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「俺」のアホリズム

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「ある朝、俺ーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」

――不条理は誰にやってくるかも知れないのである。もしくは、ザムザは私かも知れないし、俺かも知れないのである。



「下人の行方は、俺も知らない」

――それではかの金田一耕助もお手上げだ。



「俺、ママンが死んだ。」

――解釈としては二通りか。
 ひとつは……新宿二丁目界隈で働くバァの「ママン」であった「俺」が、ふと日常の無限の繰り返しと、その均質な日常の中で異質なものとして排除されている、それでも生きざるを得ない自分に嫌気がさして、ふと渡っている橋から見下ろしてみれば、あらふしぎ、その日だけは折からそぼ降る雨に、川面がいやにきらきら光っている。これまでのたった一度だけ、蚋に刺されたような顔をした爺から貰った、くすんだトパーズの指輪と見比べてみても、どうしたって川面の方が今はきらきら、きらきらと。飛び込んだ時に初めて知った、そのきらきらは自分の涙なのでした。
 もうひとつは、新手の「母さん助けて詐欺」。



「ごん、俺だったのか」

――もっと早くに「俺」であったことに気がついていれば、ジュビロ磐田もコンサドーレも上位争いができていたやも知れぬ。



「俺譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」

――ざまあみろ、と親父の弁。



「おや、俺へはいっちゃいけないったら。」

――「おや」を、間投詞ではなく、「親」だとみると、無垢な白象の童話が鮮やかに近親相姦物語へと変貌する。
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