トップに戻る

<< 前 次 >>

自由作文「世界の終わり」

単ページ   最大化   




    地球外生命体が地球に侵略してきている。



TAKE1
「戦だ!」「戦は駄目です!これまで先人が何度の過ちを犯してきたとお思いですか」「我々は人類の為に戦うのだ」「戦をしてきた者は皆そう言うのです!」「うるさい!」
核弾頭のスイッチへ歩いていく大将に立ち塞がる女将。「私を殺してからお通り下さい」
「……おぬしの思いには敵わん。我が間違っていたようだ」「そう言って頂けると信じておりました」
その晩、地球外生命体のレーザービームにより、人類は滅亡した。


TAKE2
世界が決定した判断はこうだった。
『いかなる理由があっても地球外生命体を殺してはならない。こちらに戦闘の意思が無い所を見せれば敵も分かってくれるはずだ』
世界会議は一切の武力行使を認めなかった。全ての武装を解除し、兵器を破壊していった。
人類は希望を抱きながら地球外生命体の慈悲を待った。
しかし地球に辿り着いた彼らは都市を焼き尽くし、自然は朽ち果て、人類は次々と減っていった。
いつしか生き残った人々は希望を抱く代わりに、祈った。
この苦しみに耐えれば天国へ行くことができる、と。
現世は、真の世界へ行く為の道程でしかない、と。
そうして最後の一人が灰となり、地球は一つの岩石へ還った。


TAKE3+
極めて残虐性の高いγウィルスが地球に飛来してきていた。一定以上の距離に迫られた場合、地球全土において安全が保証されなくなる。国際会議はγウィルスからの防衛を最重要課題とし、宇宙へ人材と機器を派遣した。しかし、一部反対派の圧力により、防衛資金のルート・機器の供給が十分にされなかった為、本来であれば避けられていただろう生身の人間の犠牲が大量に出てしまった。ついにはγウィルスの輻射の一部が地球へと降り注ぎ、小さな街が一つ破壊され、民間人数名の尊い命が奪われた。十分な予算が割かれていればもっと早く平和を取り戻し、犠牲も最小限に抑えられていただろう。


TAKE3-
一部の好戦国の一方的な決定により、地球外生命体との戦争が開始されてしまった。世界中の成人した男性が戦闘員として次々と戦場に狩り出されていった。地球外生命体との泥仕合が続き、兵隊はどんどん死んでいった。死体は、回収されることもなく宇宙空間に棄てられた。そして、防衛策の怠りの為か、地球外生命体の一撃が地球に着弾、女性・子供数名が犠牲になった。戦争推進勢力は、核兵器の使用を無理矢理解禁させて、地球外生命体を殲滅させる道を選んだ。人類の歴史に血の一頁がまた加えられた。戦いこそ勝利に終わったが、この時代にその事を誇りに思える者がどれだけいるのだろう。


TAKE4
全世界の意見を集めることになった。
戦争は避けたいながらも、防衛手段を一切取らないことにも不安を覚えていた一般人は初めは沈黙を貫き通していたが、ある人間が「戦う気がある人間が戦えばいい」と声高々に意見したことで、一般人が次々とその意見に同調していった。
その中で一部の者が立ち上がり、彼らの言う通り残虐な地球外生命体と戦ってみせた。
核兵器や無人戦闘機と共に宇宙空間に飛び立ち、気を狂わせながら地球外生命体の残虐性を真似て殺戮をしてみせた。
自らの身体・精神も傷付けながら、ついには地球外生命体の侵略を食い止めた。
その後十年、各地でデモが起こった。
「過去から何も学べない人間たち」
「口でだけ生命を尊重してみせる大人社会の実態」
「異質なものを排除することが本当に正しいことなのか?」
「あの日、戦争以外の選択肢は無かったのか」


TAKE5
世界が決定した判断はこうだった。
『いかなる理由があっても地球外生命体を殺してはならない。こちらに戦闘の意思が無い所を見せれば敵も分かってくれるはずだ』
世界会議は一切の武力行使を認めなかった。全ての武装を解除し、兵器を破壊していった。
人類は希望を抱きながら地球外生命体の慈悲を待った。
しかし地球に辿り着いた彼らは都市を焼き尽くし、自然は朽ち果て、人類は次々と減っていった。
いつしか生き残った人々は希望を抱く代わりに、祈った。
この苦しみに耐えれば天国へ行くことができる、と。
現世は、真の世界へ行く為の道程でしかない、と。

しかし、地球人の最後の生き残りのうちの一人であった小説家志望の青年は思った。僕は死にたくなんかない、と。
青年は死への恐怖と生存への欲求を堪え切れず、ついに口に出した。
「すごく悪いことだって分かってる。世界中の罪の無い人が死んで僕だけが生き残るなんて。もし天国と地獄が本当にあるのなら、僕は間違い無く地獄落ちだ。だけどそれでも、僕は死にたくない。天国や地獄の存在なんて信じられない。僕はこの星で今を生きていたい。この星が好きなんだ! そうだ、君も生きよう。二人ならやっていける」

生き残りのもう一人であった桐谷美玲は目に涙を溜めながら青年の意見に同調した。

青年は、中東のある国が放棄せず隠し持っていた核弾頭の全てのロックを解除し、スイッチを押した。
それから数分後、宇宙はかつてのように静まりかえった。
核シェルターから再び出てきた青年と桐谷美玲は、荒れ果てた大地に立ち尽くしていた。
「全部、無くなっちゃったね……」
「だけど僕たちがいる。ゼロから世界をやり直そう」
そうして青年と桐谷美玲は世界の再建と子作りに励んだ。
2

パンフレット 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

<< 前 次 >>

トップに戻る