メゼツは必死になって、いいわけをでっちあげた。
「目の輝きが似てるから好きになったなんて、妹に対する裏切りだ。エイリアだってそんな理由はイヤなはずだ」とか。
「そもそも俺にはいまだに俺の帰りを待つ許嫁がいるんだ」とか。
どれも陳腐で空疎な言葉だ。
結局メゼツは何を言うことも、何をすることもできなかった。
この場合、無言は拒絶と受け止められることだろう。
再びエイリアが目を開けると、瞳の中の星は滲んでいた。
ふたりはそれからどことなくよそよそしいまま家路につき、円盤型の星を渡る船に星のカケラを加工して作った蛍光ピンク色の燃料を黙々と燃料タンクに注入している。
明るい女の子の沈黙は、まるで星のない闇夜のようで。なにかかける言葉がないか、頭をひねる。だめだ。何を言っても傷つけてしまう気がする。
円盤に火が入り、予備のエネルギーから飛翔するためのエネルギーへと切り替えられた。
エイリアは日が昇る前にこの惑星ニーテリアを起つつもりのようだ。
星の海へと帰ってしまえば、もう会うこともないだろう。
別れの直前になっても口ごもってしまう意気地のないメゼツの代わりに、エイリアがお礼を述べる。
「私が宙から来たって言っても、酒場ではいつも頭の弱い子扱いされるだけだった。やけっぱちになって、この星をめちゃくちゃにしてやろうかとも思ったけど、早まらなくて良かった。あなたが信じてくれたとき、とてもうれしかったの。だから……ありがと! お礼に私の卵いる?」
もとの通りのエイリアの様子にメゼツは救われた気がした。ねっちょりとした粘液の付いたヤシの実ほどの大きさの白い卵を手渡され、いつものように憎まれ口を叩く。
「お礼だけ受け取っておくぜ。卵はいらん」
「えー。ふたりの愛の結晶なのにー」
「身に覚えねーから。無精卵だから」
最後まで他愛ない話を交わして、ふたりは別れた。
円盤は7色に目まぐるしく変化しながら、音もなく浮かび上がる。そこから天へと一直線に昇っていくのをメゼツは地上から見届けていた。
この星々の向こうにエイリアたちの住む世界があるのだろうか。
あっという間に円盤の光は小さくなって、夜空の星に紛れてしまった。
(了)