「さてさて早速、お洗濯をしましょうかね」
ふっ、ふっ、ふ。洗濯……これほど素晴らしい作業はないわね。
洋くんの匂いがたっぷりと染みついた服を嗅ぐことが出来る。
それだけでも充分なのに――
「洋くんのパンツは何処かな~?」
究極のお宝が眠っている。
洋くんの一番濃い部分の匂いが染みついている。そんなパンツがあるのだ。
むしろこれが洗濯の一番の醍醐味ではないだろうか。
これだけで、何度昇天しそうになるか……
「――あれ?」
ま、待って。落ち着くのよ私。
見間違いよね? そう、単純にこれは私の見間違いのはずだわ。
洋くんのパンツが無いなんてあり得ない。あり得ないよ。
「何処? 何処にあるの?」
籠をひっくり返して慎重に探す。
洋くんのパンツは意地でも見つけないといけない。
確かに洋服だけでもある程度は満足出来るけど、でも――
「期待していたお宝がないなんて、興醒めもいいところだわ!」
私の一日の楽しみである行為……出来る事なら全力でいきたいのよ。
だから洋服だけじゃなく、パンツも必要なのよ。なのに――
「無い、無いよ。どうして無いの……?」
こんなにも私は洋くんのパンツを求めているというのに。
どうして、どうして――――――っ!?
「う、嘘でしょ……?」
洋くんのパンツが外に干してある……
干しているってことはつまり――もうすでに洗っているって事よね……?
「だ、誰!? 誰がこんな酷い事を!?」
私の楽しみを奪うなんて、誰がこんな酷い事をしたのよ?
こんな事、神様でも許されない行為だよ。
「う……うぅ……っ」
涙が溢れてくる。
どんどん止まることなく涙が溢れてくる。
「佳奈姉ぇ、何泣いてるの?」
「……洋くん……」
実はね、私の大切な洋くんのパンツが何者かによって、洗濯をされてたのよ。
酷いと思わない? 洋くんのパンツを洗うのはお姉ちゃんの役目なのに。
「あぁ、それ僕だよ」
「……え?」
「あれは、僕が自分で洗ったの」
「え、な、何で? 何でそんなこと……?」
別に一緒に洗われるのが嫌とかじゃないんだよね?
「だって、先に洗わないと佳奈姉ぇが変な事するじゃんか」
「な――っ!?」
そ、それは私の生き甲斐なんだか仕方ないじゃない……
「私は、私は――」
「じゃ、僕は遊びに行ってくるね」
「ちょ、洋く――」
私の叫びも空しく、洋くんが遊びに行ってしまった。
まさか、犯人が洋くんだったなんて、ビックリだよ……
あぁ、私は一体これからどうすればいいのかしら。
「……はぁ。くんくん」
とりあえず、洗濯前の洋くんの洋服の匂いでも嗅いでよう。
そうして頭を落ち着かせよう。
うん、それがいいわね。
くんかくんか。すーはーすーはー。
さすが洋くん。芳醇な香りがするわね。
よし、落ち着いたわ。
だからもっと匂いを嗅ぎましょう。それが今の私にとって重要な事だから!