第四章 黒髪は染まる
佳弥は帰宅するなりベッドに倒れこんだ。ほぼ一日中行われたセックスの疲労はすさまじく、立っていることさえままならなかった。
ベッドに沈んだときに気づいた。部屋を満たすいつもの香りの中に、何かべつのものが混じっている。煙の臭い。それはタバコに臭いだった。しかもそれが着ている服から漂ってきていた。
あの部屋、あの男だ。着替えている間、タバコを吸いながらこちらを見ていた姿を思い出す。すっかり臭いが染みついてしまったようだ。
ふらふらと起き上がり、服を脱いで洗濯機に叩き込んだ。お気に入りの服なのに。回すのは明日にしよう。そう言えば昨日から何も食べていない。汗をかいてしまったからシャワーを浴びようか。様々なことを考えるが身体は休息を求めていた。パジャマに着替える余裕もなく、下着姿のままベッドに潜り込んだ。
疲れているはずなのに少しも眠れる気がしなかった。それどころか頭は冴えていて、興奮状態と言ってもいいぐらいだった。
疲労で動くことも億劫で、けれど眠ることもできない。そんな佳弥にできることは限られている。佳弥は、つい先ほどまでいっしょにいた男、浩二のことを思い出していた。
あんな激しいセックスは初めてだった。一雄とのセックスはいつも穏やかなもので、常に自分のことを考えてくれる。部屋を暗くし、不安にならないように囁き続けてくれて、ちゃんと避妊具をつけてゆっくりと挿入してくれる。ピストンも激しくない、最初から最後まで正常位のまま、程なくして浩二が達して静かに終わる。そのあとは寄り添ってピロートーク。ずっと手を繋いでいてくれて、そのまま二人で眠る。それが恋人、一雄とのセックスだった。
けれど浩二は違う。こちらのことはまるで考えていない。たしかに感じさせてはくれるものの、それはすべて自身の快楽の為だ。唇から、胸から、お尻から、秘部から快感が送り続けられ、何度も達してしまった。そして息をつく間もなくペニスが生身のまま入ってくる。まるで自分のためにあるようなそれが快感を得るためだけに動き、イったばかりの膣がぐねぐねと波打って射精を促そうとする。急にペニスが引き抜かれ、お腹の奥に切なさを感じた瞬間、ビュウビュウと熱くて臭う体液を撒き散らされる。それをティッシュ、あるいは指ですくって口で処理をすると再びセックスが始まる。たとえ腰砕けになっていようと、浩二さえその気であれば開始されるのだ。
比べるまでもない、どちらが自分のことを想ってくれているかなんて。けれど浩二とのセックスが頭から離れない。自分には恋人がいるのだ、許されるはずがない。
それなのに。
「うぅん……」
乳首が痛いぐらいに硬くなっていた。それだけではない、熱い、身体が、下半身が、股間がどうしようもなく熱かった。
「うそ、どうして」
ショーツを脱いだ。そこはねっとりと糸を引いていた。信じられない光景だった。自慰に耽った後でもこれほど濡れることはない。それこそ情事の際の挿入前、男を受け入れられるほどに潤っていた。
何もしていないのに、どうしてこんなことになっているのか。いや違う、あの男のこと、浩二とのセックスを思い出していた。
(それだけ? たったそれだけで?)
恐る恐る、触れた。ぬるり、ぬるり。濡れている。中指と人差し指がべっちゃりと、水に突っ込んだようになっていた。
「やだ、なにこれ。ヒィィ!」
クリトリスに触れてしまった。その瞬間に駆け巡る快感。まるで雷が脳天からつま先まで突き抜けたような痺れるだった。
「はぁ、はぁ……そんな、そんなことって」
一雄以外のことを考えて昂ぶってしまったことと、反応してしまった自分の身体を拒絶した。しかし身体は本能に忠実である。指がするすると膣内に進んでいく。
きゅうっと、入り口が指を咥え込んだ。
「ああやだ、やだぁ」
言葉と行動が一致しない。くちゅ、くちゅ、肉厚な唇をこじ開けた指がその中を掻き混ぜる。しかし最奥の、最も気持ちの良いところには届かない。中指の根元まで入れても届きそうにない。それがとてもじれったくて、本当にほしいものを考えてしまう。
「アア、足りないのぉ……ほしいよぉ、おまんこにぃ」
佳弥は気づいていなかったが、昨日までなら出るはずもなかった淫語を自然に口にしていた。浩二とのセックスの果てに、様々な羞恥心を失ってしまったようだ。
腰を浮かし、落とし、ベッドを跳ねる。まるで男の腰振りのように下品な動きで佳弥は求めた。自分を気持ち良くしてくれる、最奥まで突き入れてくれるペニスを求めた。
真っ先に思い浮かんだのは、浩二の顔。一雄ではなかった。
「うそっ、一雄、かずおぉぉぉぉ」
恋人の名前を叫ぶ。しかし現れることはなかった。それどころか浩二のイメージが強くなっていく。
「やだ、だめぇ……!」
佳弥は浩二に組み伏せられ、ペニスを挿入されようとしていた。頭を振って必死に抗うも、消えない。佳弥の中では浩二は笑っていた。そして佳弥を焦らそうとしているのか、何度も何度も亀頭がクレバスを往復する。
これは妄想。そう理解できているから、佳弥は大胆になってしまう。早く入れて、貴方がほしい、私に精液を吐き出して! 早く、早く早く早く! 佳弥の中にいる佳弥は大声で叫んだ。すると浩二が動く。右往左往としていたペニスが定まり、入り口に置かれ、進んだ。
ぐちゅ
挿入されたイメージと、指がクリトリスを押し潰した瞬間が重なった。
「うひぃ、ヒギッ! ギ、アアアアッ」
びくん。イった。佳弥は初めて恋人以外のことを考え、イってしまった。
「うはぁ、はぁ……はぁ……」
一雄に対する後ろめたさを感じるよりも早く、蓄積していた疲労と自慰による疲労に押し潰され、気を失うように眠った。佳弥は気づいていなかった。携帯電話には一雄と真美からメールが届いていた。
明後日に帰る。その中の一通、一雄からのメールにはそう書かれていた。
「で、この時計が彼氏クンからプレゼントされたヤツだって?」
『はい。そう聞きました』
ちょうど同じとき、浩二と真美は電話をしていた。浩二は佳弥の腕時計をぷらぷらと目の前で揺らし、値踏みをする。誕生日プレゼント、あるいは記念日のお祝いなのだろう、安物ではない、それなりに値の張るブランド物の腕。それに趣味がいい、派手すぎないデザインはさぞ佳弥に映えることだろう。浩二は佳弥の彼氏(一雄という名前は何度か聞いていたが、浩二は少しも興味がなかったので覚えていなかった)を少なからず評価した。
「ところで、その彼氏クンはいつ戻ってくるんだ?」
『メールで直接聞いてみましたが、明後日のようです』
「……思っていたより時間がないな」
カレンダーを頭に浮かべ、考える。佳弥の彼氏が帰ってくる前にもう一度会っておくかどうか。いくらなんでも、昨日の今日で接触するのはあまりにスパンが短すぎる。少し時間を空けて快感を思い返す時間を与えたい。そうなると彼氏と再会したあとになってしまう。
今さら失敗するとは思っていなかったが、なるべく不安要素は取り払いたかった。
