闇喰い-忘れられた世界-
第一章その女人に在らねど名探偵?
「ふぁ~あ~」
大きいあくびが廃れたビルのなかに響く。
天城霊的災害探偵事務所(あまきれいてきさいがいたんていじむしょ)。
ここが私の自宅兼職場。
両親の遺した唯一の資産。
天涯孤独の私にとって唯一安らげる場所。
ではあるが、今は依頼者の前。
あくびだけでも失礼というものだ。
「えっと、その・・・」
依頼者の女性が言葉を濁している。
「あ、どぞ。そこへ掛けて下さい。」
間髪入れずフォローする。
「あ、はい。」
「で、依頼内容は?」
すると女性はビクッと肩を震わせ、青くなった唇で、つらそうに語った。
「二週間前、私の主人が急に右手の痛みを訴え出したんです。
前の日スポーツジムに行ってたので、怪我かと思って病院に行ったんです。
そしたらどこにも異常がないって・・・。
そ、それだけじゃなくて今では右手だけだった痛みが右半身を被っていき、
もう動けないまでになったんです・・・。
そんなとき、ここの噂を聞きました。主人はきっと呪われているんです!
頼れるのはもうここだけなんです!!お願いします!!主人を助けて!!!」
遂に女性は泣き崩れてしまった。
そんな彼女を励ますように私は言った。
「大丈夫です。貴方のご主人は必ずこの私、
天城 久志奈(あまき くしな)がお助けします!」
というわけで私の捜査が始まった。
―捜査一日目― (金曜日) 事務所(廃ビル内) 14:00
「おい!久志奈!」
ポケットの中からだみ声がする。
「受けていいのかあんな依頼。あのアマ尋常じゃねえ怨気発してやがるぜ」
ポケットの中から喋るそれを出す。
コウモリのキーホルダー。
「それどういうこと、羅亞喰(らあく)?まさかあの人が原因?」
怨気とは・・・
人が無意識に発するオーラのような物で恨みが強いほどその力を増す。
普通それが周囲に影響する事は無いが、有り得ないほど強い物は
外界に影響を及ぼし、超常現象を引き起こす。
と、いわれている。
「取り敢えずあの人のとこ行こうか。」
14:39
とある高級住宅街。
ここに依頼主の家がある。
依頼主の名前は吉野久子(よしのひさこ)。
39歳 社長夫人
「ここかしら・・・?」
私は家のインターホンを押した。
するとドアが開いて・・・
「ギィヤァァァァァァァ!!!!!!」
のっぺらぼうがいました・・・。
15:00
ガクガクブルブルガクガクブルブル
恐怖が体に刻み込まれてしまった。
結局のっぺらぼうは久子さんだったんだけど・・・。
パックして顔を出すのはやめて欲しい・・・。
コワスギル・・・。
「すいません。はしたないお姿を・・・」
「いえお構いなく・・・。アハハアハハ・・・」
超気まずい・・・。
取り敢えず話を聞こう。
「あの~旦那さんは何処に?」
「ああ、はい。ついてきてください。」
と言うが早いかすぐ立ち上がる。
よほどご主人が心配なんだろう。
私のポケットの中で羅亞喰がいう。
「ここ、怨気が尋常じゃねぇ。待機しとくぞ。」
そういって羅亞喰は怨気となり四散した。
羅亞喰は怨気で作られているから怨気と一体化できる。
「隠密捜査頼むよ。」
「はい?何か?」
声に気づいたのか久子さんが振り返る。
「あ、いえいえなんでもないですなんでも・・・あはは。」
毎度毎度誤魔化しきれてない気がする。
「着きました。ここに主人が・・・。あれ?」
案内された部屋にはご主人が・・・・
いなかった・・・・・・。