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第一話【掃除大変】

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腹が減った

時間は夜の一時、こんな時間にラーメンのカタログを読みふけっていたのが失敗だった。

自分のミスは自分で正さなければならない、と教えられたのでコンビニに行くしかない!

不思議と深夜はテンションが上がる、明日学校なのに。

あぁ雨だ。

しかしさほど距離はないのでパッといってパッと帰ってこよう、

パッと行くつもりだったので鍵を閉めずに行った、往復で二十分程度だ、大丈夫だろう。

この考えがそもそもの間違いだった。







男は黙って豚キムチ。

カップラーメンと野菜ジュースを購入し帰宅、ボロボロアパートの壊れそう階段を上りきった時、

異変に気付いた。

玄関が開いている。

サァっと血の気が引いた

お隣さんか?いや違う、こんな時間だ、もう寝ているだろうに。

大家さんも然り、いくら家賃を滞納しているからといってこんな時間に押しかけてはこないはず。

俺は恐る恐る自分の部屋を覗きこんだ、散らかっている俺の部屋に何かがいる

アレは…パンツだ、パンツがみえる。

誰かが寝転がっていてこの角度からパンツがみえた。

ほほう。

しかしそれどころではない、かってに誰かが自分の家に入り込んでさらにパンツ丸出しで寝ている。

とりあえず俺はゆっくりと部屋に入り、自室へ向かった。

ひどい散らかりっぷり、我ながらないわー、と思った

その散らかった部屋のわずかな隙間に敷かれた布団でパンツは寝ていた。

そこで驚いた、このパンツ血だらけではないか。

いや、パンツが血だらけという訳ではなく、このパンツ丸見えの女性の服が血だらけであったのだ。

パンツ改めこの女性、髪が真っ白だ、なんと寝顔の可愛らしい。

ところどころ血が付いているが、

起こすべきか、しかしこんな得体のしれない女、何をしでかすかわからない、しかも血だらけときたもんだ

もし仮に、この女性が最近この辺りを騒がせている行方不明者多発事件と関係があるとしたら、

しかし、どうにかしなければならない。

そうだ警察だ、国の力を発動しよう。

電話を探そうとかがんだ瞬間、目があった。

大きな眼球に点が一つ付いただけのような眼がこちらを凝視している。

すっごくビックリしている、悲鳴すら出ない、固まった。

さっきの可愛らしい寝顔が嘘みたいだ、嘘だったのか。

お互い、少しも動かない。

めっさ心臓バクバク鳴っている、吐きそ…、

その時、いつの間にか女は俺のズボンの裾を掴んでいた。

「ひっ!」

声が出た、声なのか悲鳴なのかわからない声だった。
2, 1

  

意識が掴まれているズボンの裾一点に集中する。

血染めの女はジッ…と俺の眼を見続けている。

怖い、洒落にならないかもしれない。

助けを呼ぼうか、しかし深夜とあれば大声を出すのを思わず遠慮してしまう。

こんな非常時なのに。

どうしよう、どうしようもない。

この状況を図で説明したい、絶体絶命だ。

とりあえず声をかけてみよう。

「だ、大丈夫ですか?」

「…」

無言。

ち、ちくしょう、俺がいったい何をしたというんだ。

鍵を閉めなかっただけでこんな仕打ち、泣きそうになってきた。

「こ、ここ、俺の家ですよ?間違えていませんか?」

「…」

なんでもいい!とりあえず出てってくれ!

その時、女がゆっくり起き上った。

「うひぃッ!?」

人に対してするリアクションでは無いがそれくらいビックリした。
女はゆっくり立ち上がり、

「………おじゃましました」

女は何事もなかったかのように、本当に何事もなかったかのように真っ暗闇の外に出ていった。

俺は、ただ呆然としていた。

そしてハッと我に帰り、女を追って外に出た。

もう女はいなかった、ただただ静かな夜だった。

俺は部屋に戻り、しっかりと鍵を閉め、血だらけの部屋を見て、orz ←こうなった。








次の日、



4, 3

  

俺の名前は八木野 清【はちきの しょう】、やぎのではない。

絶賛在学中の高校二年生だ。

だから真面目に学校に行く。

それが例え、非日常的出来事があって、部屋の掃除などで心底疲れてろくに寝ていなくてもだ。

…まぁ、午前中に単位の危うい教科が集まっているという理由もあるが。

「なんか怒ってんの?顔がいつもよりヤバいよ?」

多分不機嫌そうな顔をしているであろう俺に話しかけてきたのは数少ない友人の一人、深井 ちか子【ふかい ちかこ】である。

運動神経抜群で学級委員長、さらにはクラスの人気者というハイスペックガールである、言葉使いはアレだが。

「しいて言えば時間割に納得がいかない、なんで二日続けて一限が英語なんだ。」

「眼のくまも凄くて怖い、休めば?」

「だから単位が危ないんだす!」

「知ってる」

こやつめ…。

「次の時間ガチ寝すれば?隠してやるよ」

深井は俺の前の席である、それで仲良くなれたし授業であてられた時などはよく助けてもらっている。

良い奴である。

「そうする…いつもすまんねぇ…」

「じじいみたいw」

お言葉に甘えて俺は夢の世界に飛び込んだ。


ふわふわする、ここはどこだ?