『きゃっ、ちょ、ちょっと』
浩二が真美と通話したまま考えていると、向こうから慌ただしい声が聞こえた。
「ん? どうかしたのか?」
『なん、なんでも、ぁん……ない、です、ん……!』
途切れ途切れでくぐもった声。それは明らかに喘ぎ声だった。ちゅぱちゅぱと液体の吸う音と、真美ではない誰かの呼吸も聞こえていた。
「……誰かいるのか?」
『誰かって、ひぁっ。バー、バーの、マスターですよ、ふ、ううううっ』
「お前ら、そんな仲になったのか?」
『そんな仲って……マスターに抱かれろって……』
何を言っているのかわからなかった。が、すぐに思い出した。そう言えば昨日、去り際にそんなことを言っていた。冗談半分に言っただけなので、まさか鵜呑みにされるとは思ってもいなかった。
姉の絵美もかなり忠実な女だったが、ここまで馬鹿正直に従う女は真美が初めてだった。
浩二は真美に対する評価を「便利なセックスレンド」から「とても便利なセックスフレンド」に改めた。
「で、どこで遊んでるんだ?」
『ホ、ホテルです、前に、連れて行ってもらった……さっき、シャワーから出てき、あ、アあ、だめ、そこは、やだぁ!』
「……何されているんだ?」
『く、クンニを……だ、だからぁ、そこ、違う、そこは、お尻……やめ、だめぇぇぇっ』
嫌悪に満ちた声。しかし次第にそれは甘く甲高い、心地良さを味わう喘ぎに変わっていく。その慣れの早さに浩二は苦笑いをしてしまう。
「お前、アナルを開発されて悦んでいるのか?」
『ハァァ、イヤ、なのにぃ。気持ちよくなっていくぅ……』
「つくづく変態だよな」
電話越しに言葉責めは初めてだった。散々佳弥を抱いたあとなので疲れていたが、これも一興だと思って付き合うことにした。
『ああ、バスタオルが、剥がされました……』
「お前のちっせえ胸、どう見られている?」
『ひ、ヒャンッ! か、噛まないで、痛っ……!』
真美の声が泣き声になっていく。サディスティックに責められる真美の反応が愉快で、浩二に股間はむくむくと硬くなり始めていた。
『いた、痛い! ちぎれちゃう……!』
「おーいマスター、俺も遊ぶことがあるんだから、あまり乱暴に扱わないでくれ」
向こうから笑い声が聞こえた。サディスト相手には、こう言えばもっと過激なことをしてくれる。現に真美の悲鳴が大きくなっていた。
『ヒィッ』
息を飲む音、声。真美から恐怖が伝わってくる。浩二は何が起きようとしているのか察しがついていた。前よりも後ろが好きという、マスターの性癖を知っていたからだ。
『違う違うちがう、そこじゃない、やだ、やだやだヤダ!』
「力抜いとけよ。使い物にならなくなるぞ?」
『ああああああ、いやだああああ、抜いて、抜いてぇ、そっちはいやあああああ、裂け、裂け、え、エ……!』
それから浩二が呼びかけても真美からの返事はなかった。肉同士がぶつかり合う音と液体が絡み合う音。そして男の荒い呼吸。そこに真美がいないように思えた。
しばらくすると、音が止まった。騒がしかった情事の音はなくなった。それと入れ替わるようにして嗚咽が聞こえ始めた。
「あー、真美? 近いうち連絡するから、予定空けておけよ?」
当分相手にならないだろう。浩二は用件を言ってさっさと電話を切った。
一雄が帰ってくる日が訪れた。ひさしぶりの再会のはずなのに佳弥の気分は晴れなかった。ずっと浩二の姿がちらついていた。しかもあの日から自慰をするときは浩二のことしか考えられなかった。
こんな状態で会って良いのだろうか。そんな疑問が何度も浮かび、その度に無視していた。今日はひさしぶりのデートなのだ。心配されないよう、疑われないよう、平静を保とう。今日一日たくさん遊んで夜はたっぷり愛し合えば再び気持ちが戻るはず、佳弥はすがるようにそう願っていた。
「佳弥!」
いつものように駅前で待ち合わせ。一雄が人混みをかき分けやってきた。変わりはない、とても元気そうだった。
(……あれ?)
佳弥に違和感が走る。しかし瞬間的なことだったので気にしなかった。
「一雄っ、元気だった?」
「もちろん。佳弥も元気そうで良かった」
「寂しかった。すごく寂しかった……」
「俺もだよ」
ささやかな感動。今にも抱き合いそうな雰囲気。どこから見てもごく普通の恋人同士。しかし、それは見た目だけ。佳弥の心情は異常とも言える状態だった。
(うそ、なんで……?)
鼓動はばくばくと激しく鳴っていた。それはときめきなどではなく性的な飢えだった。胸がきりきりと痛む。特に、少し動くだけで乳首がブラジャーに擦れてしまい苦しかった。秘部もじくじくと切なく、どろりと愛液が漏れ、ショーツをべとべとに汚していた。
「佳弥?」
「ん、ううん、何でもない、行こ?」
手を差し出す。それを握り返される。恋人同士なら何てことのない行為なのに、佳弥の欲求が加速していく。
(そんな、そんなことが)
佳弥は一雄を恋人ではなく、身近で気軽にセックスのできる男として見ていた。繋いだ手の感触よりも下半身に目がいってしまう。一雄のペニス。もう忘れていた。どれぐらいの大きさで、太さで、色で、臭いで、身体の中に入ったとき、どれほど快感を与えてくれるのか。何一つ思い出せなかった。
一雄とのセックスの記憶が浩二によって塗り潰されていた。佳弥はそのことに気づいていなかった。
(だめ……我慢、できない)
歩くのもままならないほどに佳弥の下半身は疼いていた。今この場で指を突っ込み、下品な唾液まみれの肉壷をかき混ぜ、ぐっちゃぐっちゃと快楽を貪りたかった。
ほしい。雄の肉棒がほしかった。
「か、佳弥? どうかしたの?」
佳弥の異変を察し、一雄は顔を覗き込む。とても心配しているようだ。顔が近い。ただそれだけなのに思考が暴走する。その唇で身体中にキスがほしかった。舌でいやらしく舐めてほしい。たしかに今夜、ひさしぶりに肌を重ねるのだろう。しかし夜まで待てそうにもない、発狂してしまいそうだった。
「大丈夫、行こう……」
「行くって、どこに?」
「一雄の家に行きたい」
繋いだ手を引き寄せ、胸に押し当てた。胸元が形を変える。服、ブラジャー越しに手が乳房に触れる。佳弥の心臓は破裂しそうなほどに動いている。今すぐに力いっぱいつかんでほしい。そんなマゾヒズムな願望が生まれていた。
「ちょ、ちょっと、佳弥」
初めて見る大胆な佳弥に一雄は慌てて周囲を見渡した。人通りは多いがさして目立っていない。ちらほらと通りすがりに冷やかされる程度だったが、それでも一雄の心中は穏やかではない。
「ど、どうしたんだよ?」
「うぅ、もっと……もっと、気持ち良くなりたい……」
押し当てるだけでなく、ぐりぐりと胸をまさぐるような動きをさせた。一雄の手には佳弥の柔らかな乳房の感触が広がる。さすがに周囲も気づき始めたようで、ちらちらと視線を投げかけられていた。慌てる一雄、しかし佳弥は何も気にしない。
「ねぇ、一雄……」
佳弥は一雄の耳元で囁いた。
「セックス、したい」
