第９話『僕のカノジョは大魔王』

　どうしてこうなった。▼
　ひさんなおわりかたしか、そうぞうできない。▼

　第９話「僕のカノジョは大魔王」

「僕のカノジョは大魔王」のおはなしにようこそ！　▼

　こんかいはこんなんのはてにゲームオーバーしかないかもしれません。▼

　みなさん。▼

　それでもよみすすめるゆうきはありますか？▼

　→はい
　　いいえ

　みなさん、こんにちは。神道です。

　以前「僕のカノジョは魔法少女」という話しがあったことを覚えておられるでしょうか。
　実はあのときの話しがけっこう評判が良くって、もう一回ぐらいそんなお話しがあってもいいんじゃないかなと考えたんですね。

　という建前はここまでにして、月子にＤＶＤを回収されたことに怒り狂って勢いだけで次回予告をしたから、今回のお話しになったわけですが……
　もう後悔しかありません。だってあの月子が大魔王ですよ？　どうやってもバッドエンディングじゃないですか！

「どうしたの、神道くん」

　僕がひっそりと絶望していると、そう言ってきたのは勇者ホッシーナ。
　彼女は代々勇者の血を受け継ぐ由緒正しい血筋の人間です。ある朝目が覚めるとお城に行っただのどうだのというエピソードはなく、生まれたときから勇者としての自覚があった、本当の勇者。という設定です。
　しかし、勇者なのに装備がビキニアーマーというのはどうなんでしょうね。読者サービスなのですかね。

「ほら、ぐずぐずしていたら置いて行きますよ」

　ちなみに僕は今回、僧侶的なポジション（僧侶ではない。簡単な魔法が使える程度の一般人）です。

　物語の舞台は中世ぐらい（初代ドラ○エをイメージしてください）。僕とホッシーナは最果ての城にいる大魔王を討伐するという目的で旅をしています。
　女性と二人きりだからと言って何かあるわけでなく、本当に旅をするだけの割り切った関係です。お泊りする部屋も別、いつまで経っても敬語のまま。共有するのは経験値ぐらい。悲しいなぁ。

　それに僕はまったくの戦力外。なので。

「ハッ、やあ！」

　ぶんぶん剣を振り回してモンスターと戦うホッシーナ。そして僕は激しく動くホッシーナの激しく動く一部分を凝視する作業をこなすだけ。
　もうこれで十分な役得ですよね。揺れるんですよ、ぶるんぶるんと。

　さて、そんなこんなで大魔王の住む城に着きました。四天王、三鬼神、双魔頭など、もうこれ完全に人数合わせだよね、みたいなモンスターをホッシーナが撃退し、ようやく大魔王のいる広間にやってきました。
　この先には大魔王がいる。隣にはしっとりと汗をかくホッシーナがいる。僕はドキドキしてきました。もちろん大魔王との決戦を直前にした緊張です……

「神道くん」

　広間に繋がる大きな扉に手を置き、ホッシーナが言いました。

「私、この戦いが終わったら、故郷に住む恋人と結婚しようと思うんだ」

　さらっと死亡フラグ立ててもらっても困る……

「そんなことより、今すぐ僕と結婚しよう」
「寝言は寝て言え＾＾」

　渾身のフラグ回避も無駄でした。
　これは今回のオチを予想させるようなフラグ……！

「大魔王、いざ、尋常に勝負！」

　メンチ切って扉を開けると、そこには玉座に座る大魔王の姿。
　ああ、あれが大魔王“月子”。めんどくさいのでその悪事は省略しますが、とにかく悪いヤツ（という設定）です。
　禍々しいオーラを感じますね……真っ黒と真っ白が共有するゴスロリ服が映えています。がんばって用意して説得した甲斐がありました。がんばったね、僕がんばった。

「ふはははは、よくぞやってきたあ、勇者ホッシーナ！　だが貴様の命もここまで！　覚悟するが良い！」
「負けるものか……！　私はみんなのために勝つんだ！」
「辞世の句はそれでいいのかな？」
「あなたこそ、お詠みにならなくていいのですか？」

　……どうしてこの二人はここまでノリノリなんだろう。ゲームっぽい舞台がテンションを狂わせるのでしょうか。
　どうせなら僕が勇者をしたかったな。
　ああ、戦闘が始まりそうだ。さて、どっかに隠れておこう。

「いくぞっ、はあああああ！」

　ホッシーナが自らに魔法をかけた！　これがホッシーナの十八番、『時間加速』！　細かいことは抜きにして自分に流れる時間を加速してすさまじい速度で動けるようになる魔法！
　もはや僕に目には止まらない速度で攻撃をしているのだろうホッシーナ。それをスイスイと避けているのだろう大魔王。あまりに見えなさすぎて参加してる気分になれないな！
　なんて露骨な説明！

「うっ」

　スパッ

　大魔王の衣服、スカートの一部が縦に裂けました。
　おおお……！

「あら？　恥ずかしいのですか？」
「そ、そんなことない！」

　切られたスカート、できてしまったスリットをぎゅっと抑え、顔を真っ赤にする大魔王。
　見えた、たしかに見えた。けしからんな、黒だなんて。しかもタイツだと思っていたらガーターだと？　けしからん。僕そんなの見たことないのに。どうしたんだろう、自分で買ったのかな？　しかし黒と黒を合わせるのはいかがなものかなと思う。黒のガーターにピンクの下着、これでどうでしょうか？　単に僕がピンク好きっていうのもありますが、どうでしょうか？

