last-append『last-2のその後』
「僕は、立川さんのこと――」
まるで時間が止まったように、長く、長く長く長く、このときを感じていた。
聞きたい。
聞きたい。聞きたい。
ようやく返事が聞ける。
聞きたい。
聞きたくない。
怖い。不安だ。もし断られたら、そこで彼との交流も終わってしまうのでは?
もし終わってしまうのなら、聞かないほうがマシ。
聞きたくない。
ああ、でも聞きたい! 聞く! やっぱりイヤだ!
期待と不安。その2つが混ざり合ったのち、前者が勝った。
彼女は待つ。
彼が言う。
彼女は聞く。
彼は、言った。
「すごく、大切な友達だと思ってる」
『友達』
圧倒的な距離感。
「あんまり恋愛とかってわからないんだけど…‥
その、立川さんといると、ほんとに楽しいんだ。マンガや小説の話、音楽の話とか。どれも、すごく楽しい。
でも、その、なんとなく、そういう感情じゃないのかなって思うんだ」
届かなかった。あのときの気持ちを、彼に渡すことはできなかった。
いや、それは違う。ちゃんと気持ちは届いていたはず。お互いが望む関係が違った、それだけのこと。
そう思いたい。
「だから、その……ごめん」
『ううん。
たくさんたくさん悩んでくれたんやね。だって、顔見てたらわかるし。
そんだけ真剣に考えてくれたことが、すごく嬉しいよ』
言えなかった。ぐるぐると湧き出す黒い感情が、それを口にすることを許さなかった。
「……え、えとえと、でも、友情は継続だよね?」
「うん、そりゃもちろん」
「あはは、良かったー」
ぽすぽす。軽く握られた彼女のこぶしが、彼の胸に届く。
「てっきりさー、スルーされちゃったんだと思ってたよ。
ちゃんと返事聞けて良かったー」
『ありがとう』
……なんて素直に言えない。そりゃあ悲しいし、苛立ちもあるし。
ああでも、でも、今はとにかく。
ここから逃げたい。
「それじゃ、また明日ー」
いつもの分かれ道。
早口。
震える声。
振り返らずに駆け足。
「あほー……」
『泣かない。
ぜったい、泣かない』
「……あほー」
ぜったい泣かない。