一雄は佳弥の手を引き、逃げるようにその場から去った。そして佳弥のリクエストどおり、一雄の自宅に直行した。
「ああ、早く、早くっ」
玄関に入るなり、佳弥は勢い良く一雄に抱きつき、キスをした。ぺっとりとグロスが付着して、粘っこい不快な感触が一雄の唇に広がった。けれどそんなことはお構いなしに、佳弥はぎゅうぎゅうと力いっぱいに抱き続けた。
「ちょ、佳弥っ」
「いやっ、離れたらやだぁ……」
「いったい、どうしたんだよっ?」
いよいよ強めの口調で問い詰める。しかしそんな荒い口調でさえ、佳弥の性感をくすぐる要因となった。
「ずっと、寂しかったの」
ぶるりと身体を震わせ、熱く湿った息と共に誘惑するように囁きを吐き出した。半分は本当のこと、何日も会えなかったのだ、心にぽっかりと穴が空いた気分だった。しかしもう半分は嘘、空いていた穴はあの日、浩二と肌を重ねたときに埋まってしまった。そしてその日から身体と心が飢えていた。男の身体がほしかった。
「ねえ、だめ? こんな私のこと、嫌い?」
「そんなことないけど……でも、あんな駅前では困るよ」
「我慢、できないのっ」
一雄の顔を無理やり引き寄せ、再び唇を奪った。一雄はされるがまま、佳弥に委ねた。唇の感触を味わう間もなく、すぐに舌を絡ませる。過剰に排出されている唾液が収まらず、口の端からだらしなく垂れていた。
「はぁ、はぁあ……おいしぃ」
「……どうしちゃったんだよ」
一雄の嘆きは佳弥の耳に入らない。膝まずき、チャックに指をかけた。
「え、ちょっ、え?」
「わあ、もう硬くなってるぅ」
ごそごそと速やかに取り出した。動揺しているとはいえ、一雄もしっかりと勃起していた。すでにカチカチに硬くなったペニスと対面し、佳弥はますます興奮してしまう。
「しゃ、シャワー、浴びないと」
「いいよ、そんなのぉ……ふ、うぅん」
そっと顔を寄せた。一雄のペニスからは濃厚な雄の臭いがした。それがフェロモンなのか、単なるアンモニア臭なのかは定かではない。けれど嗅いだ瞬間から、また佳弥の秘部からどばりと愛液が噴き出した。
(迫力ないなぁ……満足できるかなぁ……)
浩二のペニスと比べてしまう。どうしてもサイズが不安だったが、だからと言って我慢できるほど冷静でもいられなかった。一回りは小さいだろう一雄のペニスをぱくりと咥え込んだ。
「か、かやぁ……!」
「ちゅぱ、んちゅ……んんんっ、んく、んくっ」
「アあ、ヤばいっ……!」
肌を重ねる前は、いつも必ずシャワーを浴びていた。綺麗な身体で触れ合いたい、佳弥はそう言っていた。そんな佳弥が平然と、しかも玄関でフェラチオをしている。そのフェラチオも初めて体験するような、激しいものだった。
これまではペニスを揉みほぐすように、じわりじわりと射精を促すような動きだった。しかし今は、ひさしぶりのフェラチオは、掃除機で尿道から精液を吸い込むような激しさ、かと思いきや、ねっとりと唾液を何重にも絡ませる粘着質なものに急変したりもする。
「ウオ、おおオ」
「ん、ん、ンッ」
「お、おおっ、うふぅ」
じゅぼ、じゅぼ。たっぷりと唾液を絡め、顔を前後に動かす。一雄はたまらず声を上げる。
「だ、だめだ、出そうだっ……」
「……ぷはっ。だめだよ? ほら、中で続き、しようよ」
ぐいぐいと引っ張る佳弥に、靴を脱ぎ捨てて追いかけた。部屋に入ると、すでに佳弥は服を脱ぎ始めていた。
「シャワーは……?」
「いらない。早くシたいの。電気も、そのままでいい、早く、早くっ!」
佳弥の叫びに一雄は慌てて服を脱ぐ。明るい部屋でなんて初めてだった。一雄は今まで情事中の佳弥を見てみたいと何度も思っていた。しかしそんな日は来ないと諦めていた。それなのにどうだ、いきなりそんな日がやってきた。混乱、動揺はあったがやはり男、興奮せずにはいられない。
屹立したペニスでもたついてしまったが、どうにか脱ぐことができた。
「ねえ、入れて。ほら、もう、準備できてるよ?」
佳弥はベッドに上がり、大きく脚を開いて正常位の姿勢で一雄を招いた。チーズのように酸っぱい佳弥の体臭が漂っている。それは普段は洗い流されている匂い。遥か昔から遺伝子に刷り込まれている匂いによる興奮が働き、一雄のペニスは初めて見るぐらいに硬くなっていた。
「あぁ、大きくなったぁ……来て、ほらぁ」
肉ヒダを両手で広げ、招く。何ともはしたない歓迎だったが、一雄はそれを疑問に感じないほど限界だった。
「待ってて、ゴム、つけるから」
「……ナマで、いいよ?」
「そ、それは、さすがに……」
今まで避妊具なしで性行為に及んだことはない。お互いの将来を考え、今はしっかり避妊をしようと二人で決めていた。それなのにこの佳弥の言葉。今日ひさしぶりに会ったときから佳弥に対する違和感が多々あったけれど、これは確定的だった。何か、異常だ。一雄の中で警鐘が鳴っていた。
「おかしいよ、佳弥。どうしたんだよ」
「どうもしてないよ。ひさしぶりだから興奮してるだけ。今日は大丈夫な日だから、ね?」
ちゃんと外に出してね。佳弥はそう続けた。そこまで言われるとさすがに引くわけにもいかない。剥き身のペニス、亀頭を、秘部に当てた。
「ウッ」
熱い。避妊具越しに感じていた温度は違いすぎた。とろとろで、舐めるように亀頭を覆う愛液。激流のように押し寄せた快感で、今すぐにも射精してしまいそうだった。
「早く、早く、入れてっ」
「う、うん……」
このまま入れたらすぐに果ててしまう。ゆっくりと、まるで熱い湯船に入るように慣らしながら挿入する。ぬる、ぬるぬるぬる。亀頭が飲まれ、そして竿も入っていく。
「あああぁぁぁぁ、きもち、いい。ああ、佳弥の中、温かいよ」
「もっとぉ、もっと奥までぇ……」
「うぅ……もう、これ以上は、無理だよ」
「な、なんでぇ?」
次の一雄の言葉が佳弥を絶望させる。
「入った、もう全部、入った……!」
佳弥は愕然としてしまった。足りていない。一番ほしいところまで届いていない。膣内がまったく満たされていなかった。
(違うんだ……これじゃあ、ないんだ……)
佳弥はセックスがしたかった。しかし、誰でもいいわけではなかったと気づいてしまった。求めていた男は恋人の一雄ではなく、浩二だった。浩二とセックスがしたい、浩二のペニスが、ほしかった。
「う、動くよ……!」
「うん……」
気分が沈んでいた。早く終わってしまえ、とまで思った。すぐ目の前で、苦しそうに腰を動かす恋人をとても冷ややかな目で見てしまう。
(こんなセックスで満足してたんだ……)
反応のない佳弥を心配し、一雄は腰を止めた。
「……どうかした?」
「う、ううんっ、動いて、ほら、動いてっ」
するとピストンが再開された。佳弥は心配されないように、小声で喘いで感じているふりをした。
「ん、んっ、あぅ」
たとえ物足りなくてもじわじわと溜まっていく快感。しかし決定的に足りない。どれだけ時間をかけても満足できそうになかった。
「うぐ、佳弥。イ、イきそうだ」
