ここはどこだ。
辺りを見回すが何も見えない。
真っ暗というわけではないし、かといって明るいというわけでもない。
辺り一面何も無く、腕や体に視線を向けてみるがそこには何も存在しない。
何かを視覚する事が出来ない故に、見えないという表現しか出来ない。
しかし、そんな起きているのか寝ているのか定かではない状態だというのに、
不思議と意識はハッキリしている。
なんだこれは……夢だろうか……。
そう、たった今見ていた夢の続きなのだろうか……。
……
…………気がつくと部屋にいた。
久しぶりに見た夢は、何とも言えない余韻を残していたが、内容は全く
思い出せない……気分が清清しいので、良い夢だったのだろうか。
何故か、今自分がここに居る事がとてもありがたいことのような気もしている。
こんな気分にさせてくれる夢とは一体どんな内容だったのか……。
懸命に思い出そうとするのだが、どうしても漠然として、曖昧で、
受け手の無い砂時計のように次々と記憶が抜けていってしまう。
今朝の夢はとても重要だった気がする。
俺は忘れてはいけない何かを忘れてしまった。
そんな気さえ……。
暫く思い出そうと努力していると、部屋にノックの音が響いた。
思考を中断し、扉を開けると、従業員がにこやかに
「昨夜は良く眠れましたか?まもなくチェックアウトのお時間ですが、
いかがいたしましょう」と話しかけてきた。
時計を見るとチェックアウト予定時刻の丁度1時間前だった。
俺は一言「チェックアウトだ」とだけ告げた。
創世/遭遇/戦闘
ホテルを出立し、早速仕事に取り掛かろうと、鞄から携帯式の
情報端末を取り出し、社員専用のサイトにアクセスする。
認証IDとパスワードを専用サイトに登録しておけば、
自動的に現在地付近にいる式機の動向が表示されるように
なっていた。
”《現在地:第30号スフィアー1172区画》
”《第30号スフィアー1177区画に四式武装機発生・至急現場に
急行されたし 23312/4/41 11:31》”
画面に表示された情報をクリックし、対応報酬を確認すると
”1,000,000c”と、数字のみが簡潔に追加表示された。
久しぶりの標的だが、この額からすると相当厄介な相手らしい。
エレベーターに乗り込み、扉の脇にある端末に階数を入力するが、
既に1177は封鎖区画に指定されているらしく
”指定された階への運行は現在行っておりません”
という表示が出て、アクセスできないようになっていた。
急がなければ被害が拡大してしまう上に、他のヤツに獲物を横取り
される可能性もある。
”こんな時のために”と、会社から配布されている専用パスを取り出し、
エレベーターに備え付けてある端末のカードリーダーに読み込ませ、
再度階数を入力すると『指定階への到着は、1分21秒後です』と
機械の音声でアナウンスが流れ、エレベーターが動き始めた。
たった5区画の移動なのに1分以上かかるということは、エレベーターの
動力部をやられているようだ。
段々と該当区画が近づいてくるにつれ、エレベーター内にも爆発音と
ともに地鳴りが響き始めた。
『大変おまたせしております。あと、11秒後に到着いたし
エレベーター内にあるスピーカーから、目的の区画が近づいて来たことを
知らせるアナウンスが流れ始めたが、途中で高層ビルの屋上から飛び降りた
かのような衝撃が脚部を伝って体全体に走り、その負荷にヒザの関節が
耐え切れずミシミシと悲鳴をあげた。
そのまま不恰好にも尻餅を着いてしまったが、そんな事を気にしている
余裕など無い。
突然、ピタリ……と、エレベーターのあらゆる機能が停止したようだ。
緊急停止用の減速ブレーキがきかなかった事から、そう推測できた。
内部予備電源に切り替わったのか、赤色灯がエレベーター内を照らし、