あぁなんだ、夢か?…俺の部屋ではないか、あれ?布団どこやったっけ?

あぁあった。

俺は布団を掴んだ、何か、違和感があった。

手のひらを見た。

…真っ赤だ、これは…

後ろを振り向いた、後ろには見知らぬ女…

いや、知っている、昨夜の…血のおん…な!!?

「おわぁぁっ!!!」

絶叫した、女はいなくなっていた。

周りには、驚いた表情のクラスメイトと、あちゃ~…と言わんばかりの呆れ顔の深井。

そして鬼の形相の先生がこちらを見ていた。

最悪の目覚めだ。




しこたま怒られていたらチャイムが鳴ってしまった。

「八木野!お前昼なったらあたしン所こい、ありがたい話をしてやるよ」

なんと説教は昼にまで続くそうだ、今のうちに体力を蓄えなければならない。

そのために昼までの三時間は寝よう、先生も罪な人だ、こうして過ちを繰り返させるのだ。
6, 5

  

「自爆してやんのw」

「ちゃんと隠してくれよ」

「無茶言うなしw」

最悪の目覚めのせいで寝た気がしない、なぜ机に突っ伏して寝ると余計眠くなるのだろうか。

あと腕を枕代わりにして寝ると血が止まって感覚なくなるよね、そんなことはどうでもいい。

昨日の女、夢にまで出てきやがった、トラウマになってしまったではないか。

「早寝早起きしないからだ、自業自得ってやつね」

「ちゃんとした理由があんだよ、…ちゃんとしてるかっつったら微妙な所だが」

「聞いてほしいのかい?」

「そんなことはない」

絶対信じてもらえないだろうからな

「遠慮すんなよwお母さんに言ってごらんwん?wん?w」

うぜぇ!バカにする気満々ではないか、すこしからかってやるか。

「なかなか静まらない息子をなだめるのに時間がかかったんだよ」

「は?お前子供いるん?犯罪だw」

こやつ天然なのか、少し判りにくかったか。

「サイテー…」

と、思ったら隣の席の鈴木さんに聞かれていた、お恥ずかしい。

「なぁw犯罪だよなw」

深井は気付いていない、マジモンだ。

「いいか深井よく聞け、今のは比喩表現で、息子とは俺のちっ!!」

横っ腹に鈴木さんによる手刀がめり込んだ。

「それ以上言うな」

「かはッ…すんませんした…」

本当にすいませんでした。

深井はまだよくわかっていない顔をしている。
そんなこんなで授業が始まった

痛む横っ腹をさすりながら俺は昼の説教に備え寝た。

夢にあの女が出ないことを願って。




昼休み、さすがに連続で悪夢を見るほど俺は病んでいない、ぐっすり眠れた。

完璧だ、どんな説教でも仁王立ちで聞いてやるぜ!

「逝ってくる」

「生きて…帰ってこいよ!」

深井と短い別れを告げ、俺は意気揚々と教務室に向かった。

しかし…今俺が怒られるのも元はと言えばあの血染めの女のせいだ。

アイツのせいで食欲も吹っ飛び、さらには血の染み込んだ布団を片づけるのに無駄な時間をかけてしまった。

とりあえず押し入れにねじ込んだが隣の部屋に血が滴っていないか心配だ、壁薄いからなぁ…

と、怒りをぶり返していたら教務室についた、いかんいかん、これからありがたい話を聞くのに気分が悪いと余計イライラしてしまう。

笑顔笑顔、スマイルだッ!

「失礼しまぁす」

あれ、教務室に入ったよな?目の前に目があるぞ?

