る。

十紀人「感謝しなくちゃな。」
百鬼「どうしたでありますか?」
十紀人「いや、なんでもない。」
生徒A「ところで気になったんだけど白雪さんと百鬼さんはなんで十紀人くんのことご主人様とかマスターって呼んでるの?」

しまったあああぁぁぁぁ!!!
その姿を見届ける影がいた。

静「はぁ~。敵わないですね。私に出来なかったことを一瞬で出来てしまうですから・・。」

静は静かに自分の教室へと足を進める。
俺達が質問攻めから解放されたのは昼休みに入ってからだった。
結局、粋の起点の聞いた嘘で白雪と百鬼は俺のメイドさんと言う事になってしまった。
男子は『そうなんだ』っと言って笑っていたが目が全然笑っていなかった。

十紀人「疲れたぁ。」
静「どうぞ。」
十紀人「ありがとう。」

静は俺の目の前にお茶が入ったコップを静かに置く。
俺達は今屋上に来ている。

粋「僕もさずがに疲れたよ。」
白雪「ご主人様と粋は軟弱だな。」
百鬼「それにしてもすごい勢いであったであります。」
静「それでもお兄ちゃんがやっとクラスに打ち解けることが出来たのはいいことですね。」
十紀人「うん。まぁな。みんなには感謝してるよ。そのお陰でここも・・・」

そう言って俺は屋上の見渡すと以前までは俺と静しかいない寂しい屋上は今や生徒たちで賑やかになっている。
それというのも静に頼んで昼の校内放送で屋上を生徒に開放したという情報を流してもらったのだ。
みんなが学校に来て一日で俺の学校生活はガラリと変わってしまった。

静「ではお昼にしましょう。今日は白雪さんと百鬼さんそれに粋さんの転校祝に豪華にしてみまた。」

そう言って静が重箱の蓋を開けるとそこには色とりどりのおかずが広がっていた。
そしてもう1段には1口サイズに切られた手巻き寿司が綺麗に並んでいる。

百鬼「流石、静であります。百鬼が好きな唐揚げがたくさんであります!!」
白雪「うん。卵焼きもあるな。」
粋「へぇ~すごいね。静ちゃんはいいお嫁さんになりそうだ。」
静「へ!?いや、粋さん何言ってるんですか。」

静は顔を重箱の蓋で顔を隠しているが赤くなっているのがよくわかる。

十紀人「粋。静はやらんぞ。」
粋「大丈夫だよ。十紀人の物はとらないよ。」
静「お兄ちゃんの物だなんて・・・///」
百鬼「あっマスター!百鬼の唐揚げは渡さないでありますよ!!」
白雪「お前は静かに食べれんのか!!」

こうして無事に3人ともこの学校に通えるようになったのだ。
・・・
・・


粋や白雪や百鬼がこの学校に来てから数日たったある日俺は授業をサボるべくチャイムがなる直前に教室を出て中庭にあるベンチで寝転がっていた。
まだ残暑が激しくもうすぐ9月に入り衣替えだというのに未だに額には汗をにじませる。
葉っぱの隙間から陽射し漏れて眩し感じられて俺は目を静かに閉じる。
風が吹くとちょっと冷たくなった風が気持よく感じられた。

白雪『ご主人様、授業が始まっているぞ。』

ふと白雪からの意識通信が飛んでくる。

十紀人『ちょっと気分転換にその空気が吸いたくなってね。』
白雪『サボリというやつか?』
十紀人『そんな感じ』
白雪『ご主人様は不良というやつなのか?』
十紀人『そんなことはないぞ。俺はいたって真面目な優等生だ。』
白雪『優等生は授業をサボらないとおものだが?』
十紀人『優等生にも息抜きの時間が必要だってことさ。』
白雪『ものは言い様だな。』
十紀人『ははは。・・・そういえば百鬼はどうした?』

こういう時、真っ先に文句を行ってきそうな百鬼がまだ何も言ってこない。

白雪『気持よさそうに寝ているさ。』
十紀人『あぁなるほど・・。』
白雪『さて、私は授業に集中する。』
十紀人『おう。がんばってな。』

意識通信終了っと。
目を開くと清々しい青空が視界に広がる。

女「こ、こんにちは」
十紀人「ん?」

声をかけられて起き上がり声のする方を向いた。
そこには以前から何度か話しかけてくれていた前髪で眼が隠している少女が立っていた。

十紀人「君は!!何度も俺に声をかけてくれた子だね!!」
女「覚えててくれたんですね。嬉しいです。」
十紀人「当然さ俺は美人さんを忘れない体質なんだ。」
女「美人だなんて・・・」