「え、ああうん。いいよ、イって」
「ごめん、あ、アッ」
膣内で何かが弾ける感覚があった。亀頭が膨らんだと思ったら、次の瞬間大きく震え、その直後、ペニスは膣から抜かれ、びゅるびゅると下腹部に精液が降りかかった。
一雄の精液はとても薄かった。まるで水のようにサラサラとしていて、色はとても薄い。それに水滴のように量が少なかった。
(何これ……匂い、ぜんぜんしない……)
一雄は佳弥と会えない寂しさを紛らわすため、毎日自慰をしていた。今日もすでに一度自慰をした上でセックスをしたのだ。そんな一雄を責めるのは酷である。けれど佳弥がそのことを知るはずもなく、内心でぶつぶつ不満を漏らしていた。
「ごめんっ、佳弥」
「ん、いいよ。ティッシュ貸して」
「ち、違うんだ……」
「え?」
身体を起こしたときだった。トロリ。膣口から液体がこぼれた。まさか生理が? と心配した佳弥だったが、指ですくうとわかってしまった。それはぬるぬるで、白濁とした液体だった。
かぁっと、頭が沸騰した。
「まさか……!」
「ごめん、ちょっとだけ、出しちゃった……」
「なっ! ば、バカぁ!」
佳弥はティッシュをひったくり、まずは下腹部。さらにティッシュを引き抜き股間をごしごしと擦った。
「最低! なんでもっと早く抜かなかったの!」
「その、気持ち良くって……」
「どうするの、もしものことがあったら! バカ、もう、バカ!」
散々当たり散らし、佳弥は浴室に駆け込んで強めのシャワーで洗浄した。その姿を客観的に想像してしまい、あまりの情けなさに涙が込み上げていた。
「最低、最低……」
あの人ならこんなことしなかった。それにあの人ならもっと満足させてくれる。あの人に会いたい、セックスがしたい。この瞬間、佳弥はたしかに浩二を想っていた。
シャワーを終えた佳弥は一雄の謝罪をすべて無視し、着替えてすぐに出て行った。
その日を境に二人は会うことも連絡を取ることもなくなり、そんな状態で数日が経った。
ある日の夕方、佳弥は買い出しの帰り道でとても憂鬱になっていた。あの日の一雄とのセックスを思い出し自己嫌悪に陥っていた。勝手に欲情し、避妊具なしの性行為を望んで、膣外射精に失敗したことを怒って帰ってしまった。
謝罪の電話やメールも無視し続けた。自分は何も悪くない、相手が全部悪いのだ、そう思い込んだ。さらに帰省中寂しかったことへの不満も上乗せして一雄を責め続けた。
仲直りをするタイミングを完全に逃していた。どうしよう。佳弥は悩んでいた。メールを送ろうとしても無視していた手前、変に意地を張っていた。
(学校が始まれば……なんとかなるよね)
とは言え、これが初めてのことではない。今までも喧嘩をして距離を置いたことは何度かあったのだ。後期授業が始まれば嫌でも会うことになる。一言謝れば解決する、それですべて元通り。浩二のことは言い訳のできない一時の過ちだが、いずれ記憶から風化していくだろう。佳弥はそう願っていた。
そんな佳弥の願いを打ち砕くように、その男は突然現れた。
「一ノ瀬さん」
聞きたかった声、けれど聞いてはいけない声。それが後ろから聞こえる。振り返らないほうがいい、それなのに身体は勝手に動いてしまう。
「……和田さん」
「ひさしぶり」
振り返ってしまった。浩二がぷらぷらと手を振っていた。黒いシャツにグレーのスラックスというラフな格好で、とてもさわやかな印象だった。あの情事のときのような乱暴な様子は少しも考えられない。
一方佳弥は、誰にも会わないだろうと思いヨレヨレのシャツにぼろぼろの七分丈のジーンズ、そして梳かしていないボサボサの髪。無防備すぎる姿を見せてしまい、恥ずかしくて逃げ出したくなった。
「どうしてここに……?」
「ああ、これ」
腕時計を見せる。佳弥は腕時計を忘れていたことに気づいていたがあの日『今日だけ』と自分から言った手前、どうすることもできなかった。
自分への罰。一雄からのプレゼントを諦める気でいた。それが浩二によって運ばれてきた。いや、逆かもしれなかった。腕時計が、浩二を引き寄せたのかもしれなかった。
「あのとき、忘れていったみたいで……住所はうる覚えだったから付近をぶらぶらしていたんけど……会えて良かったよ」
「すみません……わざわざ届けてもらえるなんて……」
「いや、こちらこそ……あの日で終わりって約束なのに」
約束。その言葉にずきりと胸が傷んだ。『あの日で終わり』という言葉。それが枷のように心をがんじがらめにしている。
痛い。とても胸が痛かった。
「はい、これ。いい時計だね。大切にするんだよ」
手渡されたとき、タバコの臭いが鼻をくすぐった。懐かしささえ感じた。
身体と心が切なくなっていく。
「それじゃ、さよなら」
浩二は背中を向けた。それ以上言葉はなく、振り返ることもなく、歩いていく。
「……和田さん」
佳弥の心に火が灯る。
「和田さん」
その瞬間、感情が爆発した。
「和田さん!」
自分の声できぃんと耳鳴りがした。想うがまま浩二を呼び止めたが、それ以上言葉が続かなかった。いや、その先の言葉はわかっていた。だが、佳弥はかろうじて押し止めていた。それを伝えてしまったら確実に一つの関係が壊れてしまう。そのことをわかっていたからだ。
浩二は振り返る。目が合った。沈黙が流れる。
待っていた。浩二の言葉を。
「……一ノ瀬さん」
浩二は佳弥に向かって進む。一歩、一歩と進むにつれて、佳弥の鼓動が大きくなっていく。そして、手を伸ばせば届く距離。胃の中のものを吐き出しそうなほど、緊張と期待でいっぱいになっていた。
(ああ、見られてる……)
視線を感じていた。下から上に、そして上から下に。服を透かされているように思えた。呼吸が荒くなっていく。
「佳弥はどうしたいんだ?」
あの日の自分勝手な浩二がそこにいた。呼び方も変わっている。ようやく会えた。佳弥はこの浩二に会いたかった。
「どうされたい? お前のしたいことに付き合ってやるよ」
歓喜。それしかなかった。体温が上がっていく。特に頬とアソコ。限界だった。
「私を……私を、抱いて下さい……」
もう自分の気持ちを偽ることができなかった。
「ふぅん、女の子らしい部屋だな。それに、良い香りだ」
浩二はぐるりと室内を見渡した。思えば、異性で家に入れたのは一雄を除けば浩二が初めてだった。それに気づくと急にどきどきとしてしまう反面、この期に及んで後悔していた。
(ごめん一雄……でも、私……)
それでも我慢できなかった。事実、これから始まることに期待してしまっている。
少し目を離したうちに、浩二はベッドに座っていた。乱暴に座ったのか、綺麗に整っていたベッドがくしゃくしゃになっていた。
「あの、お茶でも」
「いらない。それより、脱げ」
ぞくり。冷たい口調に身体が震える。体温が上がっている。恥ずかしい、目を閉じてほしい、見ないでほしい。佳弥はそれらを口にせず、後ろを向いてシャツの裾を握る。しかし浩二はそれを許さない。
「俺のほうを見て、脱げ」