てか見覚えのある目だな、点みたいな黒目…

「ひっ、ひえぇぇえ!!!」

俺は後ろに飛んで逃げてすってんころりん。道行く奴らも驚いていた。

見覚えがあるも糞もなかった、忘れもしない俺の最新式のトラウマ。

血染めの女だった。
8, 7

  

尻もちをついている俺、血染めの女、何コイツ?みたいな顔で俺を見る生徒。

皆、俺を見るな、注目すべきはアイツ、血染めの女のはずだ。

「なななななんで、学校に、」

ビビりまくって声が揺れる。

血染めの女は昨夜と同じ、ジッと俺を凝視している。

血染めといっても、昨日のように血だらけではなく普通に制服を着ているが。

てか今思い返せば昨日も制服だったかもしれない、血だらけのあの状況で気がつかなかった。

睨みあう両者、実際に睨んでいるのは俺のみだが。

その時

「八木野っ!何座ってんだ、さっさとこいや!」

先生だ。

「な、なんでこいつが、?」

「?淀川がどうした、そんなんよりもさっさとこいよ、昼飯食えねぇぞ」

よどみがわ、それがこの女の名前か、なんて禍々しい!

淀川は俺に背を向け、

「………失礼しました」

「おう」

先生に礼をし、教務室を離れようとした。

「ま、待ていっ!!」
思わず呼びとめた。

ピタッと女は止まった、ゆっくり振り返った。

「昨日っ!なんだったったった!!」

噛んだ。

「お前がなんだ」

先生にツッこまれた。まったくだ。

「お前!何者なんだ!血だらけの!」

もう自分でも何言ってるかわからん。

先生も何が何やらと言わんばかりの顔をしている。

淀川はゆっくり口を開いた。

「………関橋高校三年二組、出席番号三十二番、淀川 怪子【よどみがわ かいこ】」

先輩ですかそうですか、そこじゃない!

「そこじゃないし!じゃなくて昨日だ昨日!」

「落ち着け八木野、クールダウンだ」

「これが落ち着いてられますか、あの女は昨日俺の部屋を血だらけにしたんですよ!」

「…まぁ、授業寝るくらいだしな、疲れてるんだな今日は…」

「違うんですよ!昨日アイツは!」

「先輩にアイツなんて言っちゃだめだぞ」

「あぁそうですね、淀川先輩は昨日…」

とか何とか言っているうちに淀川先輩はいなくなっていた。畜生!

この後俺はこの騒ぎのおかげで説教は流れ、教室に帰り、メロンパンを貪った。
10, 9

  

さて。

説教が無くなったおかげで飯も食えたし時間もある。

あの女がこの学校にいるという恐ろしい事実を知ってしまった今!

「ロイヤルストレートフラッシュエクスペリエンス」

「そんな手あったっけ?」

「いや、なんか同じ数字が三つ揃ったから…だいたいこんな感じだった気がする」

俺は深井とルールの知らないポーカーをしていた。

「ツーペアとスリーペアで凄いことが起きるらしい」

「マジかよ…お互い協力していこうな」

「あぁ…」

ポーカーが協力していくものなのかは知らないが。

「なぁ深井」

「んー?」

「淀川先輩ってしってるか?」

「あー知ってる知ってる、あのヤバい人でしょ?」

!?

「ヤバいってやっぱり!?ちょ、詳しく」

「何何そのがっつき?好きなのw?」

「いやマジで違う、詳しく」

「ノれよ…まぁいいや」
まさか知っているとは、いやしかし恐怖の塊のような女だ、当然と言ったら当然であろう。

「なんかね、友達から一回聞いたんだけど、夜中にコンビニ行ってたら淀川先輩が血だらけで歩いてたんだって」

やっぱりあの女だったのか。

「で、制服同じだったから次の日先輩探してみたら普通に学校いて、夢だったんかなぁーって」

「夢じゃない!アニメじゃない!!俺も見た!」

「お、おう、じゃあマジなんだね、関わらない方が…」

「行くぞ!」

俺は深井の手を掴んだ。

「!っちょ!掴むなて!」

「探しに行こう!いっぺん話をしないと気が済まん!」

そうだ、とにかく探そう、そして部屋を汚したことを怒ろう、さすればすべてがスッキリする。

そう、俺は小さい男なのだ。

しかし!ここで何かをキッパリしなければまた悪夢を見ちゃうぜ!嫌だぜ!

俺は深井の手を引っ張り教室を飛び出した!