頬が赤く染まるのがなんとも可愛らしい。

女「あ、あの隣いいですか?」
十紀人「もちろん。大歓迎さ。」

俺の返事を聞いて彼女は口元を緩ませる。
表情が掴みづらいがきっと微笑んでいるのだろう。
彼女が俺の隣に座ると風によって運ばれた女性特有の良い香りが漂ってくる。

十紀人「授業中だけど、どうしてここに?」
女「ちょっと授業が息苦しなってしまいまて保健室に行くと嘘ついて出て着ちゃいました。」
十紀人「君は不良さんなのかい?」
女「違いますよ。いたって普通の女の子です。」
十紀人「ははは。まぁ俺も人のこと言えないけどね・・。」
女「ふふふ。そういえば自己紹介がまだでしたね。私は隆条楓っていいます。」
十紀人「楓ちゃんか。俺は・・」
楓「道明十紀人さんですよね。以前から知っていました。」
十紀人「君みたいな人に知ってもらえているなんて光栄だな。・・ところで楓ちゃんは俺と同学年だと思うんだけど・・どこのクラスなのかな?」

俺は彼女のリボンを見てそういった。

楓「私は6組です。」
十紀人「って事は俺とは別のクラスになるのか・・。」

目が隠れているが顔の形やパーツからかなりの美人・・いやかなり可愛い子なのだということが分かる。
おそらく静と同レベルくらいのカワイコちゃんだろう。
別のクラスにこんな可愛い子がいたとは俺もまだまだだな。

十紀人「前から俺のこと誘ってくれていたけど断ってばっかりでごめんね。」
楓「いいんです。私が十紀人さんの都合も考えないで誘っていたので・・。」

なんていい子だ!!などと叫んでみる。

十紀人「でも、なんで俺なんか誘ってくるんだ?」
楓「ずっと前の話です。」

彼女は俺の方に向いていた顔を前に向けて話し始めた。

楓「私がこの学校に入ってまだ間もないころ学校の帰りに変な人たちに裏の路地の方に連れて行かれそうになったとき助けていただいた時がありました。その時十紀人さんは慌ててどこかに行ってしまったのでお礼も言えずじまいでした。改めてあの時はありがとうございました。」

そう言いながら楓は俺に頭を下げてきた。

十紀人「頭を上げてくれ、俺はそんなたいしはしていない。」
楓「はい。」

彼女はゆっくりと頭をあげる。
しかし、俺はどうやら彼女を助けたらしい。
たしかに昔から困ったような人は助けてきたがその中に彼女のような人はいただろうか・・。
いや、もしかしたらいたかも知れない・・・記憶が曖昧ではっきりと思い出せない。
楓は再びゆっくりと口を開く

楓「同じ学校いた事は知っていましたがなかなか話しかける勇気を持つことが出来なくていつも遠くから見ていました。クラスの人に協力してもらい話しかけることが出来たのです。」
十紀人「それがあのお昼を誘ってくれた時か。」
楓「はい。あの時どこかお急ぎになっていましたがご迷惑だったでしょうか。」
十紀人「迷惑なわけがない!むしろ光栄だ!!」
楓「そうですか安心しました。」

そう言って彼女は嬉しそうな顔をする。

楓「あ、あの。」

楓は立ち上がり俺の方を向いて口を開いた。

十紀人「ん?」
楓「よ、良しかったら。わ、私とお、お友達になってくれませんか。」

彼女は立ち上がり俺の方を向いて顔を下にむけてめいっぱいっといった感じで俺の方に手を差し出してきた。
その姿が悄らしいく大和撫子という言葉がぴったりと合う。

十紀人「こんな俺でよければ。」

俺も立ち上がり出された手を握って俺は答えた。
そうすると楓はさっきまで下に向けていた顔を上げて嬉しそうな顔をする。
目が見えないのが残念だがこれこれでなかなかそそられるものがあるというものだ。

楓「ありがとうございます。あ、あの、今度お昼をご一緒できたらうれしいです。」
十紀人「喜んで。いつでも誘ってくれていいから」
楓「はい。では私はこれで失礼します。」

彼女は顔を真赤にしながら繋いでいた手を離すと足早に校舎の方に消えていった。

十紀人「・・・可愛い。」
粋「たしかに可愛らしい子だったね。」
十紀人「なっ!!お前いつから!!」
粋「さっきかな。」
十紀人「粋!このことはみんなには・・」
粋「わかったよ。僕は十紀人のハーレム化を邪魔したりなかしないよ。」
十紀人「っば!!別に俺はハーレム化なんて!!」
粋「あはははは。分かっているって。」
十紀人「笑いながら立ち去ろうとするな!!それにお前はちゃんとわかってない!!俺はだな――――。」
粋『黒川。聞こえる?』
黒川『なんでしょうか。』
粋『隆条楓って人について調べてくれない?』
黒川『わかりました。けど、どうかなさいました。』
粋『ちょっと気になることがあってね。』
黒川『わかりました。早急に調べます。』
粋『頼んだよ。』
十紀人「聞いてるのか?」
粋「ごめんごめん。聞いてるよ。」
十紀人「まったく。」

