「一体覚悟とは何なのかね」
と彼女は言う。腰まである長い赤い髪が風に吹かれなびいている。
「また、君にはその覚悟とやらがあるのかね」
長い沈黙があった。時間の間延びしていくおぞましい感覚が全身を浸食していく。生唾を飲み込むと、喉の奥にへばりついて気味が悪い。
何度も呼吸を繰りかえし、ようやく私は言った。
「わかりません」
「そうか」
「でも、やります。やりきります。僕はそう決めたのです」
「そうか」
微笑んだ彼女はとても綺麗な顔をしていたので、私は思わず目を伏せてしまった。くすり。と小さな笑い声が弾けた。不覚。