デモンストレーション
3
女児のランドセルに魚の入ったところが見たい
あふれる蜜壷のような 女児の秘密の赤いつぼから黄土色の腐った
はらわたがどぼどぼ湧き出して とめどないはらわたの噴出に
嘔吐の飛まつが 放射状にアスファルトに飛び散るところを見たい
汚物はおどる女児の靴のかかとに飛びついて
靴下のくるぶしのあたりにまでかかってくる
あわててランドセルを投げ捨てようとしても
肩の部分がシャツにみっちり喰いこんで 胸の辺りできっちり
ロックまでかかってしまい 地獄の底からゲェーゲェー言う
恐ろしい断末魔を背に 泣きながら走り回るだけだ
ここでいう女児とは誰なのか
きちんと身元のしっかりした父親と母親をもち ボテ腹を蹴りやぶって誕生した
出生届と住民登録を縫いつけた前かけに 離乳食をべたべた喰いこぼして
細い頭髪のすじに透けた汗をかいた頭皮のあたりから ココナッツミルクのような
匂いをさせて プリキア あるいはスピンキア 槍のような趣味と
一生つうじて使い回す 自身の貧弱な体験による風水じみた偏見を
はやくも性格ににじませながら 午前中はTVのピタゴラスイッチの輪ごむの生き物が
怖いとおびえて おだやかな昼時は緑色のホースを鎖部分に巻きつけた
タイヤの遊具に乗って 焼け焦げるにおいで気持ち悪くなってしまうまで
遊びつづける ハート型への飽くなき執着を本能に刻みこんだ
すでに毒々しい芽を体内に芽生えさせた
けったいなじゃが芋のように不揃いな 名前のある生き物のことだ
ことさら名前のことなどを持ち出すのは 僕としても不本意きわまる
女子高生○○事件の 女子高生という四文字で人が情報を得た気分になったり
当面の俗っぽいやじうま精神を満足させる補填方法を見習うのなら
肩書きや外見以上のことなんて気にするべきじゃない
でも 僕のなかの現実家なぶぶんがロマンチックなぶぶんにあらがって
普段目にするような 学校帰りの じゃが芋の洗い場のような光景を再度思い出して
あえて ぼやけた 胸の名札の文字を判別しようと 意識を集中して努力する
十人十色 とひとはいう 世界云十億人に一人として
完璧に同じ人間は存在しない とひとはいう
僕は長いことその言葉に反発をおぼえてきた
似通って見える平凡な街や人間からは 共通のエッセンスは認められても
情報の差異以上の質的な差はないように思える
でも いまフィルムの中からつかみ出しかけたマリービスケットの手をとめて
あらゆる可能性を考慮して 例え数%に満たない可能性でも
存在することを信じて 咲き乱れる 女児の園に日夜眠れぬ想いをすること
それが真っ当な人間として最低限 最小限 通るべきキャリアなんだといえる
僕はいま復讐心にかられている だからせめて正直に物をいう
へたってぶよぶよした腐れた鰯のひとつかみを ゴム手袋ごしに突っ込んで
ランドセルニョクマムを作るにしても 赤黒い血溜まりで低学年用の
教科書のかたまりの端がどのように折れ曲がり 化学変化を起こして
付着した 指先かほおの内側の細胞の最後の一粒が 苦悶に焼けただれ死のうとも
肩まで垂らした女児の髪の毛を 汚物が透明のケーブルのように這い伝わって
頭部を侵食して 荒ぶる蝿どもの作った蝿柱の中心に仕立てようとも
これはぜんぶ僕の意思がやったこと