二人が校舎の方に消えていく校舎の窓から眺める影が・・・。

楓「普通の女の子ですか・・・我乍ら滑稽ですね・・・。」
???「楓お姉様。」
楓「翆。」

声をかけられた楓が振り向くとそこには緑色の瞳をした少女立っていた。

翆「楓お姉様の警護を任されました。」
楓「そうですか。私のはまだ安定しませんからね。」

そう言って楓は自分の胸元に眼をやる。

翆「・・・・。」
楓「それより・・・。」
翆「楓お姉様もお気づきですか。対処の隣にいる男・・。」
楓「はい。やはりあの情報は・・・。」
翆「どうします?」
楓「任務以外はできるだけ普通の女の子でいましょ。」

楓はそう言って翆の頭を優しく撫でる。

翆「楓お姉様。」

翆は気持よさそうに眼を細めて楓に身をまかせるように寄り添う。
・・


百鬼「マスターは卑怯であります。百鬼に内緒で授業をサボるとは・・。」
白雪「お前は寝ていただけだろう。」
静「またお兄ちゃんは授業をさぼったんですか?」
十紀人「静よ。お兄ちゃんは時々授業をサボらないと死んでしまう病気なんだ。」
粋「あははは。そんな病気があるなんて初めて知ったよ。なんて病名なんだい?」
十紀人「急性怠業疾患病だな。」
静「はぁ意味のわからないことを言わないでください。怒りますよ。」
十紀人「うぅ~。」
百鬼「マスターがちっちゃくなってるであります。」
白雪「まぁ自業自得というやつだな、ご主人様。」
粋「まぁまぁ十紀人は成績が悪いわけでも無いんだからたまには多めにみてあげればいいじゃないかなぁ。」
静「そういう問題じゃないんですよ・・・もぉ粋さんはお兄ちゃんに甘過ぎです。」

などと俺は静の説教を受けながら弁当をつついている。
俺はふとさっき会った前髪で目が隠れた少女・・楓を思い出す。
どこか変わった雰囲気を持っている感じ・・例えるなら白雪や百鬼の様な感じだ。
だけどどこかが違う・・・何かが違う。

白雪「なんだ。ご主人様、鼻の下が伸びているぞ。」
百鬼「また他の女のことを考えていたでありますか!!」
十紀人「え!?そんなことはないぞ!!」
百鬼「怪しいであります。」
十紀人「怪しくない!!」
静「はぁ~お兄ちゃんは分かりやすいですね・・・。」
粋「まぁそれが十紀人のいいところでもあるからね。」
白雪「ご主人様。詳しく聞かせてもらおうか?」
十紀人「さらば!!」
白雪「なに!!百鬼ご主人様が逃げたぞ!!」
百鬼「左に回り込むであります。」
白雪「私は右だ。」
粋「賑やかだね。」
静「そうですね。粋さんお茶のおかわりはいかがですか?」
粋「貰うよ。静ちゃんは行かなくていいのかい?」
静「そう言うのは百鬼さんや白雪さんに任せます。」

粋はそんな三人の絡みをみて静の淹れたお茶を啜る。

粋「なにもなければいいだけど・・・。」
静「なにか言いました?」
粋「いいや、なんにも。」
・・・
・・


十紀人「はああぁぁぁぁ!!」
白雪「っく!!っは!!」

俺の踵落としを白雪はデバイスで受け止めて弾き返す。
弾かれた勢いを使って空中で回転して大勢を整えて着地に備える。
着地してすぐに白雪を見るとさっきまで白雪が立っていた場所に白雪の姿はなかった。

十紀人「後ろか!!」

振り向きざまに蹴りをはなつが虚しく空を斬るだけだった。

白雪「上だ!!」
十紀人「なっ!!」

白雪のデバイスは俺の顔の当たるか当たらないかのところ止まっていた。

十紀人「はぁ、今日も負けか・・・。」
白雪「ご主人様、落ち込むことはない。生命力もしっかりと制御されているし身のこなしもうまい。私も気を抜けば一本取られてしまうところだ。」
十紀人「でもなぁ・・・・。」
白雪「何度も言うがもっと自信を持て。」

そう言って白雪はデバイスをしまう。

静「お兄ちゃん。そろそろ学校に行く準備をしてください。」

静が朝の鍛錬をしていた俺たちを呼びに庭に出て来る。

十紀人「もう、そんな時間か。百鬼は?」
静「今起こしに行くところですよ。」
白雪「まったくあいつは・・。」
十紀人「まぁ百鬼らしくていいじゃん。」
白雪「ご主人様は百鬼に甘すぎだ。」
十紀人「そんなことないと思うけどな・・。」
静「ふふふ、朝から元気ですね。じゃぁ私は百鬼さんを起こしてきますね。」

そう言って静は百鬼の部屋に向かって行った。
俺達も自室に戻り着替えを済ませて部屋を出る。
リビングに入ると既にみんな揃っていて静の淹れたお茶を飲んでいた。

百鬼「うぅ~眠いであります。」
白雪「まったくお前は・・。」
百鬼「百鬼は低血圧であります。」
十紀人「百鬼おはよう。」
百鬼「ふぁ~おはようであります。」
静「お兄ちゃんも飲みますか?」
十紀人「あぁ、貰うよ。」

