Neetel Inside ニートノベル
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私が私になった日
【四年前 七月】

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「ただいまー!」
 私はいつも通り元気よく家に帰ります。でも、春のときみたいに靴を玄関に脱ぎすてたりはしません。きちんと揃えます。偉いでしょ? エヘン。
 少し大人というヤツになったのですよ。
「あれ?」
 いつも返ってくるはずの「おかえり」が聞こえません。どこかにお出かけしているのかな?
 けれど、リビングに入ってみるとお母さんはソファー座っていました。
「ただいま!」
 目の前でもう一度言うと、目をはっとさせてこちらを向きました。寝ていたのかもしれないです。疲れているのかもしれません。
 最近少し暑くなってきました。私も汗ばんでいて服が気持ち悪いです。お母さんもこの暑さにやられたのだんじゃないでしょうか。クーラーついてないですし。
「あ、おかえりなさい」
 そう言ってお母さんが見せてくれた笑顔はいつも通りきれいだったので、私の心配はきゆうとか言うやつだったのでしょう。
「今日は?」
 お母さんが聞いてきます。
 いつものやり取り。ですが、そう聞かれると今日は少し困ってしまうのです。
「今日は家にいます!」
「あら、珍しいのね。何? お友達と喧嘩でもした?」
 心配そうに私をみるお母さん。それが嫌だったから言いたくなかったのです。私は大丈夫ですよ。
「そんなことはないのですよ。ほら、お母さんだって私が友達と仲いいの知ってるでしょう? 私達だってそう毎日遊んでいるだけの子供ではないのです」
「あらあら。確かに、靴も揃えるようになってきたしお姉さんになってきたのかもね」
「かもじゃないです! なってるのです!」
 いつも通り胸を張ります。自信満々!
「そうね。じゃお姉さんならまずどうするべきか解るわよね?」
「手洗いうがい、そして着替えです。当然ですよ」
「よくできました」
 お母さんに撫でてもらってとても上機嫌になったので、心の中でスキップをしながら部屋へと駆けこみます。
 と、その前に。
「ただいま!」
 勢い余って通り過ぎた分を切り返してお姉ちゃんにそういってから、再び部屋へと戻りました。
 返事はまだ、ありません。

       

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