8、君のパンツは別として
なすび妖精が何故イトコさんにねらわれるのか。
「おっぱいに関係あるから」
だけじゃ何も解りません右近さん。
おかげで鬱憤晴らしのサンドバックにされる僕の気持ちも少しは理解をだな……。
嘘。あ、いや、実はかまってもらえてちょっと嬉しいんだけどね。
ピザを君に横取りされるのは日常茶飯事。
ミスドの割引券を取られ、防災リュックのコーラをがぶ飲みされた時はさすがに僕も頭に血が上った。
でも構わないよ、僕。だってデブは基本怒らない。いや、怒れない。
怒りにまかせ体温上げ、汗をかきたくないんだ。
「このムラサキは母なる生命体へ影響を及ぼす力がある。だからあの憎きイトコが……」
右近の実に胡散臭いファンタジー講座が始まる。
愛ある僕以外は聞いてられないだろうから短く略してみよう。
端的に言えば、生物の雌性に働きかけその機能を向上させる。てことらしいです。
例えば雌牛がなすび妖精の浸った水を飲めば、雌牛の乳は高性能な乳になるとか。
植物で言えば野菜や果物はよく育ち実り豊かになるとか。
でもって、右近のイトコさんは園芸部の部長として、部の植物育成のためになすび妖精をどうしても手にいれたい。とまあ、そういうことらしい。
因みにその効能を人間に活用すると……。
「立川さんのおっぱいはもっとエロ凄くなる」
というのが右近の見識だ。
その顔、男前だけど単なるエロ男子高校生だよ。
仕方ないか。君はおっぱいには異常な執着があるものね。
ないものねだりというかなんというか。まあいい。
しかしでも、ちょっと待って。
だとしたら何故妖精と風呂で絡み合いまくっている君は男子体型?
「因みに俺の体は単なる個性だろう。きっとムラサキのおかげでその個性がより引き出されて現在に至っているに違いない」
何というポジティブ解釈。御嬢さんお願い、もっと女子性を追って。
僕の理想を言えれば、喘ぐ時はカワユイ声にしてくれると色々助かるんだけど。
ちょっと、そこでなすび妖精をムギュムギュ握って遊んでるあなた。
「豊かな京野菜の実りはおそらく、こいつみたいな妖精が昔もいたからに違いない」
いえ、全然関係ないと思います。
単なる農家の皆様のご苦労の賜物だと……。
「平安時代は陰陽師と一緒に都を守って……」
いえ、それもないと思います。
守ってきたのは守護人の方たちだと……。
内容は別として。もうその辺でよしのすけさん。
「ねえ、右近。確か立川女史は園芸部だよね」
「そうだ」
「だったら何故君のイトコさんは彼の女史の妖精を入手しないの」
「それは……」
え、あ、ちょっと、また脱ぎ始めた。
脱ぐのね、脱ぐのね、やっぱり脱ぐのね。
本当にいつも君は僕のとこで脱いでばかりだ。
もう咎めないけど、せめて脱衣所でだな……。
仮にも結婚前の女子高生が……。
しかも今日はパンツがビキニブリーフて。
「何でだろう。俺も解らん」
そ、そうなの。ね。
それ以上に僕は君が今日、ビキニブリーフをはいているのことの方が全く解らない。
き、きつい。
まさか今まで妖精さんは……
「ここにあった」
お願い。もうやめて。
僕の好きな人。
股間を指さす右近は悪戯好きのキツネのようだった。
つづく