静は俺の前にお茶をそっと置く。
お茶の匂いがほのかに漂い鼻を擽る。
俺はそのまま湯のみに口を付ける。
茶葉本来の甘味を十分に引き立てられていて、自然で丸みのある味が口中に広がる。
ひとえにいい茶葉を使っていると言えばそれまでだろうがここまでうまいお茶を入れれるのは静の実力と言うべきだろう。

白雪「さて、そろそろ時間だな。」
静「これ以上ゆっくりしてると遅刻してしまいますね。」
十紀人「じゃぁ行こうか。」

湯のみに残ったお茶を飲み干して俺達は家を出る。
学校に向かう途中、前方で楽しそうに歩いてる百鬼と静を見ながら隣に居る白雪が口を開く。

白雪「平和だな。」
十紀人「たしかにね。」
白雪「いつまでもこんな時間が続けばいいのだがな。」
十紀人「続くさぁ。いや続かさせる。俺たちにはその力がある。」
白雪「そうだな。これからもよろしく頼む。ご主人様。」
十紀人「おう。」
百鬼「二人とも遅いでありますよ!」

俺と白雪は力強く返事をして前に居る百鬼や静のもとへ駆けて行く。
校門のところで粋と合流して教室の前で静と別れていつもの席に着いた。
知らぬ間にこの風景も俺の日常へと変わっていく。
教室の窓から見える空は青く透き通り、窓を開けると少し冷たくなった風が頬を撫でる。
まだ夏の暑さが残っているが四季は確実に移り変わろうとしている。
前を見れば粋が席について本を読んでいて横を見れば百鬼がまだ眠たそうにあくびをしていて後ろを見れば白雪が窓の外をながめている。
平和だ。
政府の人たちが動き出す気配もないし粋もなにも言ってこない。
このままずっとこんな日が続くのだろうか。
それとも束の間の一時なのだろうか・・・。
その答えは分からないがいつまでもこんな時間が続けばいい。
彼女たちが彼女たちでいられる時間がずっと続けばいい。
そう思い俺はもう一度みんなを見る。
このとき水面下で着実に政府が動いていることを俺も粋も知る由も無かった。
・・


昼休み、いつものよう屋上で賑やかに昼食をとっていると粋が小声で話しかけてきた。

粋「十紀人。」
十紀人「どうした?」
粋「海の時に話した神隠しだけど」
十紀人「なにかわかったのか?」
粋「いやなにも・・・」
十紀人「そうか・・。」
粋「不気味なんだ。ここまで情報が少ないとなると・・・。」
十紀人「まぁ悩んだって仕方ないさぁ俺はこの場所を守るだけだ。」
粋「ふふ。君らしいね。」
百鬼「なに、男どうしで寄り添い合ってるでありますか?」
十紀人「ッな!!別に寄り添い合って無いぞ!!」
百鬼「BLというやつでありますね。わかるであります。」
十紀人「分かるな!!」
白雪「百鬼よ、 BLとはなんだ。」
百鬼「ボーイズラもぐもぐ。」

俺は慌てて百鬼の口を抑えこむ。

十紀人「白雪はそんな事知らなくていいんだ。君は純白なままでいてくれ。」
白雪「そ、そうか、だけど主人様、百鬼が苦しいといているみたいだが。」
百鬼「もぐもぐふがふが。」
十紀人「おっと!ごめん。」

俺は慌てて百鬼の口から手を離す。

百鬼「はぁはぁ~苦しかったであります。」
静「お兄ちゃん食事中なんですからあまりはしゃがないでください。」
十紀人「うぅ~すいません。」
百鬼「マスターが怒られてるであります。」
十紀人「誰のせいだ誰の。」
粋「まぁまぁ賑やかなのだからいいじゃないかな?」
静「はぁ~粋さんはお兄ちゃんに甘すぎなんですよ。」
粋「あははは。僕は十紀人がすきだからね。」
百鬼「やはりBLであります。」
白雪「だからBLとはなんだ。」
十紀人「アーアーアー。聞こえなぁ~」
楓「と、十紀人。」
十紀人「ん?」

突然話しかけられて俺は直ぐ様振り向く。
そこには以前話した前髪で目が隠れている少女、楓がお弁当箱を持って立っていた。

楓「あ、あの、よろしかったら昼をご一緒させて頂きたいのですが?」

頬ピンク色に染めながらもじもじとして楓はそういった。

十紀人「楓ちゃん!!あぁ!!構わないとも一緒に食べよう!!」
静「お兄ちゃん。こちらの方とはどういった関係なんでしょうか・・・。」
十紀人「っう!!」

しまった!!楓の可愛さに思わず。OKをしてしまったではないか!!
静がこっち笑顔で見てる!!とても怖い笑顔で見てる!!

