む。
「おはよう、日本。」
AM6:00のアラームと共に、
デジタル時計のLEDが
チカチカと点滅していた。
母さんにおはようを言う。
返事はかえってこない。
テレビの奥の局アナが
朝っぱらから誰かに媚びている。
媚びる女は嫌いだけど、
ちゃんと全国に向けて朝を
発信する、この人たちが
僕は好きだ。
友達になれないのが、本当に残念だと思う。
窓から空をのぞくと、
目をおおいたくなるほどの
晴れ空だった。
公園に行くことを思い立った。
僕はそのまま窓から身をのりだし、
勢いよく飛び降りた。
スペランカーなら死んでいる。
でも僕は大丈夫だった。
そのままぴょんぴょんと
軽快に歩道を飛び跳ねた。
前のお兄さんを飛び越え、
そのまた前のおばちゃんを飛び越える。
ぴょんぴょんぴょん、と飛び越える。
後ろを振り返っておもいきり
あっかんべーをしてやる。
みんな無視。実にワンダフル。
両手を広げると、
タイミングよく追い風が吹いた。
エンジンの音を口真似して
僕は地上を発進した。
相変わらず僕は、
街ゆく人々をぶっちぎっては
挑発的な態度をとってみせる。
相変わらず街ゆく人々は
僕の挑発的な態度を
どうとも思っていないのか
僕を無視してどこかへ向かう。
ふぁんと、警笛の音が鳴った。
思わず立ち止まってしまう。
こいつらを収容する電車に
深々とお辞儀をし、びしっと
敬礼をくれてやった。
電車はサラリーマンの鑑だよ。
時間はしっかり守るし、
命令されたことをきちんとやる。
いつしか父さんはそういった。
まだ小さかった僕には
首をかしげるしかなかった。
ものの見方ひとつで
電車がそういう風にみえたり
するのかと、
本が読める様になった頃に
とても感心した。
しかし今は違った。
僕の物差しでは、あいつは
間違いなく奴隷かパシリだった。
僕は死ぬまで、電車に対して
敬礼を続けるだろうと思う。
おまわりのデスクワークを
全力で横切った。
コンビニにつきあたれば
公園はすぐ目先だった。
レジうちのかよちゃんが
その日はシフト休だったことに
少しがっかりしながらも
僕は全力でコンクリートの
上を飛び回った。
前方に、僕のほかに
コンクリートを飛びまわる馬鹿が一人。
「わあぁああぁああ!!!」
速力をあげて、僕めがけて
特攻してくる秋生をさらりとかわすと
そのままUターンして僕についてきた。
「ついてくんのかよ!」
「後方支援!後方支援!!」
神様にお願いしたい。
頭のねじを秋生に分けてあげてください。
悪い奴じゃないんです。
ただ、ときどき怖くなるんです。
どうか、どうかお願いします。
僕の願いは、空を切った。