先ほどまで聞こえていた、聞き取り易い女性の声ではない無骨な機械の
音声が、現状をアナウンスし始めた。
『ドウリョク ガ ダウンシマシタ。ゲンザイ ヨビデンゲンニテ
ウンコウチュウ。アンゼンカクホ ノ タメ 、コノママ シバラク
オマチクダサイ……クリカエシマス……』
扉を無理矢理こじ開けて外を覗くと、運良く区画の入り口に繋がる通路の
前でエレベーターが止まっていた。
エレベーターから通路へと出て暫く進むと、シティーの動力部と思われる
広い空間へと出た。
安全のため周囲をスキャンすると……すぐに目標を補足できた。
式機だ。
情報端末を取り出し、社員専用のサイトにアクセスする。
認証IDとパスワードを専用サイトに登録しておけば、
自動的に現在地付近にいる式機の動向が表示されるように
なっていた。
”《現在地:第30号スフィアー1172区画》
”《第30号スフィアー1177区画に四式武装機発生・至急現場に
急行されたし 23312/4/41 11:31》”
画面に表示された情報をクリックし、対応報酬を確認すると
”1,000,000c”と、数字のみが簡潔に追加表示された。
久しぶりの標的だが、この額からすると相当厄介な相手らしい。
エレベーターに乗り込み、扉の脇にある端末に階数を入力するが、
既に1177は封鎖区画に指定されているらしく
”指定された階への運行は現在行っておりません”
という表示が出て、アクセスできないようになっていた。
急がなければ被害が拡大してしまう上に、他のヤツに獲物を横取り
される可能性もある。
”こんな時のために”と、会社から配布されている専用パスを取り出し、
エレベーターに備え付けてある端末のカードリーダーに読み込ませ、
再度階数を入力すると『指定階への到着は、1分21秒後です』と
機械の音声でアナウンスが流れ、エレベーターが動き始めた。
たった5区画の移動なのに1分以上かかるということは、エレベーターの
動力部をやられているようだ。
段々と該当区画が近づいてくるにつれ、エレベーター内にも爆発音と
ともに地鳴りが響き始めた。
『大変おまたせしております。あと、11秒後に到着いたし
エレベーター内にあるスピーカーから、目的の区画が近づいて来たことを
知らせるアナウンスが流れ始めたが、途中で高層ビルの屋上から飛び降りた
かのような衝撃が脚部を伝って体全体に走り、その負荷にヒザの関節が
耐え切れずミシミシと悲鳴をあげた。
そのまま不恰好にも尻餅を着いてしまったが、そんな事を気にしている
余裕など無い。
突然、ピタリ……と、エレベーターのあらゆる機能が停止したようだ。
緊急停止用の減速ブレーキがきかなかった事から、そう推測できた。
内部予備電源に切り替わったのか、赤色灯がエレベーター内を照らし、
先ほどまで聞こえていた、聞き取り易い女性の声ではない無骨な機械の
音声が、現状をアナウンスし始めた。
『ドウリョク ガ ダウンシマシタ。ゲンザイ ヨビデンゲンニテ
ウンコウチュウ。アンゼンカクホ ノ タメ 、コノママ シバラク
オマチクダサイ……クリカエシマス……』
扉を無理矢理こじ開けて外を覗くと、運良く区画の入り口に繋がる通路の
前でエレベーターが止まっていた。
エレベーターから通路へと出て暫く進むと、シティーの動力部と思われる
広い空間へと出た。
安全のため周囲をスキャンすると……すぐに目標を補足できた。
式機だ。
既に、相手にはこちらの接近を察知されているはずだ。
この距離で気付かないほど生体スキャン性能が悪いとも思えない。
注意深く観察してみると、標的の周りにある大気の組成に微妙な変化が
見られる……素粒子変換式シールドを展開しているらしい。
手持ちの端末から会社のデータベースにアクセスし、対象識別検索を