白雪「私も詳しく事情を聞きたいものだな。」
百鬼「同意であります。」
十紀人「いやぁ~この前知り合ったんだよ。」
静「へぇ~いつ?どこで?なにで?なにをして知り合ったのでしょうか?詳しくお聞かせください。」

近い!!近いぞ!!妹よ!!
静は徐々に俺に近づきながら質問して来る。

楓「あ、あの。私はお邪魔だったでしょうか。」
十紀人「いや、そんなことは・・・。」
静「お兄ちゃん!!」
十紀人「はひ!!いや、これには深いわけが・・・。」
静「へぇ~深いんですか。そうなんですか。そうですよね。女の人と深いわけがあるんですよね。そうですねぶつぶつぶつ。」

あぁここ最近見ていなかったから油断した静が変な世界にはいってしまった。

白雪「それでご主人様いい加減説明してくれ。この者はだれなのだ?」
百鬼「そうであります。」
十紀人「えぇっとこの前授業をサボったときに話をして友達になった。楓という子なんだ。」
楓「りゅ、隆条楓といいます。十紀人さんとはお友達をやらせていただいています。」
百鬼「ナンパでありますか!!」
十紀人「違う!!断じて違うぞ!!」
白雪「まったくご主人様は・・・。私は白雪だ。ご主人様の友達ならこれからも合う機会が増えるだろ。よろしく頼む。」
楓「白雪さんですね。はい。よろしくお願いします。」
粋「僕は粋。好きに呼んでくれて構わない。」
楓「粋さんですね。よろしくお願いします。」
百鬼「はぁ、不本意でありますが。百鬼であります。」
楓「よろしくお願いします。百鬼さん」
十紀人「後は静だけなんだけど・・・。」
静「ブツブツブツブツ」
百鬼「行っちゃってるであります。」

楓の出現により静が別の世界に行ったしまったのをみんなの協力でなんとか引き戻してひとまず楓に挨拶をすませる。
そのあと楓を加えて昼食を再開し始めたが楓が俺の横の席に座ったためみんなからの視線が痛かったのは言うまでもない。
粋に助けの目線を送るがスマイルでかわされてしまう始末で四面楚歌という言葉の意味を初めて知ってしまた。
まぁなんだかんだで楽しい昼食だったよ。
最後には楓もみんなと打ち解けたようだったからな。
昼休みが終了を告げる予鈴がなり屋上にいた生徒たちがぞろぞろと校内に入っていく。
俺達もそれに加わり自分たちの教室に戻って行く。
楓とはクラスが違うため途中で別れて静とはいつものように教室の前で別れる。
教室に入ると生徒たちの話し声で賑やかだった。
俺は自分の席ついて午後からの授業の確認をする。

十紀人「次が日本史でその次ぎが体育か・・。ん?」

そういえば今日は体育の授業があるのだた・・・白雪たちは体操服を持ってきているのだろうか。
俺は後ろを振り返り白雪を見た。
白雪は次の授業の準備をしながら外をぼんやりと眺めている。
窓から差し込む日差しで白雪の銀色の髪が美しく銀色に反射する。
思わずドキッとして見惚れてしまう。

白雪「なんだ?ご主人様。私の顔になにか付いているか?」
十紀人「い、いや、大丈夫。それより今日は体育の授業があるけど体操服持ってきたのか?」
白雪「それならさっき静と別れるときに渡されている。」
十紀人「流石、静だな。」
白雪「あぁ、静は何をやらしても迅速に行動する。私も見習わなくてわな。」
十紀人「自慢の妹さぁ。」

白雪と話していると授業開始の合図と共に先生が教室に入ってくる。
横を見ると百鬼は気持よさそに寝息を立てている。
そんな百鬼をみて白雪はため息混じりにまったくと呟いて教科書を開く。
そうしてお昼最初の授業が開始されたのだ。
俺は先生が話し始めると窓の外に眼をやり外の風景を眺める。
ボーっとしているといつの間にか時間は過ぎて授業終了を知らせる合図がなり先生がキリのいいところで話を止めて号令をすると教室は水を得た魚のように騒がしくなる。

百鬼「ん?授業おわったでありますか?」
十紀人「丁度、今終わったところさ。」
百鬼「んっ!!良く寝たであります。」

そう言って百鬼は気持よさそうに背伸びをする。

粋「さて、僕達も更衣室に行こうか。」
十紀人「そういえば、次体育か。」
白雪「そうだな。百鬼、静から渡された体操服はあるな。」
百鬼「もちろんであります。」
十紀人「じゃぁ行くか。」

教室を出て体育館の近くにある更衣室へと目指す。

十紀人「そういえば、白雪たちって初めての体育だよな。」
白雪「そうんだな。学校自体が初めてなのだから体育というものも初めてだ。」
百鬼「たかが体を動かす運動であります。百鬼には簡単でありますね。」
白雪「あんまりはしゃぎ過ぎるなよ。」
十紀人「まぁ一様言っておくけど、絶対に本気を出したらダメだからな。」
粋「そうだね。僕たちは一般人場慣れしているから力はかなり軽減する必要があるね。まぁ僕と十紀人の場合は生命力をつかなければいいだけだけどね。」
白雪「心得た。ご主人様には迷惑をかけん。安心してくれ。」
百鬼「そうであります。百鬼がマスターに迷惑かけるわけがないであります。」
白雪「お前が一番心配だ。」
百鬼「なんだとであります!!」
十紀人「まぁまぁ二人とも。」
粋「ははは。さて、十紀人。僕たちはこっちみたいだ。」