「それは……!」
「ストリップだよ。身体をくねらせて、イヤラシく脱げ」
言われたとおりに向き直る。じぃっと、浩二が見ていた。ただそれだけなのに全身を愛撫されているような錯覚に陥ってしまう。すでにあられのない姿を見せている間柄だったが、自らの手で裸になっていく過程はまた違った恥らいがあった。
改めてシャツの裾を握り、ゆっくり、ゆっくりと脱いでいった。汗が染み込んだシャツはずるりずるりと肌を這い、頭を通って脱げた。肌はじっとりと汗ばんでいる。帰宅したばかりなので室温は高い、けれどこの汗はそれだけが原因ではない。
水色の、装飾のないブラジャーに覆われた胸が晒された。次はジーンズ。腰を留めるボタンを外し、こちらもゆっくりと下ろしていく。
「あっ」
ブラジャーと同色のショーツ。濡れている。汗だけではない、愛液が秘部を中心に広がっていた。なんて惨めなのだろう。あまりに滑稽な自分の姿に手が止まってしまう。
「誰がやめていいと言った?」
「ご、ごめんなさいっ……」
苛立った声に恐怖を覚え、一気に下ろした。ついに下着だけの姿になってしまった。しかし浩二はそんな佳弥を見ても顔色一つ変えない。
胸元と股間を手で隠す佳弥。今にも泣きそうな表情をしていた。それを見つめる浩二は無表情。そんな二人の間に流れる沈黙。時間にすれば十数秒、けれど佳弥にとってはとても長い時間だった。
「……で?」
「は、はい」
浩二は口を開いた。その声のトーンは重く、変わらず苛立った口調。佳弥は不安でたまらない。
「お前はいつ脱ぐんだ?」
言われる前にやれ。そんな言葉が聞こえてくるようだった。佳弥はブラジャーのホックを外し、それが重力に従って落ちていく間にショーツを下ろす。ねっとりと、糸が引いていた。
(見られてる……身体を、あそこを、全部……アア)
触れられていない。言葉で責められてもいない。ただ見られているだけで愛液が分泌され内太ももを垂れていた。
雌に仕上がった女、佳弥。さらに言うなら自分の思っている通りに変革を成した。その『改悪』を施した浩二はようやく表情を緩めた。
「何もしていないのにそんなに濡らして。やっぱりえっちな女の子だったんだな」
「言わないでください、そんなこと」
「嫌いじゃないよ、そういうの。ほら、セックス、したいんだろ?」
浩二は大きく脚を広げた。スラックスの股間部分は大きく膨らんでいる。ごくりと佳弥の喉が鳴った。
「俺は何もしない、座っているだけだ。好きにしたらいいよ」
「好きにって」
「ちんこ取り出して、跨いで座るだけでいい。簡単だろう?」
あまりに事務的な指示。お前の性欲解消に付き合ってやる、そう聞こえてくるようだった。これだけ冷徹な口調で言われているにもかかわらず、佳弥は文句の一つも言えない。なぜなら、浩二の言っていることは間違いではないからだ。やっとセックスができる、なんて思っていたからだ。
膝下に座ってチャックを開き、丁寧にペニスを取り出した。それは硬く、カウパー腺が滲んでいた。
(ああ、これ、これが)
「ほしかったんだろ?」
こくり。素直に頷いだ。一雄のそれよりも太く、長く、硬い。そんなペニスがたまらなくほしかった。焦る気持ちを抑え、佳弥はベッドに上がって浩二を跨いで中腰になる。股の下にはペニスが待っている、浩二の分身がいる。少し腰を降ろすだけで、念願の浩二が手に入る。
「ふ、フゥ」
降りていく。くちり。膣口と亀頭が触れ合う。
くぷっ。亀頭が飲み込まれた。
「熱い、ああ、溶けちゃうぅゥ」
懇願していたものがすぐそこにある。けれどそれは凶器でもある。理性を飛ばし、快楽の海に叩き落される。またあられのない姿を晒すことになる。言い訳ができないぐらい自分の意思で求めている、今度こそ一雄を裏切ることになる、きっとやり直せなくなる。
こんなぎりぎりの場面で、佳弥の身体は止まってしまった。
「下ろせよ」
「待って、もうちょっとだけ」
「さっさと下ろせ」
がりっ。浩二は目の前にあった乳首を噛んだ。激しい痛みが走る。突然の痛覚に佳弥はかくんと力が抜け、腰は落ちた。
ごりゅっ。ペニスが一気に最奥まで到達した。
「あひっ!」
びく、びくん、びくん! 情けない声と同時に、佳弥は達した。強制的な挿入による絶頂に佳弥は口をぱくぱくと開閉し、気を失いかけてしまう。頭は真っ白、けれど腰からはすさまじい性感が生まれていた。
「入れた瞬間イったのかよ。どうするんだ、このあと」
「はひ、ごめん、なさい……」
佳弥は動けなかった。電流のような痺れが身体中を走っていたので動けそうになかった。思えば数日前からずっと焦らされている状態だったのだ。それがようやく挿入された。我慢していた分の快楽が一気に押し寄せていた。
「動けよ、俺が愉しめないだろ?」
「無理、むりです……ごめんなさい」
重い溜息を一つ吐き、浩二は佳弥の脇に手を入れ、そのまま持ち上げて放り投げた。佳弥からペニスが抜け、身体はベッドのスプリングで跳ねて数度バウンドして倒れた。
「動けるようになるまでそうしてろ」
「ふっ、はっ……」
ここまで無下に扱われるとさすがに悲しみで涙が込み上げる。けれどそんな悲しみもすぐに消失した。変わりに発生したのは、疼き。絶頂したばかりの秘部は早くもペニスをほしがっていたが、身体は動きそうにない。
「はぁ、はぁ、あむっ……んちゅ」
そんな佳弥が取った行動、それは浩二への奉仕だった。芋虫のように這って浩二の股間に顔を移動させ、ペニスを咥えた。自分の愛液のすっぱい匂いと味が口に広がり、嘔吐しそうになってしまう。
「何のつもりだ?」
「私が、動けるようになるまで、これで、待っていてください‥…はむっ」
懸命な奉仕。やはりテクニックが足らず快感は少なかったが、尽くしてくれる佳弥を浩二は優しく撫で、フェラチオを堪能した。
「んん、ああ、アあ!」
動けるまでに回復した佳弥は裸の浩二に馬乗りになり腰を振っていた。ベッドのスプリングを使い、激しく大きく上下に動く。そんな佳弥を浩二は興味がないのか、横になったままずっと携帯電話を眺めていた。
「……くっ、ふうっ。ふぅ」
やはりいい気分ではない。どうにか気を引こうと動きにバリエーションをつけたり膣内をきゅぅと締める。豊かな乳房が激しい動きでぷるんぷるんと揺れてもいたが、それでも浩二は佳弥を見ようともしない。
無理もない。結局のところ、佳弥は自分のためだけに動いている。自分への快楽が優先なのだ。そんなセックスで散々女の身体に慣れた浩二が満足するはずがなかった。
「ハッ……ハァ……」
快感よりも焦り、疲労が勝り、佳弥は動くことができなくなった。
「ん、終わり?」
「いえ……でも、ちょっと休みます……」
腰を上げ、ずるりとペニスを引き抜く。まだまだ満足にはほど遠かったが体力の限界だった。浩二と寄り添うように佳弥も寝転ぶと、それと入れ替わるように浩二は携帯電話をベッド際のテーブルに置いた。
「メール終わり。待たせたな」
