学校が終わり学生たちがとぼとぼと帰る。
部活は無い。
今はテスト期間なので部活は無いのだ。
いや、てか最初から部活になんて入って無かった、ワキガは。
ワキガ。
ワキガはあだ名である。
脇田とか岩木とか、「ワキ」が名前に入ってるわけじゃない。
ただ顔というか、全体的に醸し出す雰囲気が、「ワキガ」と言った感じだったらしい。(友達談)
ちなみに念を押すけどワキガはワキガでは無い。(ややこしいね)
ワキガには友達がいる。
ゴメン嘘、いない。ただ数人のたまに喋る仲間というか、そういう人たちはいる。
それって友達なんじゃ…って思った人はごめんなさい。うん、友達だよね。
とにかく話は逸れたが、下校途中ワキガは、その友達数人と談笑をしていた。
「クリスマスだよー、俺らが最も劣等感抱くシーズンだよー。」
「マジでリア充死ねよな。」
友達が口々にそう言う。それをワキガは黙って聞いていた。
ワキガはあんまり同意できなかった。
もともとそこまで固執は無かったし、それにワキガには彼女がいたからだ。
その子は、隣のクラスの女子で「うに子」と呼ばれていた。
もちろん本名じゃない、そんな名前の奴がいたら全裸でマラソンしてやるよ。
あ、やっぱ嘘、もしもの事があるからね…。
ちなみに何であだ名がうに子なのかはよく分からないらしい、本人もよく分からないらしい。
でも今回、この物語には何の関係も無いから大丈夫だ。
ワキガはある時うに子の事が好きなことに気付いた。
最初は何となく話しやすそうだったから話しかけただけだったんだけど
話しているうちにだんだんうに子のことが好きになったのだ。
明るくて純粋でまっすぐで、そんなうに子が大好きになってしまったのだ。
そんで告白した。ほいでOKだったわけだ。
最初から、正直OKはもらえるんじゃないかとワキガは思っていた。
向こうも何となくこちらの事が好きだろうと思っていたからだ。
でもそれは打算とかそういうのではなく、お互いの信頼というか、阿吽の呼吸というか、
そういうもののたまものであったのだ。
だからこそなのか、ワキガは、友達の言葉に軽く嫌悪していた。
「リア充死ね」
なぜそう言い切れるのか、なぜそこまでうらやましく思うのなら、行動しないのか
ワキガはそう思った。
冗談で言ってるのか?嫌でもその割には切実に見えるし。
あーでも好きな人がいないなら仕方がないのか?あれ?
じゃあ何で嫉むんだろう。もしかして「彼女」というステータスがほしいだけなのか?
色々巡らせた後最後に自分で突っ込む。
俺だって、昔はうらやましかったじゃないか…。
嫌な奴だな俺って…。
いつも最後にそう自己嫌悪する。
自分は彼女が出来たから調子に乗っているのか?
そんなふうに嫌悪する。
そしてさらにはそういう嫌悪している自分に酔っているんじゃないかと更に嫌悪するのだ。
そうしていくうちに自分には恋愛する権利が無いんじゃないかと思う。
12月上旬、うに子とメールをしているときにふと
「クリスマスはどっか遊びに行こうよ」
と来た。
来るような気はしてたけど本当に来た。
心の底から嬉しかったけど、ワキガはちょっとだけ自己嫌悪に陥った。
何で俺みたいな奴がうに子と付き合えるんだろう。
どう考えても罰ゲームだよね、俺みたいな帰宅部のしょぼい奴とクリスマスなんて。
俺はそもそのいつもケチくさい事考えて、やぼったいし、とにかくケチくさいし、
あ、2回言った。
だから返事できなかった。
変な自己嫌悪と、リア充という言葉への嫌悪と、
もっと平たく言えばもやもやした不安な気持ちがあったのだ。
ワキガはネットの検索サイトで「リア充 クリスマス」と検索した。
「リア充「お前クリスマス一人なのww」俺「」←上手く返した奴優勝」
「クリスマスにリア充妨害のためにできること考えようぜ」
「クリスマスまであと10日 ネットに溢れる「リア充爆発しろ!」の声」
そこは前から知っている世界だった。
今まで軽い気持ちで見てたんだが、なぜか最近は、憤りを感じるようになった。
なぜお前らに邪魔されなければならないのか!お前らなんかに邪魔されるか!
変な被害妄想のようなものが沸いてしまう。
所詮シャレで言ってるだけだと分かってるのにどうしても変なふうに考えてしまう。
わざわざ自分で検索しておいて勝手に怒っている。
だんだん分からなくなってくる。
自分が何をしたいのかも分からなくなってくる。
もやもやして、要らないことを考えて、そこの考えから抜け出さなくてはいけないのにそれが出来ない。
変な感じ
コノ部屋ニオウヨー!
それで最終的に自分はうに子にふさわしくないんじゃないかと思ってしまう。
ワケ変わらん、意味不明、極端なネガティブ思考のゆく果てだ。
そしてワキガはもう寝ようと思った。
寝たら治る。
やったああああああああああああ!!!!!!治るよ!!!!!!!
そんな気持ちでワキガは寝た。
でも寝れなかった。
仕方ないから携帯でまた色々スレでも見るか。
ワキガは携帯を手に取るとはっとした。
そういえば、うに子にメールを返信してなかった。
携帯を開くと。
2件メールが来ていた。
一件目:「うー?」
二件目:「ゴメン寝たかぁ。じゃあまた明日ね!」
急にメールが返ってこなくなった不安と、
相手に気を使わせないように、
寂しさを精いっぱい隠して茶化したであろう葛藤がそこには見ることができた。
他の奴にはきっとうに子の葛藤や心理は分からないだろう。
ただただ彼女がほしいとファッション感覚で言ってる奴には一生分からないだろう。
それほどの自信が持てるほど、ワキガはそう思った。
それと同時に、ワキガはそれで嫌なことが吹っ飛んだような気がした。
なぜかはよく分からないけど、いつもそうだったような気がした。
嫌な事とかそういうのを忘れさせてくれる。
リア充だとか、周りから見てどうとか、
そんなネズミのチンカスにも満たぬような糞みたいなことを考えている自分が馬鹿らしくなった。
ワキガはうに子との子が大好きで。
それが事実で、むしろそれしかない。
リア充と名前をつける奴もいるだろう、でもそれを否定もしないし、変に意識したりもしない。
そんなのどうだっていいんだと思った。
落ち込んだり元気が出たり、落ち着きのない奴だとワキガは自分でも思ったが
きっとみんなこういう葛藤をしてるんだろなと勝手に思い込むことにして
「ゴメンうたた寝してたー!クリスマスどっか行こうかー!また今度会ったときに二人で決めよ!」
と返信した。
【あとがき】
(¬_¬)うにうにほきき
ぶくまん