入れ食い
1
最近の女児は発育しすぎ 短ぱんにニーソの取り合わせがえろい
ふくらみかけた乳頭をシャツにポッチさせて 男子も先生もドギマギして
そんなブラジャー未満スポブラ以上の
乳首がナイロン生地にこすれていたい ちょっとわからない汁が出てくる
そんな哀れっぽい、なまぐさい、現実のにおいの話
ジャージーを半脱ぎしたダンス女児が
同級生のイケメン男子とリズムを刻みながらせっくすしまくり
そのさいチャラチャラと首のアクセサリーが揺れていて
どこかの廃倉庫の 天井の穴からもれる光をうけて
それが きらめく魚の背に見えるとか そんな感傷もふくめて
色々な現実やいめーじがあると思う
でも ちょっとボリュームをしぼって 世相の風評からはなれてみると
一軒家の塀に守られた・ぬくぬくとした・ミルクにひたしたパンのような様相もあって
そのひとつがランドセルで 最近のランドセルには色んな色がある
というのはよく言われたちょっと昔の話
これはじっさいに人から聞いた話で ”実体験を伴う研究”とでもいうべき
確かさのあるものなのだけど このぼんやりした話のなかに はじめて クッ
と立ち上がってくる明彩なコントラスト つまり手で触れるような現実
それがラメや錨や ハートマークを打った ストライプの 動物がらのランドセルというわけ
とはいっても現物を見たわけじゃない 又聞きできいただけ
だから 想像をはたらかせて あれがあるなら これもあるだろう と幾つか
商品ラインナップを展開してみると たとえば
全身をピンク・ブルー・イエローなどの女の子したパステルカラーの
キティちゃんグッズで固めているキティラーというのがいる
ひとはウンコもするし おしっこもするし と寫物も吐く
変な毛もはえるかもしれないし嫌な・みっともない病気にかかることもある
でもキティラーはそんな現実ないみたいに 可愛い雰囲気の世界のなかに
身をひたしきって ガゼル・トムソンようにピンと傘を立てている
頭には花も咲くしリボンも咲くし
道を歩けばお金もおちていて ハッピーになれるかもしれない
そもそも この世界はすみからすみまで 聖地・サンリオピューロランドみたいな
場所なのかもしれない 葉脈のようにピューロパワーが行き渡っている
ピンクを基調としてキティちゃんのキャラものをプリントしたランドセルに
ラメ・ハートマークがあしらってあれば きっと これ以上かわいいものは想像できない
そんな最上に愛されたランドセルを背負う女児のはなし
2
釣りをしたことのあるひとなら新鮮な魚の美しさはわかると思う
僕は父親が釣り好きで小さい頃からおいしい魚を食べてきた
貧乏で肉の味はろくにわからないけれど 魚の味はわかる人間になった
そんな僕が食べてきた魚のなかで美味しいと記憶に残っているのは
ぼらの刺身 これは意外 後年スーパーに売っていたやつも食べる機会があったけど
刺身もまあ食べられた それほどでもない あとは油で揚げてしまう
冬の季節のあぶらののった 釣りたてのぼらは 身がしこしこしていて繊細で
うすーく切ったやつがふぐの刺身のようで美味しかった
父親が一生懸命さばいて 丸い皿に扇を広げるようにていねいに並べたやつを
家族はむしゃむしゃとありがたみもなく食べてしまうので悲しいと言っていた
口のあたりが丸いすんなりしたカーブを描いた大きなぼらを
磯のうえのみずたまりで 父親が出刃包丁をつかってしめていたことを覚えている
このぼらを僕は河口で釣ったけど 海のやつじゃないと生臭いので食べれないそうだ
でも僕は家に持ち帰ろうとクーラーボックスもないのでビニール袋に突っ込んで
防波堤の上に置いていたら 太陽がジリジリ焼いてぼらの半身は白く焼けてしまった
一番よく食べたのはメジナ 真っ黒な魚で うろこをはぐと薄い皮の部分が青く透き通る
型が小さいのは馬鹿みたいに釣れて これはフライパンでまとめて煮付けにしてしまう
型の大きいのは塩焼きにする 尾に化粧塩をして 皮に切れ込みをいれて
なかなか立派な料理にみえた 頭はぐちゃぐちゃと骨ごと咀嚼して中の汁を吸ったら
べっと吐き出す あの味や父親の素振りや口髭の生えた顎やにおいを思い出す
このように とでもいうべきか なにごとも というべきか
特に 魚と鮮度の関係は重要で 非常にいたみやすいものだから
僕の頭のバインダーからは もっと醜悪な要素を引き出すこともできる
鮮度の悪い半額のいわしのはらを切り裂いたら 溶けた内臓がどろどろ流れ出したはなし
ピンク色のファッジ 実験用のねずみの胎児をミキサーでシェイクにしたら
小さな目玉がぷつぷつと回っていたはなし
崩れたさかなの腹の身から細いほねが 折り曲げた指のように突き出していたはなし