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乗客に日本人はいませんでしたと嬉しそうに

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「おたより着てるわよ」

「む」

『[28] もちろんThem Crooked Vulturesは聞いたよな?』

「もちろん聴いていない!でも知ってるさ」

 Them Crooked Vultures(ゼム・クルックド・バルチャーズ)は、QOTSAのジョシュがギター、元レッドツェッペリンのジョンがベース、そして元ニルバーナのドラムのデイブ・グロールをメインメンバーとするロックバンド。まさにスーパーバンドと云える伝説のバンドで現在も活躍中だ。音楽性は個人的にはジョシュ・オムの構想が一番濃く感じることが出来る。一言で例えるなら「実験的変態」が僕の感想。そこに加えブルーズを基調としたツェッペリンを感じる匂い、そして才能豊かなデイブのドラミングセンスを体感できる。

「聴いてないんじゃなかったの?」

「ちょっと黙っててくれないか」


 †


場面戻ってここは御茶ノ水。

「レッド・ツェッペリンといえば、このバンドは過去にバンド名を巡って訴えられたのを知ってるかい」

「初耳ミクね」

「ツェッペリンというのは元々20世紀初頭に存在した飛行船の名称で、開発者はフェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵という貴族だった。Lead Zeppelinとは鉛の飛行船、つまり墜落する飛行船という意味の冗談からつけられたものさ(バンド名はLed Zeppelin)。そこを、ツェッペリン伯爵の子孫がファミリーネームの無断使用から訴えを起こした。エヴァ・フォン・ツェッペリンは法廷で「金切り声を上げて飛び回る猿どもに、当家の栄誉ある名前を名乗らせるわけには参りません」と宣言したという話だよ」

「よくもまぁ毎度調べあげるものと感心するわよさ…」

 君を楽しませたいからね。

「なんか言った?」

「別に」


 †


「レッドツェッペリンのリーダーでギタリストのジミー・ペイジは使用機材にレスポールやストラトキャスターが多く並ぶ。この二つのブランドは今やギターの王道と言っても過言でない程大きな存在となった。そしてこれらのコピーモデル(デザインが同じで他のブランドの廉価版)も増えていった。特に日本のギター会社、フェルナンデス、グレコ、トーカイあたりのそれが顕著で、1980年以前くらいのそれらは値段の割に質も良く未だ値が落ちてないほどだという」

「いわゆるジャパン・ヴィンテージね」

「だがレスポールのコピーモデルを巡ってギブソンがフェルナンデスを訴え日本で裁判が行われた。1993年だったかな」

「どうなったの?」

「うろ覚えだけど、要約すると確かこんな判決が下されたはずだ。

1.これらの楽器のデザインは今や世界のスタンダードとなっている
1.コピーモデルは十数年前から氾濫していたにも関わらず、ギブソンはそれを黙認していた
1.コピーモデルを見てもギブソン製のレスポールと勘違いすることはなく、むしろ結果的にギブソンのレスポールの名声を高めるものになっている

 よって、ギブソン側の敗訴になった。控訴も行われたようだが詳しくは各自調べてくれ」

「お疲れ様…」

「そんな訳でさっき名前が挙がったブランドを紹介しよう」


グレコ。
 かつてのコピーモデルの一角を担った日本のギターメーカー。
 60~70年代は良質のものが多いと称される。
 昔はフジゲンだのマツモクだのといった国内生産だったが現在は経費削減の為アジア各国で生産を行っている。購入の際は事前に知識を入れそれらを見分ける方法を勉強しておくといいかもしれないが、いかんせん余りに情報が少ないので結構大変。
 結構重量のあるしっかりした楽器が多いが中古の古いものはネックの反りやフレット残りに気をつけたいところ。


トーカイ。
 同じく古いレスポールモデルのコピーモデルに定評がある。


フェルナンデス、バーニー。
 元は斉藤楽器。当初はフェンダー、ギブソン、リッケンバッカー等のギターのコピーモデルを主に製作していた。フェンダー系のギターはフェルナンデス、ギブソン系のギターはバーニー(Burny)というブランド名で販売。ボディシェイプのみならずロゴまで同じ書体にしたため、コピー元であるフェンダー社からクレームが来た事もある。
 1980年代以降は、オリジナルモデルも多く製作していった。
 アーティストモデルもよく目にする。



「独り言に夢中になってるところ御免、おたよりの二通目が着てるわ」

「うんうんどんと来い」

『[36] もっと物語成分をだな。』

「な・・・」

「・・・」

「う・・・」

「?」

「うんちく小説じゃなかったのか…」

「読者だってね、知識自慢だけでコメントくれる程音楽やってる人とは限らないのよ」

「ぼ、僕は音楽の知識がない人や困ってる初心者の助けになろうと思って…」

「FAをくれた人がいたわね」

「いた…嬉しかった」

「あの人たちの経歴を知ってる?」

「?」

「一人はドラム経験者、もう一人は現在進行形でバンド小説を書いてるわ」

「・・・それって」

「そう、音楽を知らない人にはこの小説、つまんないのよ」

「言うな!」



 それでも僕らはアナルファックピストルズ。
 口先だけが僕らの楽器。
 バンドやるつもりはない。

「いや、やろうよ」

 凛と咲いて…

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