粋は男子更衣室の前で立ち止まってそう言った。
白雪たちと更衣室で別れて俺は粋と共に更衣室に入る。
中は既に生徒たちで賑わっていた。
空いてるコッカーを見つけて着替えを済ませる。
体育館に出ると準備運動してる人やグループで固まり話してる人たちが目に付く。
あたりを見渡すがまだ白雪たちは来ていないみたいだ。

粋「さて、準備運動だけでもすませてようか。」
十紀人「そうだな。」

俺は粋と一緒に準備運動を始める。
今日は男子がバスケで女子はバレーをやるみたいだ。
となりのコートではバレー部の部員と思われる生徒がネットを張っている。
準備運動しながらそんな風景をながめていると急に体育館が騒がしくなる。

十紀人「ん?」
粋「白雪さんと百鬼さんが入ってきたみたいだね。」

粋に言われた方に眼をやるとそこにはブルマ姿の百鬼と白雪がいた。
すばらしい。レオナルド・ダ・ヴィンチもこれは彫刻として残したくなるだろうな。
俺が見ていることに気づいた百鬼が走って俺のもとに駆け寄って来る。

百鬼「マスター!どうでありますか?」

百鬼は体をグルッと一回転させて俺に訪ねてきた。

十紀人「すごく、いいと思います。」
白雪「ごほん!!」
十紀人「白雪もよく似合ってるよ。」
白雪「そうか?ありがとう。」
粋「二人ともよく似合っているね」
百鬼「当たり前であります。」
白雪「しかし、こういう服は少し恥ずかしいものだな。」

白雪はそう言って頬を薄くピンク色に染め上げる。

百鬼「ではでは、白雪準備体操をするであります。」
白雪「こら!そんなに引っ張るな!!」

百鬼は白雪の手を引っ張って準備体操している女の子の中に入っていた。

粋「二人とも元気だね。」
十紀人「元気が一番さ。」
粋「うん。」

二人とも・・特に百鬼は生き生きとしているのがよくわかる。
ここもきっと彼女たちの居場所の一つになっていくんだろうと俺は思う。
そして守る場所も増えていくということだ。
俺にはそれがとてもいいことだと思える。

粋「十紀人は日に日にいい顔をになっていくね。」

粋にそっと肩を叩かれて俺は粋の方を見て口を開いた。

十紀人「そうか?」
粋「うん。守るもが増えたからかな?」

俺は準備体操をしている二人をもう一度眺める。
・・


しばらくすると体育教師が来て生徒たちを整列させる。

教師「えぇ~今日は女子はバレーで男子はバスケットをする。チームに別れてくれ。」

先生がそう言うと生徒たちは各々の思うようにグループを作り始める。

粋「さて、どうしようか。」
十紀人「そうだな。空いてるところにいれてもらいうか。」
男子生徒1「十紀人くん。僕達のチームにはいってくれないか?」

俺と粋があたりを見渡していると生徒に声をかけられた。

男子生徒2「あっ!ずるいぞ!!なら粋くんは俺達のチームにもらう!!」
粋「決まりのようだね。」
十紀人「そうだな。」

女子たちのほうを見ると百鬼と白雪の取り合いになっていた。

女子生徒1「百鬼さんは私たちのチームに入れるわ!!」
女子生徒2「じゃぁ白雪さんは私と一緒なチームね。」
女子生徒3「納得いきません!!ここはジャンケンで決めましょう!!」
女子生徒4「そうよ。その方が公平だわ!!」
白雪「私はなんでもいいのだが・・・。」
百鬼「早く決めるであります。」

二人の様子を様子を見ていると粋が口を開く。

粋「ずいぶんな人気だね。」
十紀人「心配したけど大丈夫そうだな。」
粋「大丈夫だよ。彼女たちは十紀人が心配するほどやわじゃないよ。」
十紀人「そうだな。」

粋と話している間にチームが決まったようだ。

先生「チームにわかれたな、じゃぁ練習後にトーナメント戦に入る。各自十分に体をあっためてから試合にのぞむようにように・・・では解散。」

先生の号令と共にみんなボールを手に練習を始める。
試合が始まったのはそのあとしばらくしてからだ。

粋「まさか一回戦目から十紀人とあたるなんてね。」
十紀人「全く、くじ運がいいのか悪いのかかわらないな。」
粋「十紀人は何でもそつなくこなすからね。手加減はしないよ。」
十紀人「望むところだよ。」

試合時間は3分でわりと短い。
俺のポジションはパワーフォワードになっている。
粋はスモールフォワードだ。
ジャンプボールからのスタートでバスケ部の人が審判を務めてくれる。
ジャンプボールの相手はバスケ部の人みたいだ・・俺より10センチくらい身長が違う。

