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またゾンビ出た!

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 ばんばんばん
 俺は鉄砲を撃った。オートマティックのやつだ。それを撃ってゾンビたちを倒していく
 そんな日々がもう一週間も続いていた
 街のあちこちでは火の手があがっている
 俺は町をさまよった
 とても辛い日々だった
 かつての仲間たちは皆ゾンビになってしまった
 俺は強化スーツを着ていたから噛まれても平気だったが仲間は結構な数たおれていった
 とても悲しかった
 なのでゾンビをやっつけようと思った
 強化スーツのおかげで俺の攻撃力はやばかった
 俺はゾンビどもを殴ったり鉄砲で撃ったりした
 ゾンビどもはなすすべもなく倒れていった
 俺はその功績を認められて神様にほめてもらった
「きみはえらいな! ご褒美にしあわせにしてあげよう」
 俺はエデンというところへ連れていかれた
 そこでは何も苦しいことなんてなかった 美少女の天使たちに囲まれて俺はぬくぬくと暮らした。おいしいものがたくさんあったし、暑くも寒くもなかったし、とても広い平原の上にあるお屋敷でみんなとなかよく暮らした。すごく幸せだった。でもゾンビたちはまだ大陸の方に残っていたので、たまに空飛ぶ要塞に乗り込んで、ゾンビどもがうごめきはびこる大地に神の雷を落としてやった。どっかああああああん!!!!!!!!!!!!!!
 ゾンビたちはあとかけらもなく蒸発した
 俺は雷を落とすのがうまかったのでまた褒めてもらった
 しあわせだった
 みんなが俺のやることを褒めてくれたし、すんでいるところは広かったし、いつ起きて寝てもよかったし、やりたいことはなんでもやれた。そしてやりすぎないようにほどよい労働なんかもあって、充実していた
 エデンはとてもいいところだった
 読んだ本をみんなと評価しあったり、自分で書いて感想を送りあったりした
 みんな俺の書いたものをひどい風にいわなかったので、俺もみんなの書いたもののいいところをたくさん見つけてあげた
 そんな風に創作に打ち込んでいると心が豊かになっていくのがわかった
 みんな神様の図書館にいって、調べたいことを調べて、自分の時間を好きに使っていた
 不思議なことに自由を与えられればられるほど、みんな規則的に暮らしていた
 やっぱり人間って素晴らしい生き物なんだ! 俺は毎朝神様にお祈りして感謝した
 ゾンビたちはきっと忙しく動き回るばかりで、そういう非人間的な暮らし方をしていたからバチが当たったにちがいないのだ
 そんな世の中はよくないので俺は貨幣制度を中止した
 みんなの借金もゼロにしてあげた!
 これで世界はよくなるはずだと思った。そしてほんとうにそうなった
 みんながみんな自分を大切にして、そして自分の精度のために他人を大切にした
 天使たちがお手本の愛を見せてくれて、俺たちはそれをマネしたり、自分で考えたり、いろんなアプローチをした
 誰も「ああしなさいこうしなさい」なんていわなくなった
 失敗することは、恥ずかしいことじゃなくなったのだ!
 失敗しないと何がどうなっているのかぜんぜんわからないのだ。だから失敗するのはいいことなのだ。俺はエデンにきてそれがよくわかった。本当に駄目なのは、正しい、ということを正しいと思ってしまうことなのだ。正しい、というのは便利なだけなのだ。
 俺は広いベランダにおいてある寝椅子に腰掛けて、目を閉じて、お庭で天使と人間たちが楽しそうにしている音を聞きながら、毎日を暮らしている。光が溢れていて、とても気持ちのいい日々だった
 もう騒々しい社会なんてなくなった! 辛いことも悲しいことも天使たちがなんとかしてくれる。俺たちはちゃんとお祈りさえしていればよくなったのだ! 奇跡はいつも俺たちのそばにあった。
 そう、奇跡。
 頑張ったら頑張った分だけ幸せになれるっていう保証と権利!
 それが間違っていないのだ! そう、それは俺にもわかるのだ
 でも、
 でもきっとこのエデンはいつか終わるのだろうと思う。遠からずに誰かが神様に逆らって世の中はまた混沌に落ちちゃうのだ。そうしてまた満員電車とかお酒を誰が注ぐかとかでもめるくだらない世の中になるのだ 本当にくだらないのだ 満員電車は人間の精神が耐えられるものではないのだ 授業目的が曖昧な講義は人間の創造性を破壊するのだ
 あれらは人間を霊長類からネズミに落とす悪魔のシステムなのだ
 もう大学なんてものをこの世に作ったりしちゃ駄目なのだ。本当に学問を究めたいという人間だけがいくべきで、ステータスとかモラトリアムとか、そういうのだめなのだ。そういうくだらないことを言い出す馬鹿がいるからゾンビなんて出てきちゃったのだ。そういうのはよくないのだ。そういうのはよくない。
 だから俺はステータスとか外面とかをその向こうにあるものを見ていない人間が現れそうになったら神様に密告して裁いてもらったのだ!
 見かけだけ整えておけばいいという世の中はおわった
 本質を捉えようとする一部の本物だけが残った
 もちろん見かけも大事だけれど、それは本質あってのもので、本質がないのに見かけだけ「ででん!」と置いておけば生きていけるというのはよくない。それは神様からもらった命にたいする冒涜なので神様はむっちゃ怒るのだ。だから俺はすぐ通報しちゃうのだ
 人間の数はだいぶ減ったけど質はあがった! 結局そういうことなのだ みんなが幸せになんてなってたら椅子が足りなくなっちゃう だから誰かが犠牲にならないと
 俺も、犠牲になる覚悟はできている。でも俺は本質が誰よりも好きだから、残ると思う。残らなくてもいい。本質が残ればいい。俺はいらない。俺は飾りだ。
 とうとう神様が俺の前にあらわれた。俺も外見だけの人間になってしまったのだ。外見も大事だ、でも本当に大切なのは中身なのだと神様が言う。俺そっくりの口調だったので俺は嬉しくなってしまった。俺は神様の話をちゃんと聞いてあげて、最後に笑って頷いてあげた。
 神様も嬉しそうに笑った。
 そうして、俺は裁かれて死んだ。
 でも本質は残った。


「完」
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