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2時までは眠れるかッ

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 まあ、どうでもいいんですが、今日はずいぶん以前に買って、一度聴いたきり長らく棚に並べたままになっていた、ボブ・ディランのCD、blond on blondを久々にプレイヤーに突っ込みまして。
 あれ、こんなアルバムだったかなと思ったのは、ぼくの感性がもともと不安定ですから、別段驚くに値することでもないわけでして。
 めちゃくちゃカッコイイですよ、そりゃあ。フォークロックを賛辞する言葉として、カッコイイという文言が適当であるかどうか知りませんし、ぼくはとにかく尊敬したいと思ったものをカッコイイと言い表す癖がありますけどね。
 それに、英語能力は皆無であり、ライナーノートも読んでませんから、それらの歌がなにをうたったものなのか、はっきり知っているわけでもありませんよ。洋盤でした。
 一度聴いた限りで、音楽の良し悪しなど定まるものではないんですねえ。すくなくとも、好きなアルバムだ、なんていう印象は、今日まで残ってませんでしたから。
 こういう経験って、なにも音楽に限った話ではないでしょう。それは想像にたやすいことですが、ぼくの場合は特に音楽に関して多いように振り返ります。
 次点で、映像作品。映画、アニメ。フルメタルジャケットの面白さは中学生当時には理解できなかったし、小学生の頃、毎週クソみたいにだらだら尺を稼ぐアニメ版ドラゴンボールに興奮できていました。耳を澄ませばをこの歳になってみると、また印象がひと味違って良くなるものです。
 これらは、物語の記録として不変のものにパッケージされている諸々であり、ですから印象の変化とかいうものの原因は、ぼくの内部、感性の部分にあるわけでしょうね。
 あまねく名作と呼ばれているものを鑑賞してみて、それが面白くなかったときなんかは、時間をおいて気が向いたときにでも、再び興味を向けてみると、きっと新たな発見があることだろうと思います。
 久しぶりにその音楽をかけてみると、各楽器の一つ一つの音が、これまでの印象と違い、はっきり感じ取れるようになることがあったりします。
 創作物なんてものは、初めから楽しめるようにできていると思ってますから、こういう発掘精神の試行も、ときには良いんじゃないですかね。

 くどいような気もしますけど。
 反対の、というか特殊な例がぼくにはあって、漫画作品の類。これに関しては、名作だろうがなんだろうが、初見のそれと比べて印象が良くなる、なんてことは、何故か知りませんけれどほとんどないんですよ。
 じゃあどうなるのか、嫌いになってるのか、というと、違います。創作物の面白さは、不変のものとしてパッケージされている限り、変わることはありません。それに、一度は好きだ、面白いと印象に残っている以上、好きにこそなれ嫌いになることはないんじゃないですかね?
 ひとつ具体的な例を挙げてみますと、縛って捨てるのが面倒くさかったエロマンガなんかが、大量に押し入れから出てきたとしますね。日付は二〇〇六年とか、二〇〇二年とかの。想像するだけでぞっとする。
 怖いんですよ。
 パラパラめくっていると読んだ覚えがある。どの作家のどのページで抜いたとか記憶もよみがえる。折り目とかもついてる。
 あいまいな記憶を掘り返そうとしている自分に気付く。どこで手に入れたエロ本であったか。惨めな気持ちに心当たりがある。当時何にムカついて、何が嬉しくて、嫌だったか。捏造された記憶で疑心暗鬼になる。
 疑心暗鬼に、なる。理屈ははっきりしないが、古いエロマンガには人を不安にさせる魔力が宿るのだと一貫して主張を続けてきた。しかしながら誰も共感を寄せる者はいなかった。
 五官を持て余しているのかもしれない。漫画は、紙媒体だ。手に持って絵を見る。文字を読む。聴覚的要素は、妄想から捻出した代用品である。
 それに、物語の進行速度は、自動的に一定ではない。それは恣意的に操作されるだろう。鑑賞者の自由だ。
(その他に、物語の一部は省略され、ときどき逆転したり、順番が入れ替わったりすることもあるだろうし、それらの手間が、他の物語媒体よりも格段に少ないのは間違いない。だがそれも、ぼくの勝手な思い込みか)
 おそらく、これだろう。物語の進行速度が、鑑賞者に委ねられていることこそ、原因なのか?
 漫画は、音楽や映画などの鑑賞とは、明確に一線を画していると思う。ほとんどスポーツじみている。それか、なにかしらの肉体労働。少なくとも頭脳労働には違いない。
 そのへんの性質の違いが、昔読んだことのある(エロ)マンガの魔力であり、疑心暗鬼を産みだす原因であると、思ってるんだけどなあ。

 小説ですか? どうなんですかね。好きな小説は何度読み返しても好きなままで、むしろもっと好きになってゆきますし、嫌いな小説というか面白くない小説は、ほとんど経験したことがないんで、漫画の性質とは似なと思います。
 それに、小説における物語の速度は、読解の速度であり、これは個人ごとにむらがあっても、あまり急速に変化することはないようですから(経験談)、久しぶりにお気に入りのミステリ読んだとしても、犯人わかっちゃってるのに楽しかったりします。まあ、本格ミステリは知りませんけど。本格読んだこともないですけど。
 童話や児童文学なんか、再読する楽しみはむしろ、音楽や映画などのそれに類似して、新しい発見ばかりで、どんどん好きになりますよね。

 ――何の話だったっけ? 遅筆友の会の短編全然進まないのになにやってんすかね。
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