「メール、ですか?」
「ああ、女だよ。佳弥も良く知ってるヤツだ」
女と聞いて心がざわつく。良く知る相手、しかし見当がつかない。それとなく訊いても気にするな、その一言しか返って来なかった。
「今日は新しいことをしてみようか」
脱ぎ捨てたジーンズからベルトを抜き取り、ちらつかせた。それが何を意味するのか佳弥は想像できない。
「拘束とかしたことないだろ?」
「こ、拘束っ?」
「ああ。身動きの取れない状態で、好き勝手にされるんだ」
拘束。身動きの取れない状態。好き勝手にされる。そこから想像できたのは拷問。無抵抗な人間が暴力によって虐げられる、そんなイメージしか浮かばなかった。それに浩二の表情。とても楽しげな様子は不安しか感じなかった。
「腕上げろ」
「でも……」
「手間かけさせるなよ」
無理やり腕をつかまれ、頭の上まで待ち上げられて格子状のサイドボードと手首がぐるぐるに巻きつけられた。まだ緩い、しかしゆっくりと締められていく。
「イヤ、怖い……」
「じっとしとけ。うっ血しても知らんぞ」
心臓がまるで警鐘のように鳴っていた。期待ではない、恐怖だった。
きゅっ
「アッ」
締まった。きつくはない。しかし動かすことができない。鼓動は最高潮、唇が震えて何も言えなかった。
「……ん?」
震える佳弥に、浩二は気づいた。
「拘束されて濡らしているのか?」
佳弥はその言葉に耳を疑った。
「そん、そんなわけ!」
「おいおい、無自覚かよ」
浩二は秘部に指を置いた。ゆるりゆるりと動く指、そこは驚くほどにスムーズに滑っていた。
「う、そ」
「今までで一番濡れてるんじゃないか? えっちだとは思っていたが、まさかここまでとはな」
「嘘、これは違う……」
「認めちまえよ」
「ひゃんっ」
ぺたり。浩二の手が、胸に触れる。否定をしてもやはり拘束され感じてしまっているのか、乳首は硬く、胸も張っている。手の感触が嫌ほど明確に伝わってきた。
「あんっ……んん」
浩二の手の温もり、それだけで肌が灼けそうになり、喘いでしまう。だが浩二はそれ以上動かない。手を置いたまま佳弥を見つめるだけだった。
予想もしていなかった浩二の行動に、佳弥はそわそわとしてしまう。
「なんだ?」
「……なんでもないです」
拘束され、乱暴なことをされると思っていた。噛まれ、叩かれ、言葉で責められ、挿入されたのち好き勝手にピストンが始まり、精液をかけられると思っていたのに、実際は違った。胸には手が置かれただけ。
その後も、散らばった髪を手に取って撫でるだけ。時折、優しく触れるキスをされるだけ。
「和田さん、和田さんっ。どうして」
「どうしてって、何がだ?」
「しないんですか? その、もっと……」
「俺はしたいことをしているだけだが?」
浩二は笑って見せた。それを見て気づいた。この状況であえて優しく接することが最も焦らす行為だということを、浩二はわかってやっているのだ。
「やだ、やぁあ」
焦らされる。じれったい。ほしい。暴走する本能に狂いそうだった。
(ほしい、おちんちんほしい……!)
心が叫ぶ。けれど心の中だけでは収まらない。口が、ぱくぱくと動く。喉の奥からうめくように声が出ようとしている。
言いたくない、あまりに惨めすぎる。それなのに止まらない。
――キンコーン
口にしてしまう寸前で呼び鈴が鳴った。その瞬間、熱に浮かされていた意識が急激に冷え、現実に戻された。扉の向こうにいるのが一雄だったらどうしよう。居留守をしようにも、はたして浩二がそれを許してくれるだろうか。身体中の快楽は抜け切り、びっしょりと冷や汗をかいてしまう。
「お、来た来た」
浩二は裸のまま玄関に向かう。止めようとしたが、変に声を上げるのも危ない。どうしようかと悩んでいるうちに扉が開いてしまった。
「お前遅すぎ。ほら、さっさと入れよ」
「はい……」
その声は聞き覚えがあった。姿を見るまでもなく、誰なのかがわかった。
本当に、よく知ってるヤツだった。
「……真美ちゃん」
その変貌ぶりに、次に続く言葉が出なかった。真美は前回同様、いやそれ以上にらしくない服装だった。ゼブラー柄のチューブトップにデニムのホットパンツというやや過激的な姿も、真美の平べったい胸部や肉づきの少ない脚では活かすことができていなかった。そして手に持っている黒革のバッグが全体の印象に合っておらず不格好だった。
「佳弥、ごめんね……」
「どうして、何が、どうしたの?」
「ああ、紹介しないとな」
浩二は真美の肩をつかみ引き寄せた。真美はされるがまま浩二に身体を預ける。
「こいつ、俺のセフレなんだ」
「セフ……セフレ!?」
「ああ、そうさ。俺の言うことなら何でも聞く、とても便利なセフレさ」
ぐに。浩二の手が真美の胸を押し潰した。
「あぅ、いた、い」
チューブトップの上から、見てわかるほどに胸の形が変わっている。口では痛いと言っている真美だが、その表情は恍惚としている。
「ちゃんとノーブラだな。こっちはどうだ?」
そう言ってホットパンツの中に手を入れる浩二。真美はやはりその手を払おうとしない。
「ハァっ……だめ、そんな……」
股間がもこもこと動き、それに合わせて真美は身体をくねらせ、喘ぐ。倒れそうになったところで浩二はすかさず腰に手を巻くように抱きとめ、さらに股間を責め続ける。
「よしよし、こっちも穿いてないな」
「それ以上すると、私……!」
「どうなるんだ? ん?」
かぷり。浩二は耳を甘噛みする。真美はだらしなく口を開け、そこから涎を垂れてぽとぽととフローリングに落ちていった。
「下着もつけずにそんな格好でここまで来て、どうだったんだ?」
「見られていました、いろんな人に……胸、胸を隠して、来ました」
「それは逆効果だ。お前、見ていた男の中では裸になってたぜ」
「うぅ、ああ」
悩ましげに呼吸をする。浩二の指は止まっていて、それどころかホットパンツから抜かれていた。それなのに、真美は責められていたとき以上に身体をもぞもぞとくねらせていた。
「で、こんなに濡らして来たと。見られて興奮していたのか、変態め」
「ごめんなさい。私、変態、ですう……」
浩二の言葉に、真美の返事。佳弥がよく知る友人はいなかった。そこにいたのは盛った雌、悦びを教え込まれた女だった。
「真美ちゃん……」
「佳弥ぁ……和田さん、すごいでしょう? セックスがすごく上手で……もう和田さんがいなかったら生きていけないよぉ……」
「別の男も紹介しただろ? ……昨日も愉しんだみたいなだ、首にキスマークがついてるぞ」
「え、やだっ」
「昨日はマスターのとこの常連とヤったんだろ? ちゃんと聞いているよ。気に入ってもらえたようだぜ。俺も嬉しいよ」
「そ、そうですか……? えへへ……」
嬉しそうな真美に、クククと喉を鳴らして笑う浩二。佳弥は言葉を失っていた。ようやく和田浩二という人間がわかった。彼は友人を壊し、それに対して何も感じていない。しかも真美が初めてではない。もう何人も同じように壊している!
