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ベルトコンベア / げろしゃぶ

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ベルトコンベアの乗り口まで歩いてゆく。これは乗ったら最後、引き返す事も、途中で降りる事もできないのだ。誰か、私が進むべき場所を知らないのか。右へ行けばいいのか、それとも左なのか、はたまたまっすぐ進めばいいのか。周りに人はいるのだが、質問するのは憚られる。皆、忙しそうにしているし、これはここに来る前に知っていなければいけない事なのだから。ふと、振り向くと、一人の男が立っている。



「やぁ、どこへゆくのですか」男が尋ねた。

「それが、分からないのです。いったいどこへ行けばいいのか」私は、正直に話すことにした。

「なんだって、行き先も分からないなんて、そんな人がいるとは。」男は驚いた表情をしていた。信じられない、とでも言いたそうだった。私は自分の愚かさが恥ずかしかった。なんてことだ、自分の行く先も分からないとは。

「あなたはどこへゆくのですか」自分のことについてこれ以上訊かれたくなかったので、私は話題を変えたかった。

「どこへゆくかって、決まってるじゃないですか。どこかですよ」男が誇らしげに答えた。

「あなたも自分がどこへゆくのか知らないんですか」こう訊くと、男が苛立たしそうに言った。

「分からない人だな、このベルトコンベアに乗ればどこかに着くんですから、そんなのは関係ないんです。それに、どれでもいいんだから。ほら、あなたも乗ったらどうです。」

「すみません、自分で決めたいものですから」私は男の勧めを断った。

「どこかへ行こうとしたって、望んだところに着くわけじゃないんだから」そう言うと、男はさっさと行ってしまった。



どこへ行こうか、しばらく迷っていた。どこへ行っても同じような気もするし、一つ一つがまったく違ったところへ繋がっていて、決定的に違うような気もしているのだ。とある乗り口の前で止まってしばらく考えていると、急に後ろから押され、ベルトコンベアに倒れこんでしまった。乗ったら最後、止まる事も戻る事もできない。こうして私は行き先も知らないまま、帰って来れなくなってしまったのだった。







今年の抱負 / 働く
4, 3

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