掛けると、すぐに検索結果が表示された。
”市街地占拠用歩兵部隊所属 β式機
全長:198.0mm
重量:12.783t
主装:GAU-8/A
副装:M82A3”
人型で、武装が実弾兵器のみ。
しかも四式武装機としては装備がかなり古臭い。
防御面では、最新式の素粒子操作技術を利用している事から、
エネルギー消費を防御面のみに費やし、武装はエネルギー消費の無い
物理兵器にした、といった按配だろうが、それにしても極端過ぎる。
……珍しいタイプだが、何故こいつが100万なのか。
今まで片付けてきた式機の中でも、武装面で言えば最低ランクの獲物だと
思うが、あの実弾兵器はフェイクで、どこかに生体ハッキング等の高度な
武装を隠しているかもしれず、油断はできない。
どちらにしろ……こうして遠くから様子を伺っていても埒があかないな。
まずはこちらから仕掛けてみるか。
相手に向かって跳躍すると、ベゴンという鈍い音を立てて鉄製の通路に
爪先の痕が残った。
明らかに反応の鈍い式機が、俺が跳躍した後にこちらを向いた。
と、両肩・腹・両膝から5基の銃口が現れたが、弾丸が発射される前に
目の前へと降り立った。
最初の弾丸が発射され、俺の外部装甲に弾き返される頃には、相手の
シールドを無効化し、右腕の粒子加速器が出力最大で稼動していた。
二発目の弾丸が俺に到達する前に右に交わし、右手を掌打の形にして
相手の頭部へ放つ。
こちらの動きに反応しきれていない様子の相手の、頭部と思しき筒状に
なっているメインカメラ搭載部位に掌打が炸裂し、同時に反物質を中に
打ち込んだ。
甲高い金属音と、反物質との対消滅が発生する際の、ストロボが
焚かれた時のような破裂音が、ほぼ同時に鳴り響いた。
この距離で気付かないほど生体スキャン性能が悪いとも思えない。
注意深く観察してみると、標的の周りにある大気の組成に微妙な変化が
見られる……素粒子変換式シールドを展開しているらしい。
手持ちの端末から会社のデータベースにアクセスし、対象識別検索を
掛けると、すぐに検索結果が表示された。
”市街地占拠用歩兵部隊所属 β式機
全長:198.0mm
重量:12.783t
主装:GAU-8/A
副装:M82A3”
人型で、武装が実弾兵器のみ。
しかも四式武装機としては装備がかなり古臭い。
防御面では、最新式の素粒子操作技術を利用している事から、
エネルギー消費を防御面のみに費やし、武装はエネルギー消費の無い
物理兵器にした、といった按配だろうが、それにしても極端過ぎる。
……珍しいタイプだが、何故こいつが100万なのか。
今まで片付けてきた式機の中でも、武装面で言えば最低ランクの獲物だと
思うが、あの実弾兵器はフェイクで、どこかに生体ハッキング等の高度な
武装を隠しているかもしれず、油断はできない。
どちらにしろ……こうして遠くから様子を伺っていても埒があかないな。
まずはこちらから仕掛けてみるか。
相手に向かって跳躍すると、ベゴンという鈍い音を立てて鉄製の通路に
爪先の痕が残った。
明らかに反応の鈍い式機が、俺が跳躍した後にこちらを向いた。
と、両肩・腹・両膝から5基の銃口が現れたが、弾丸が発射される前に
目の前へと降り立った。
最初の弾丸が発射され、俺の外部装甲に弾き返される頃には、相手の
シールドを無効化し、右腕の粒子加速器が出力最大で稼動していた。
二発目の弾丸が俺に到達する前に右に交わし、右手を掌打の形にして
相手の頭部へ放つ。
こちらの動きに反応しきれていない様子の相手の、頭部と思しき筒状に
なっているメインカメラ搭載部位に掌打が炸裂し、同時に反物質を中に
打ち込んだ。
甲高い金属音と、反物質との対消滅が発生する際の、ストロボが
焚かれた時のような破裂音が、ほぼ同時に鳴り響いた。