バスケ部「レディー・・GO!!」

ボールはコートの中央に高く舞い上がる。

十紀人「っは!!」
バスケ部2「取らせるか!!」

さすがというべきか当然というべきか・・・。
俺は空中の競り合いに負けてボールを掴むことが出来なかった。
着地と同時に俺はマークに付く。

バスケ部2「おっと!やるねぇ。これじゃぁ攻められないな。」
十紀人「そう簡単には抜かせないぜ。」
粋「こっち。」

いつの間にか粋がバスケ部の人の後ろにまわりボールを受け取る。

十紀人「させるか!!」
粋「いい反応速度だけど!!」
十紀人「なっ!!」

渡された思われたボールを粋は持っていなかった。

バスケ部2「先制点もらいぃ!」

バスケ部の人は一直線にゴールへと目指す。
俺に外にも人はいるがバスケ部の人に勝てるわけないのだ。
軽々とディフェンスをかわしてゴールへと一直線に走ってゴール。

バスケ部「ピーー!!2ポイント」

点数版の数字が捲られて2となる。

十紀人「やられたなぁ」
チームメイト「ゴメンなぁ止められなかったわ。」
十紀人「いや、今からが勝負だ。勝とうぜ。」
チームメイト「おう!」

ボール受け取りバスケ部の人と粋をみる。
他の人は後衛でゴール付近を守っている。
バスケに関してそれほど知識を持っているわけではないがあのかめ方はやり辛い。
それにパワーフォワードがバスケ部の人で
スモールフォワードが粋なのが痛い。

チームメイト「パス!!」

その声に反応して思わずパスを出す。

粋「甘いね。」

俺の出したパスを粋がカットしてそのまま走り抜ける。

十紀人「やらせるか!!」
粋「追いつかれるとは・・流石だね。」

粋に追いついてガードに入り粋の横に張り付いていつでもガード出来る大勢を取る。
おそらくそのままゴールお目指すだろ。

粋「残念。ゴール下まで行かないよ。」
十紀人「ッな!!」

粋は3ポイントラインでピタリと止まってそのままジャンプ。

十紀人「させるか!!」
粋「!!」

俺も急ブレーキを掛けてそのままジャンプをする。
そのままめいっぱい手を伸ばしてシュートを阻止を試みるが・・・。

粋「っく!!」

粋はそれに構わずにそのままシュートを打つ。
届け!!
指先にボールがかすかに当たる感触を感じた。
着地してすぐにゴールの方を見るとボールはリングに弾かれて高く空中に舞い上がる。
ゴール下ではチームメイトと相手チームの人たちがリバウンド取るべく待ち構えていた。
しかしボールはそのままゴールに入ってしまう。

粋「惜しかったね。」
十紀人「全くだな。でも次は止めるぞ」
粋「期待してるよ。」

粋はそう言い残して自分の陣地に戻って行く。

チームメイト「ごめん」
十紀人「いや、まだ始まったばっかりだ。気にしないでいこう。」
チームメイト「そうだな。」
十紀人「そろそろ反撃に移ろうか。」
チームメイト「おう!!」

チームメイトからボールを受け取り今度は一気相手ゴール目掛けて走りだす。
後ろにチームメイトがしっかりと付いてくるのを確認する。

バスケ部2「行かせるか!!」

バスケ部の人が俺の前に立ちはだかる。
俺は構わず加速してバスケ部の人ぎりぎりのところでボールに回転を掛けてバスケ部の人の開い股に向けてボールをバウンドさせる。
その隙に俺はバスケ部の人の横を通り抜ける。

バスケ部2「なっ!!」

ボールは回転によってバスケ部の人の股を抜けて俺の手に戻ってくる。
予想外だったのかバスケ部の人はその場に立ち尽くす。

粋「させないよ!!」
十紀人「甘いな!!」

粋には小細工は通用しない。なら!!
俺はボールを真後ろに投げる。

粋「!!。うまく隠したね。」

俺は後ろから来るチームメイトを粋に見せないように体で隠していたのだ。

チームメイト「ナイスパス!!」

チームメイトはそのままシュートに打つ。
ボールはリングにあたりこちらの方に跳ね返ってく来た。

粋「残念。」
十紀人「油断大敵!!」

俺は油断した粋の横を通り高々にジャンプをした。
ゴールからこぼれたボールを掴みとる。

粋「え!?」
バスケ部2「嘘!!」

そのままボールをゴールに向かって叩き付けて着地する。

十紀人「これであと3点差だな。」
粋「まったく。十紀人には敵わないよ。」

周りから歓声が上がっているのに気付く。
どうやら熱くなりすぎてしまったようだ・・・。
・・・。
試合の結果は俺達のチームの負けで終わった。
俺達のチームも点数をガンガン入れてることは出来たが粋の3ポイントシュートが正確すぎるせいで点差は離れる一方だった。
そのため俺達は一回戦で負けてしまって俺は体育館の隅で女子のバレーを見ていた。
丁度女子の方は決勝戦をするところだ。
白雪チームと百鬼チームで分かれている。