ようやく自分のしたこと、考えていたことが間違いだと気づいた。そして一雄への謝罪の気持ちと罪悪感が溢れ出した。だが、どれだけ意識が正常に戻っても物理的な拘束が解けるわけでもない。自分はまだ、浩二の手のひらの上にいるにすぎないのだ。
「ほら、真美。佳弥とちょっと遊んでやれ」
「真美ちゃん……!」
チューブトップとホットパンツ、たった二枚脱いだだけで真美は全裸となった。火照ったメリハリのない身体がベッドに上がり、佳弥に近づく。佳弥は途中何度も真美の名前を呼んだ。けれど夢遊病のようにふらふらと身体が揺れるだけ、耳に入っていなかった。
真美と佳弥の身体が重なった。真美の質量、息づかい、体温、普通に過ごしていたら感じるはずもないそれらを今、佳弥は全身で感じていた。
「佳弥ぁ、柔らかい身体してるね」
「目を覚まして、真美ちゃん! ……真美!」
言葉は届かない。くにゅ、くにゅ。真美の手が佳弥の胸をこねる。
「柔らかい……羨ましいなぁ。男の人って、大きいのが好きなんだよねぇ」
空いた手で佳弥の顔を持ち上げ、キスをした。浩二よりも小さな舌が歯茎を舐め、さらさらとした唾液が注ぎ込まれる。
(なにこれ、気持ちいい……)
やはり同性、ポイントを熟知しているのだろう。浩二のキスとは違い、快楽はないがひたすらに心地良いキスだった。
流されてはいけない。それなのに、佳弥は真美のキスに酔っていた。まるでファーストキスのようなときめきさえあった。
「真美、ちゃん……」
「んふ……まだ満足しちゃだめだよ?」
真美は黒革のバッグを開けて、ひっくり返した。すると、がちゃがちゃがちゃ。ピンク色でコードが伸びる小さな玉子、男性器を模した真っ黒な棒。はちみつ容器に入った透明な液体に、輪っかになっていない数珠や太い鎖がついた首輪が床に散らばった。
「私ね、誰と寝ても別にいいの。男でも、女でも、気持ち良ければ、ね。でも和田さんが一番。和田さんが一番気持ち良くしてくれる。だからね、佳弥。私は佳弥のことが許せないの。抱かれてほしくないの。でも、和田さんは佳弥を気に入っているみたいだし……我慢するの」
血の気が引くとはまさにこのこと。真美の、浩二への忠誠心があまりに怖すぎた。正気ではない、終わっている、諦めるしかない、佳弥は真美を同じ人間と見ることができなかった。
「さあ、佳弥。愉しもうね」
黒い棒をぺろりと舐め、真美は微笑んだ。その微笑みだけは、ずっと変わっていないようだった。
「アア、ああ、イ、く!」
びくん。佳弥は何度目かの絶頂を迎え、弓なりに仰け反った身体をベッドに沈めた。
佳弥の周りには真美が持参した道具が使用済みとなって散らばっていた。摩擦した佳弥の愛液で真っ白になったピンク色の玉子と黒い棒。はちみつ容器に入った液体はすでに空っぽで、佳弥の身体どころかベッドまでぐっしょりと潤わせていた。
輪っかになっていない数珠と太い鎖がついた首輪は真美が使用していた。これは浩二の命令だった。
「イった? これで六度目だね」
「もうやめて……死んじゃう……」
「じゃあ死んで、お願い。じううううぅ」
「ふぁああああああっ」
真美は佳弥の秘部に顔を埋め、吸う。分泌された愛液も余すことなく堪能した。シャワーを浴びていない佳弥のそこは、最初こそきつい体臭を発していたものの、今では真美の唾液の匂いに変わっていた。
「うふふ、毎晩、お姉ちゃんとこういうことしてるんだよ? いっつもお姉ちゃんが先にダウンしちゃうから、私はオナニーばっかり。でも、感じてる顔見るの、嫌いじゃないんだぁ」
「ヒィッ!」
真美のクンニリングスは的確に佳弥のポイントを突いていた。浩二のクンニリングスと比べると非常に穏やかなものであったが、達しても収まらない粘り気のある快楽を与え続け、よって佳弥は何度もイかされ続けた。
「そんなに喘がれたら……私も興奮しちゃうよ」
そう言うとおり、真美も秘部から愛液を垂らし、それはベッドに滴り大きな染みを作っていた。
「ふぅー……ほどほどにしとけよ、お前ら」
浩二は吸口ぎりぎりまで吸ったタバコを水が入ったグラスに落とした。佳弥の部屋の香りは副流煙にかき消され、部屋は紫煙で満たされていた。
佳弥と真美の性交が始まると、佳弥は悲鳴のように叫び、喘いだ。最初のうちは隣りから苦情が来ていた。わざとらしく居留守をし続けると、壁を何度も叩かれたり呼び鈴を鳴らされたりもした。それすらも無視し続けるとついには苦情が来なくなった。
「あ、和田さぁん。そろそろ、お願いできませんかぁ?」
「そうだな。見てるだけってのも飽きてきたな」
「なら私に下さいぃ」
すでに勃起している状態でベッドに向かう浩二。そんな浩二を待ちわびていたのか、真美は自ら秘部を指で押し広げ、濡れそぼったそこを見せつける。
「おいおい、下品なヤツだな」
「もうずいぶんお相手してもらってないんですよ? もう、限界なんです……!」
そのままお尻をフリフリと振って浩二を誘う。もちろん浩二はそんなものに惑わされることもなく、ただ呆れるだけ。腰をつかみ、そのまま佳弥に向かって放り投げる。その乱暴な行為に真美はバランスを崩し、全体重を預けるように佳弥にのしかかった。そして暴れられないよう、浩二は真美の腰を押さえつけた。
「お前はどうだっていい。まずは佳弥だ」
「ううぅ、何で佳弥なのぉ……!」
敵意に満ちた目で佳弥を睨みつける真美。佳弥はそんな真美に「ひっ」とか細く息を吸って恐れた。浩二は雌の嫉妬に心底呆れ、ため息一つついてその尻たぶをぎりりと握り締めた。
「ぎっ! いだ、ああああっ!」
「バカなことやってると、ケツの穴使い物にならなくしてやるぞ……ああ、とっくに貫通済みだったか」