目の前には淀川先輩がいた。

「きゃーーーーー!!!」

俺は尻もちを美しくついた。それはそれは綺麗な尻もちであった。

「オイッ!いきなり悲鳴上げるとか失礼だろ!」

深井にゲンコツされた、こっちゃそれどころじゃないんじゃい!
12, 11

  

「よ、淀川!先輩!」

畜生またこの目だ、固まっちまうし嫌な汗かいてくる。

「すんませんね先輩、コイツ春なんですよ」

「違うし!せ、先輩、昨日のこと…」

その時、淀川先輩がゆっくり動いた。

「………アタシも君に用があるの…」

「えっ!?」

「放課後…君の家で…」

俺は完全に固まってしまった。

淀川先輩はそのまま階段を下りていってしまった。

残されたのは尻もち状態をキープしてる俺、何が何やらという顔の深井、何コイツ?みたいな顔で俺を見る生徒。

「…事情は知らないけど、よかったね」

「………あ、あわわ」

絞り出したセリフは、精一杯の意思表示であった。


『放課後…君の家で…』

あ、あわわ…

どうしよう、いきなりすぎて断れなかった約束。

てか約束なのか、一方的すぎるんじゃないか?こんなのよくないぜ、勝てるよ裁判。

しかしもう一度あの女、淀川先輩に会いに行き文句を言えるかと言ったら…。

あぁ、放課後までか俺の人生、短かったな、童貞のままか、化けてでたりしようかな。

「…大丈夫か?」

地の底まで落ち込んでいる俺を見かねて隣の鈴木さんが心配してくれた。

「死にたくない…」

「えぇ!!?」

驚かせてしまった、まぁこの世の終わりのような顔してこんなこと言ったらクールな鈴木さんもビックリするわ。

「死ぬ前に彼女がほしかったです…」

「良い相手がいるじゃないか」

「え?」

「な!なんか対策でも考えたら!?」

深井が急に振り向いた、驚かせおって。

「ふっ…」

鈴木さんが深井を見て微笑んだ、深井は何か焦って見える、何事だ。
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「とりあえず何があったんだ?」

「なんか、二年の先輩が怖いんだって」

あぁ怖いさ、昨日の俺の部屋はアイツのせいで地獄と化していたんだ。

この年にしてトラウマを作ったよ!

「淀川先輩っていうんだけどさ、血まみれらしいよ」

「重症じゃないか」

「そうじゃねぇよ。血まみれで俺の部屋にいたんだよ」

「……ちょっと、よくわからないな」

ですよね、しかしこれが現実(リアル)なんでよ。

「怪我してたのか?」

「いや違うね、アレは絶対に返り血だね!」

「確認したの?」

「いや…してないけど普通にいましたよ、学校に」

「ふーん、で、なんで死ぬんだ?」

「死なないわ!…いや、死ぬかも…」

あぁ…思い出したらあわわ。

「大丈夫だって!わざわざ部屋に行くってこと一緒に掃除してくれるんだろ!?」

「深井にはそんなにいい人に見えたか?」

「あぁ…目怖かったね…」
「深井は見たのか?先輩を」

「うん、八木野に引っ張られて」

「一人で行く勇気なんて俺にはないね!」

「威張んな、ドアの真ん前にいるんだもんなぁ、ビックリした」

俺なんか一日で二回尻もちをついたわ。

「しかし血だらけか…さらに部屋に来るか、確かに怖いものはあるな」

「だろ!?あーもうっ!どうしよー!」

お手上げー!\(??)/

「……じゃあさ、一緒に行ってやろうか?」

「え!?」

深井からまさかの提案。

「ふっ…いいんじゃないか?二人とも途中まで帰り道同じだったろう?」

「いや、心強いけどさ…いいんか?」

「後ろの席に花瓶置かれたら嫌だしね!三人いれば何とかなるZE!」

深井さん…あんた女神や…。

俺の頬には一筋の熱い雫が…。

「ちょっと待て、三人って何だ」

「私と八木野と鈴木ちゃんのスリーペア」

「おぉ鈴木も来てくれるのか、ありがてぇ」

俺の頬に一筋の

「待て、私は行くとなんて言ってないぞ」
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「えっ?」

「えっ?」

「いや、え?じゃない、なんで私が、てか深井は私がいていいのか?」

「え?多い方が怖くないでしょ?」

「…」

鈴木さんは呆れた表情だ、なんでだ?

「二人の方がいいんじゃないかな~?」

「いやぁ数が多い方が俺はいいなぁ」

「お前じゃねぇよアホ!」

えぇっ!?

「ほら、八木野が困ってんだしさ、いいじゃんいいじゃん」

「そうじゃなくてさ…、まったく深井はこういうことに関しては頭悪いな」

「なんだとっ!」

「深井は頭いいぜ!授業中よく助けてもらってるしな!」

「とぅへへっw」

「…お似合いだよ」

鈴木さんはまだ呆れている、まったくよくわからないお嬢さんだぜ。

「…まぁ深井がいいならそれでいいよ、どんな人か見てみたいし」

「よいしゃー!」

こうして深井と鈴木さんがパーティに加わった。

そして今は授業中だった、うるさくしてすいません!
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ぼぐ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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