7、二十歳前に生活習慣病なのは別として
「ブーちゃんは制服だと色形からしてホント丸いなすびが歩いてるみたいだ」
そう言って笑う男子な女子が僕の部屋にいます。
彼女はさっき銭湯の男湯でみっちり汗を流してきました。
そんな彼女を見て胸肉あたりがもやつくのはおそらく今この世で僕だけでしょう。
右近が男湯へ入るのを咎める人がいるとすれば、それは彼女の股間を知る人物のみ。
それ以外に誰が彼女を見て女子だと断言できるでしょう。
銭湯での薄いエチケットタオル一枚ごときが如何に重要か。僕はこの時悟りましたとさ。
因みに僕は腰に巻いたりしないけど。
ウェストの問題ではなく、タオルが短いのさ。僕に非はない。
「背中に彫物のある親切なおじさんがさ、髭剃り貸してくれたんだ。おかげで助かった」
お願い。どうかそれ以上違う道へ行ってしまわないで。
さすがに僕、ついて行けなくなっちゃう。
「時に右近」
「何」
――。
聞きづらい。
どうしようこの間。
聞いてもいいのかな。長瀬先輩のこと。
でもな……。
て、ちょっ、ちょっと右近さん。なんでまた……。
脱ぎ始めてるよこの人は~。
さっき銭湯行ったばっかりでしょう。なんで?
「さ、ムラサキ、今度は一緒に湯へ浸かろうな」
えええええええ―――?
「俺はお前とのセックスがないと、どうも風呂に入った気がしない」
ちょ、ちょっと、あなた。何言ってるんですか。
大人の階段を一つも上ったことのない第二次成長期の男子を前に――。
しかも君がいつも僕のお風呂でやっていることはセックスではなく独りの……。あれ?でも男女でないにしても異種間でやりあっている場合はなんて言うんだろう?
もしかしてそういうの知らない高校生男子。僕、うぶ?
「う、右近、君はさっき銭湯で……」
「ああ、あの時はこいつ、俺の股に引っ付いてただけ。なにもやってない」
やったとかやってないとか、そういうことではなく……。
ああ、君はそんな言い訳まで男子っぽい。まるで浮気の潔白を唱える彼氏のよう。
いやいやそんなことはどうでもいい。今は長瀬先輩なる男子様のことをだな。
「ね、ねえ右近。その……、長瀬さんって右近の……」
「ああ、先輩のこと? あの人は一様、俺が同性としてアプローチした男」
―――神よ。デブの神様よ。
僕はもう……。
……。
「――てことに表向きなってる。だから俺には今、真に心ときめく男なんていない。女ってばれる訳にはいかないからな。あれ、ブーちゃん? どした」
……。
……は……。表向き……。てことは。
僕にもまだ望みがあると。
ありがとう。デブの神様。
僕はこれからもまっとうなデブとして誇り高く食べ続けていけそうです。
あんななすび妖精が相手なら、デブ科イケメン属である僕のほうが絶対的に勝る。
右近、僕はいつか絶対君を幸せにしてみせるからね。
よし、そうと決まりゃピザ屋さんに電話だ。そしてママカレーを温めておこう。
今夜は奮発してKFCのファミリーパックも3箱ある。
その後風呂場でなすび妖精と戯れ合った右近は一段と男子めいて部屋に現れた。
男物のパンツ姿の彼女は本当にどこをみても男子そのものだった。
何故こうも骨格までが男子化して彼女は育ってしまったのだろう。
全くの謎だ。
おかげで僕はいつまでたっても君の夢で夢精できない。
ああ残念。
つづく