肛門から数粒出ている数珠を見て浩二は罵り、さらに手に力を込める。それは愛撫などではなく脅迫だった。爪が食い込むほどに握り、鎖を引っ張り首輪で喉を詰まらせる。快感なんて一切与えるつもりはなかった。現に真美は呻き声を上げ、それが枯れてしまうと金魚のように口を開け閉めして耐えていた。ぽろぽろと溢れる涙は佳弥の顔に落ちていった。
「そんじゃ、変態の相手はこんなもんにしてっと」
秘部に当たる。真美の身体が邪魔をして見えなかったが浩二のペニスが当たっている。何度も味わっているので亀頭の大きさを覚えてしまっていた。
ここまで来るとだめだった。どれだけ警戒し、恐れ、嫌おうとしても、浩二のペニスには逆らうことができなかった。
「そら、よっと」
「ふぁ、ふあぁぁぁぁぁぁ!」
一気にペニスが入った。とっくに準備ができていた膣内はやすやすとペニスを迎え入れる。まるで錠前が鍵を迎え入れたように、細部のおうとつまで満たされた。
「やっぱサイコーだな、佳弥」
「ふぅ、ふ、深いぃ‥…」
佳弥の嬌声、身体同士がぶつかり合う音と液体の擦れる音。それらは真美の聴覚から肉欲を刺激し、興奮を高めた。
「はぁ、我慢できない……!」
「ん、むぅう」
がりっ。真美は佳弥にディープキスを行った。だが、舌を絡めず前歯で噛みついた。鋭い痛みに驚き、逃げようとするものの真美の手が佳弥の顔を抑えつける。キスをする距離で、真美の目がギロリと佳弥を睨んでいた。
顔から手が離れたが、佳弥は蛇に睨まれた蛙のように動けない。真美の手は胸を鷲づかみにし、腰をガリガリと引っ掻いた。肌は赤く爪あとが残った。しかし佳弥はマゾヒストの気があるのか、そんな乱暴な行為にもどこか悦びを感じてしまう。
浩二と真美、二人がかりで佳弥を責める。どちらか一人でも蹂躙されてしまうのだ、佳弥に抵抗する術は残っていない。ただひたすら絶頂を迎え続け、浩二のペニスを締め続けた。
「ずいぶん、熱烈だな……!」
痛いぐらい絞めつける佳弥に余裕のない様子で答える浩二。まだ佳弥に会ってからまだ一度も達していないのだ。射精感がぐんぐんと上昇していく。ペニスの根元から亀頭が絞られるように込み上げてくる、
もう、限界だ。浩二はさっさと射精して楽になりたかった。できれば佳弥の中で吐き出し、身体の中も塗り潰してやりたい、そんな願望は初めてセックスをしたときからあったが、浩二は性欲が強くとも馬鹿ではない。最悪のケースを想定し、膣内射精なんて行わない。
つまり最悪のケースが発生しない相手なら、じゃぶじゃぶと出すことができる。
「ああ、イく、イくぞ、真美!」
「へ? ふひゃ、アッ!」
佳弥からペニスを引き抜き、そのまま真美の膣内に入れた。真美の膣は浩二のペニスに対してやや狭い。ぎちぎちとした圧迫感がペニスに噛み締める。突然の挿入に、真美は驚きのあまり何も感じなかった。しかし次の瞬間、真美は浩二を感じることになる。
――どくん、どくん
膣内でペニスは脈打ち、精液を吐き出していた。濃厚で大量の精液を、一息つく以上の時間、出し続けた。真美の膣内が浩二で満たされていく。うっとりと、真美の表情が恍惚なものへと変わっていく。
「あう、出てるぅ……やっと入れてもらえたぁ……」
「中で出させてくれるやつ、お前だけだからな。重宝するぜ」
待ちに待った浩二のペニスと精液。真美はこのためだけにピルを服用し、副作用で吐き気に苦しんで、それでもこの瞬間のため耐えた。それゆえに、真美の顔は幸せそのものだった。
ぬちゃり。愛液と精液でべとべとのペニスが引き抜かれる。そのまま座り込むと、真美はすぐにペニスに顔を寄せる。そのまま舌を伸ばし、自分と佳弥の愛液、そして精液を綺麗に舐め、ぱくりと口の中に入れた。
「偉いぞ、ちゃんと言いつけを守ってるじゃないか」
「大事な、おちんちんですから……はむっ」
ぐっちゅ、ぐっちゅ。フェラチオが始まる。目の前で行われている友人のフェラチオはまるで夢でも見ているように現実感がなかった。佳弥にお尻を向ける真美は前に集中して下半身が緩んだのか、トロリ、トロリと真美の膣口からは精液が漏れていた。べと、べと。ベッドに染みを作っていく。
「佳弥。お前も来いよ」
浩二の言葉は、つまり友人といっしょにフェラチオをしろ、ということ。もちろん嫌に決まっているが、セックスの反動で声が出なかった。
佳弥が返事をするよりも早く、真美は佳弥の拘束を外した。
「和田さんがそう言ってるんだし、いっしょにしよ?」
ちう。真美は佳弥の唇にそっと触れる。先ほどのこともあり佳弥は緊張で硬くなってしまったが、ただ触れるだけの優しいキスだった。浩二が見ている手前大人しくするしかないが、真美の内心は穏やかではない。本当は浩二を独り占めしたい、けれど逆らえるはずもなく、しぶしぶ提案を飲んだ。
二人は浩二の股間を覗き込む。すっかり真美の唾液でコーティングされたペニスがそこにあった。
「じゃあ、始めよっか?」
「う、うん」
二人は両側からペニスに唇を押し当て、ちろちろと舌先で舐めた。最初は小さくゆっくりと、次第にキスをしたりべろりべろりと舐め上げたりして動きが大きくなっていく。
「ちゅ、んっ」
「はぁ、はぁ、あっ」
勢い余って二人がぶつかることもあった。その度に真美は佳弥を睨み、佳弥はそんな真美に怯える。しかしそれは最初のうちだけで次第に役割が分担される。佳弥は根元や玉袋を、真美は亀頭を重点的に舐め始めた。一人は相手に負けたくない一心で、もう一人はこの状況で勝手に興奮しながら浩二のペニスに奉仕した。
忠実なセックスフレンドと最高の女。そんな二人のフェラチオを楽しみながら、さて次はどんなことをしようか、浩二は考えた。