なんだ、これ。いい雰囲気だ。
夜の森は静かすぎて、自分の鼓動がやけにうるさく聞こえた。気づかれる前に、呼吸を整える。焦れば焦るほど、心臓がのたうつ。
エイリアにメルタを重ねたばっかりに、頭にはメルタの顔がずっと浮かんでいる。それどころか義理の母のトレーネさんも出てきてしまった。さらには着物とそろいの藤色の髪飾りを黄金色の髪に差す、許嫁のアリエル・ルトガー=ゴルドハウアー。かつて命を救った女の子、ハレリア。まだ出会っていない龍の角の男の子まで登場する。
褐色肌の精霊戦士との楽しかった勝負の様子も蘇ってきた。(なんで、ここにお前が出てくるんだ。戦時中に何度か手合わせしただけなのに)
気が多いのか惚れっぽいのか。頭の中に浮かんでは消えていく。走馬燈のように。
メゼツは取り乱していたが、「俺も男だ」と覚悟を決めた。
メゼツはエイリアの肩に手を置き、グッと引き寄せる。もう二人の顔は互いの熱を感じられるほど近い。
チュ、グチュ、ジュルジュル、パクパク、ペロリ。
エイリアしか見えなかった。目の前にエイリアンの口内があった。エイリアの口から飛び出した第二の口が、メゼツの顔にかぶりついていた。
(二人は幸せなキスをして終了)