「ふふふ、じゃあもうちょっとテンポを上げますよ？」
「そんな、まだ上がるの……！？」
「さて、どーこだ？」

　その瞬間。
　びゅんびゅんと風を切る音と共に、大魔王の服が少しずつ裂けていきました。
　もはや防ぐこともできない大魔王。その気になればすぐに終わらせることができるのに、じわりじわり嬲っているんだ……！
　やばいぞ、僕はこの良さがわからないけど、これで興奮する一部の皆さんがいるんでしょう？　そうなんでしょう！？

「あははは、どうですか？　どうですか！？」
「うう、やめ、て……服が……」
「ハァァァ、快感……！　ようやく私も活躍できる機会がやってきました……！　やっとスポットが当たりました……！」

　ストレス溜まってたんだね……

「ほら、ほらほらほうら！　どうですか伊藤先輩、こうやって蹂躙されるというのは！」
「ホッシーナ、役忘れちゃダメだよ……！」
「星奈様でしょう！？　アハハハハ、そう、今回は私が主役なので」


　がしっ


　ああ。調子乗りすぎたばっかりに。
　大魔王が、ホッシーナの顔面を鷲掴みにしました。
　そして。


　ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり！


「ぎゃあああああああああああああああ！」

　おそらくとんでもない力で締めているのでしょう、ホッシーナの悲鳴が響きました。
　月子容赦ないな……！

「ん？　誰が主役だって？　よく聞こえなかったからもう一度言ってよ」

　……いちおう、この作品の主役は僕だよ、二人とも。

「ぐぐぐ……やっぱりこんな役ですか……」
「ちょっとお調子に乗りすぎたね」
「ああああああああああああ！　ふざけんな！　どうしていつもいつも！」

　ああ、キれた。

「いつもいつもギャグ要員！　それかスタイルがいいからってお色気要員！　今回もビキニだし！
　ふざんけんなふざんけんなふざんけんな！
　それもこれも、伊藤先輩の胸が小さいから」


　ドォン


　言ってはならんことを言った。
　ホッシーナは床に叩きつけられ、どでかいクレーターができました。
　ホッシーナは、動きません。

　なんということでしょう。残念な結末です。ついにリョナ展開が発生して――

「きゅう～」

　ない！　ホッシーナのこの一言で単なるギャグ展開となりました！　グッジョブ！　さすがギャグ要員だ！
　しかし、しかし！

「さてと。そこの僧侶……ぽいキミ」

　僕の大ピンチには変わりない……！　大魔王の服がビリビリで半裸だけど、ピンチだ……！
　僕はあまりに貧弱だ……ぶっ飛ばされてもギャグ展開に終わらせる自信がない……
　ここは逃げるしかない。ひとまずありったけの魔法を打ち込んで、その隙に逃げるしか……

「何をするのかなぁ～？　楽しみだな～。そうだ、このあと暇だしお茶でも飲まない？」
「馬鹿にしないでほしいな……！」

　まあ逃げる気なんでアレですけどね。

「く、くらえー！」

　僕は全力のファイアボールをぶつけました。膨れ上がる灼熱、そして肌を焼くような熱風！
　ですが、ダメ……！　髪や服すら焦げついていない……

　詰んだ……やっぱりゲームオーバー……

「くっ、ううっ」

　と思ったそのとき、大魔王が膝をつきました。
　ん？

「な、なんてまりょくだー。これはさすがのわたしでもかなわないー」

　なんという棒読み。

「真の勇者はキミだったのね。うん、気に入った。この城の所有権と、私の隣りの玉座に座る権利を授けよう」

　……？

「あとは、毎日三食、私の手料理を食べる権利と、いっしょにベッドで寝る権利もあげよう……普通に寝るだけだからね！　変なことしたら怒るからね！　それとそれと、週に一度はそのへんをぷらぷらお散歩もしたいなっ。ああでも、お買い物のときは荷物持ってね、これは約束だからね！」

　……遠まわしにプロポーズされてるのだろうか。

「ねえ、だめ……？　私のこと、嫌い？」

　僕は、勇者と旅をしてきたんだ……雨の日も風の日も、いっしょに、大魔王と討伐するために旅をしてきたんだ……

「いいや、大好きだよ。月子」

　そんな旅のこと、知ったこっちゃないです。
　やはり女性は慎ましい胸ですよね。

「やった！　じゃあさ、こっちの居間に来てっ。すぐにクッキー用意するから！」
「それは楽しみだなぁ」

　じゃあ僕はこれにて仲良くしてくるんで、テキトーに閉めといて、斎藤星奈さん。







　むくり。

「敢えて何も言ってやらない」

　ぱたり。

『次回予告』



　月子のクッキーおいしかったです。あのあとホッシーナもいっしょにお茶したら機嫌治ったみたいです。よかったよかった。

　……さて、ここで皆さんに悲しいお知らせがあります。
　次回、「僕のカノジョは超能力者」の最終話をお送りします。

　最終話「僕のカノジョは超能力者」、どうか、ご期待ください。

『コメント返信』



　さて、最後のコメント返信かもしれませんね。


[41] これは・・・暴走！？ｗｗ <2012/01/26 23:07:54> R12AuRt/P

　酒とは怖いものですね。ちなみに月子は酔うとすぐに寝てしまいます。



[42] 神道様！月子さんの性感帯はどこぞなんですかっ！？個人的には耳とかお腹とかだと妄想しているんですけど実際のところどうなんですか！？てゆーか月子さんを僕に下さい！ <2012/01/27 00:13:08> kmn0YQM1P

　耳とお腹はくすぐったがるので、性感帯の可能性は秘めていそうですね。月子は腰と首が弱いですよ。
　あと月子はあげません！　僕のカノジョです！