百鬼「とうとうこの時がきたであります。」
白雪「そうだな。」
百鬼「白雪には負けないであります。」
白雪「私も勝ちを譲る気はないぞ。」

二人の目から火花が散っているのがみえるようだ。

十紀人「頼むから力は使うなよ。」
粋「ははは、大丈夫だと思うよ。多分ね。」

どうやらこちらの決勝戦が先に終わったようだ。
トーナメント表を見ると粋のいたチームが一位になったようだ。

十紀人「お疲れ様。」
粋「うん。それにしても女の子の方も決勝戦なんだね。」
十紀人「あぁ。」
粋「それで十紀人はどっちを応援するのかな?」
十紀人「ん~両方かな。」
粋「そうかじゃぁ僕は百鬼さんの方を応援しようかな。」
十紀人「いいのか?黒川に言いつけるぞ?」
粋「うっ!怖いことを言わないでよ。」

粋は身体を少し震わせながらそういった。
・・


黒川「へっくち!!ず~・・・誰か私の噂でもしているのでしょうか・・・。」

黒川は鼻をすすりあたりを見渡してからパソコンの画面に目を戻す。
・・


粋「そろそろ始まるみたいだね。」
十紀人「二人ともポジションは一緒なレフトか。」
粋「ウイングスパイカーだね。」
十紀人「ウイングスパイカー?」
粋「うん。エースアタッカーって言っとわかるかな?いつもセッターの対角線にいてアタックをするのが仕事の人だよ。」
十紀人「へぇ~。」
粋「二人とももともと運動神経がいいから自然とあのポジションになったんだろうね。」
十紀人「なるほど。」

そうこう話していると試合の開始を告げる笛がなる。
最初のサーブは百鬼チームからだ。
ジャンプサーブ、だと!!
勢い良く放たれたサーブはコートギリギリの所を狙われている。

白雪バックライト「っは!!」

回転レシーブ、だと!!
ボールに対して飛び込んで片手でレシーブ。
その後次の大勢が取りやすように体を回転させて大勢を整える。
さっきのジャンプサーブといい回転レシーブといい。
女子のバレーの強さはすごい。

白雪セッター「白雪さん!!」
白雪「まかせろ!!」

セッターが白雪にトスをあげる。

百鬼「やらせるかであります!!」

白雪の打ったスパイクは百鬼の手に当たりコートの外に飛んでいった。

白雪「惜しかったな。」
百鬼「次は止めるであります。」

先制点は白雪チームに上がったようだ。

粋「すごい試合になりそうだね。」
十紀人「あぁ俺は心が落ち着かないさぁ・・・」
・・


そのあと激しい攻防が繰り広出られる。
白雪チームが26点で百鬼チームが25点だ。
後1点で白雪チームがとれば白雪の勝ちとなる。
百鬼チームのサーブからのスタートだ。
両チーム既にスタミナが尽きかけているいう感じで息が上がっていた。
俺はこれほどまでに白熱した体育の授業を見たことがない。
周りの人たちもみんな息を飲みながら見ている。
安定したサーブが打たれて白雪チームの人がレシーブをする。
ボールはふわりとセッターのところに向かう。

白雪「クイック!!」
白雪セッター「はい!!」

セッターは勢い良くボールを白雪の方に弾く。

粋「これはクイックアタック!!セッターとアタッカーの呼吸が合わないと成立しない極めて高度な技。しかしそれが一旦型にはまればすごいスピード攻撃力になる。まさに電光石火の技と言ってもいい!!」

この間0.5秒!!
粋よ!説明ありがとう!!

百鬼「っく!!負けないであります!!」
十紀人「あっ!」
白雪「っな!!」

完璧に決まったと思われた白雪のクイックアッタクを百鬼が通常では考えられないスピードで追いついって受け止める。
周りからは歓声がが上がる。
セッターが百鬼に上げて百鬼はそれを相手コートに思いっきり叩きつける。

白雪「百鬼、貴様はぁ!!力は使うなと言われてあっただろう。」ヒソヒソ
百鬼「なのこのとか分からないであります。」
白雪「そうか・・お前がそういう態度を取るのであればことちらとて考えがある。」

そう言って白雪はボールを百鬼に手渡す。

十紀人「はぁ~いやな予感が当たった。」
粋「ははは。これはまずいね。白雪さんも眼の色を変えちゃったよ。」
十紀人「ははは。頭が痛いよ。」

俺のカラ笑いが虚しくこだます。
その後はもう語るまでもないだろう。
白雪も能力でアンビリバボーな動きをして百鬼に対抗して攻防を始める。
結局授業の終了を告げる合図があるまで試合は続いて結局引き分けになった。
周りで見ていた生徒は喜んでいたみたいだったから良かったものの一歩間違えば彼女たちの正体がばれていたところだ・・・。。
幸いにも誰にも百鬼と白雪のことを不思議に思わなかったみたいで無事に体育の授業を終えることが出来た。
・・・
・・

       

表紙

苺マシュマロ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha