“われわれの存在は誰からも知られてはいけない。”
“なぜなら、われわれの存在がバレたその時、われわれは無条件でこの学校を去らなければいけないからだ。”
◇
「カワサキくん、二年一組のオオバサキの本日の色は何色だった?」
放課後、どこの部活も使っていない教室に我々は集まり、その日の成果を発表する。
「タカシ氏……残念ながらオオバ氏のパンツは確認できなかったです……」
「そっか……今日もダメだったか……」その言葉を聞いた瞬間、今までために貯めていた興奮という名の感情が少しだけ消し飛んだ。
そんなオレに向かってカワサキくんが「それよしもタカシ氏……ゆ、ユカリ氏のパンツは確認できたのでございますか!?」と声を上げ訊いてきたので、また興奮という名の感情が消し飛ぶのを感じながら、オレは答えた。
「無理だった。……幼馴染補正なんてこの世にはないみたいだ」
重苦しい空気が流れ始めた。本日の成果は無しか……でも、それがいいのだ。簡単に見ることができたらパンチラの有難味がないじゃないか。オレ達が必要、否、見たいものは、パンモロじゃなく、スカートから隙間から覗くあの儚げパンツなのだ。
しかし、こうも成果がないとなるとどうもテンションが上がらない。昨日なんて見れば目が汚染されるであろう、校内一ブサイクと呼ばれている女生徒の汚パンツを見ちゃったし。
お通夜モードの二人をあざ笑うかのように、ショウゴが口を開き何かを言い始めた。
「……は……いろ」
ん? とオレとカワサキくんが聞きなおすと、ショウゴが少し声を大きくして言った。
「オオバのパンツ……の色は黒」
ショウゴのその言葉を聞き、オレとカワサキくんは唾を飲み込んだ。
黒だと? 黒? あの黒だと?
どうやらショウゴの反応からして嘘はついていないみたいだ。
久々のセクシー色だ。なんてこった! 二年生のなかでも美少女トップ3、しかも鉄のパンツガードと呼ばれているあのオオバのパンツを拝むなどとは、こいつやはりやるな……。畜生、オレのターゲットだったのにッ!!
その日は、それ以上余計なことを喋ることもなく、我々『パンチラ同好会』は解散した。
◇
パンチラ同好会。そう、パンチラに魅せられて、パンチラにしか興奮出来なくなった学園でも屈指のヘンタイ三人が、秘密結社として創りだした同好会だ。もちろん、同好会認定も貰ってないので、他生徒から見るとあるか分からないかよく分からない同好会なのだが、それでいい。もしも存在がバレたりすれば、それはそれでやばいし。
◇
「カワサキくん、今日の成果はどうだい?」
前日、ショウゴが見たというオオバのパンツを妄想し尽くし、興奮さめやらぬオレは、自分で作った決まりも忘れ、昼休み、たまたま廊下で見つけたカワサキくんに話しかけてしまった。
「……タカシ氏」
「ん? どうしたんだい?」
「そういう話は、放課後って決まりじゃないですか!」
「あ……そうだったね。ごめん」
彼の名前はカワサキくん。
オレと一緒にパンチラ同好会を設立した勇者だ。
外見も中身もいろいろな意味で秋葉原にいる方々――まさにそんな感じなメガネがチャームポイントなイケズな少年。
授業が終わり、放課後、いつも通り、誰もいない教室を探し、三人で集まり今日の成果を話しあう。
昨日と同じく、オレとカワサキくんは成果無しだった。悲しきかな、我がパンチラ運命。
そんな敗戦ムードただようなか、だた一人、表情には出さないが勝者オーラを出す者が居た。
「……の……は、あ……」
またか、またこいつなのか。
ショウゴ、お前はなんなんだ。
去年、文化祭で行われた校内美少年ランキングでぶっちぎりの一位を獲得しながら、その美貌とミステリアスな雰囲気のせいか、女子たちから少しだけ距離を離されている、ちょっと残念な美少年。
しかもこいつは転生のパンチラ才能があるのか知らないが、パンチラ獲得率までぶっちぎりの一位だ。もしかして、その美貌を駆使して「パンツ見せてください……」とかいうチートを使ってるんじゃないかと一時期本気で疑っていたが、そんなことはなく、常人では考えられないような階段での張り込みなどを行った結果、パンチラを拝みまくっている、パンチラの天才だ。
そんなパンチラ天才のショウゴだが、性格の他にもう一つ弱点がある。それは異様に声が小さいことだ。なのでいつもカワサキくんかオレでツッコミを入れる。
雰囲気的にオレがツッコミを入れる感じだったので、「ん? 今、なんつった?」とショウゴを問いただした。
「アイハラのぱんつの色は、あ、赤……」
なんてこったい、昨日に引き続きセクシー色かよ。どーなってんだよ、こいつのパンチラ性能。いい加減張り倒してやりたいが、オレとカワサキくんはショウゴの得たパンチラ情報を詳しく聞き、状況、パンチラを見た角度などを脳内で補正し……その妄想を今夜のおかずにするしかできない。悔しい、嗚呼、悔しい!
ショウゴからいろいろ話を聞き、オレの脳内補正がピークになった瞬間、教室の戸が勢い良く開いた。
何事か! 敵襲か!? と戸惑いながら開いたドアの方を見ると、一人の女生徒が息を切らしながら立って居た。部活の後なのかは分からないが、ユニフォームのようなモノを着て。
「タカシぃいいい……あんたまた……」
ユカリか。
「なんだよ、ユカリ。部活はどーしたんだよ」
ドア前で息を整え、力みながらユカリはオレの座っている方に歩いてきた。やばい、これは何かある。
「あんたねえええ!」
「えっ、な、なんだよ……」
ユカリがオレの目の前まで来たと思った瞬間、オレの胸ぐらを掴み、おもいっきり睨んできたので「どうしたし……あ、もしかして生理か?」とユカリの女性特有の甘い匂いに包まれすこしばかり興奮してしまったオレがそう言うと、思いっきりみぞおちに一発きめられた。
「……あんたね……」
胸ぐらを掴みながらさらに睨みを効かせるユカリさん。マジでどうしたのこれ。
「え……なに、ごめんなさい。許してください。魂だけは本当に許してください、たのっますぅう」
「殺す、マジで殺す」
あれ、これヤバイよ。カワサキくんとショウゴはいつの間にかに消えてるし、ヤバイよ。マ、ジ、で。