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第十一話「人は見た目が九割なんかじゃないさ。」

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「いやー本当にコーラってうまいよねー」


 きょうこが紙コップに刺さったストローを咥えて心底幸せそうに言う。
 散々『太るー!』としょっちゅう叫びまくっている割には、飲んでいるのはダイエットコーラではなく砂糖たっぷりの普通のコーラである。


「きょうこちゃんホントにコーラ好きねぇ。他のドリンク飲んでるの見たことない気がするもの」
「確かになー。でもコーラ飲んでると骨溶けて背が伸びないって聞くけど、きょうこ見てるとそうでもないんだな」


 サヤと鈴がきょうこを見ながら言う。鈴の言うとおり、きょうこは四人の中で明らかに一番背が高かった。


「迷信だったってことだなー! ついに170cm超えたし、もうこれくらいでいいけどね」
「……よかったな。これでいつでも勝俣を子分にできるぞ」
「あの鐘を鳴らすのはあたし! ……これで満足か!?」

 低いトーンの声で言う真奈に、きょうこが立ち上がって答える。
 四人の中で一番背が低いように見える真奈にも色々と思うところがあるのだろう。


「ちなみに真奈ちゃんは身長何センチくらいあるの?」


 サヤが突然に尋ねる。微妙に空気が読めないのがサヤの生態の一つであるらしい。


「……それは言わないといけないんだろうか。……148cmだよ」
「猫ひろしと同じだな!」
「……にゃー。……これで満足か?」


 先ほどと同じようなやり取りを、今度は真奈と鈴が繰り返す。両手を猫の手のような形にしてしっかりと再現してくれるあたり、真奈もなかなかやるものである。


「まあいいじゃないか真奈。あたしとかサヤみたいに高くも低くもない身長よりは、キャラついてよいと思うよ」
「……くそう。鈴も一回この身長になってみたらいいよ」


 鈴が真奈の肩に手を置きながら言う。悔しそうな真奈をしり目にきょうことサヤが話し始めた。


「あたしは小さいのかわいいと思うけどなー。身長高いのは全然いやじゃないけど、やっぱりでかいと似合う服とか少なくなるからさ」
「……私は最近ブレザーがきつくて。太ったのかしら……」
「そ・れ・は、これのせいだろー!」


 きょうこが素早くサヤの背後に回ると、そのふくよかな胸をわしづかみにした。


「ちょ、ちょっときょうこちゃん! く、くすぐったい! あーやめてー!」


 サヤは目に涙を浮かべて暴れまわる。ようやく解放された時にはブレザーが完全に着崩れて、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
 鈴はその様子を見ながら手をたたいて笑っていたが、ふと何かに気がついたようにあごに手をあてて考え込んでしまった。
 それに気がついたきょうこが声をかける。


「どうしたんだ鈴ぅー。急に黙っちゃってさー」
「……いや、考えてみたら、あたしはきょうこのように身長高くてスタイル良くもないし、真奈のように小さくてかわいらしくもないし、サヤのように巨大な胸を持ってもいないし……女として一番魅力に欠けるのはあたしなのか……?」


 そう言って黙りこむ鈴の肩に、ぽん、ぽん、ぽんと残り三人の手が乗り


「「「……ドンマイ」」」


 憐れみ混じりの表情でそう言った。
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