バイト終わりの帰り道での事だった。
そこは俺がいつも通る道で、いつも薄暗いため、俺みたいなブサメンしか使わない道なんだが、今日は珍しく俺以外にも人がいた。
いや、正確には人じゃなかった。
遠くから見ると人っぽかったんだが、今現在目の前まで来ると、それが人ではないのは一目瞭然だった。
骨がローブ被ってる。人体模型らしく、背骨からは枝のように骨がにょきにょきと生えていた。それが中々良いアクセントになっているようだが、俺に言わせてみれば少し生やし過ぎだ。例えば、この下のは蛇足だろう。折ってやる。えいっ
「いてっ」
骨を折った事などなかったが、細かったので割りと簡単に折れた。少し見栄えが良くなった気がするが、今度は別の場所が悪目立ちしてしまう。恐らくこの上の部分を折ればいい感じに収まりがつくだろう。おらっ
「ごふ」
上の方を折ったら、予想外に寂しい見た目になってしまった。
個人的にはもう少しシャープになると思ったんだが、どうも上手くいかな「あの」
よし今度は真ん中を「ちょっと」
おらっ「ちょっ」
「いてーーーーーーー!!」
突然の悲鳴。しかし周りに人はいない。勿論俺が出したものでもない。ここには俺とこのゴミみたいな人体模型しか…
まさか…!?
「私の骨を折ったのは、お前かーーーーーー!!!」
「人体模型が…喋った!!」
何と、喋った。声色から察するに、この模型はメスだ。
しかも相当お怒りでおられる。
「どうかなさいましたか」
「どうかなさいましたかじゃねーよ!何勝手に人の骨ボキボキ折ってんだよ!!」
「そうみたいですね」
「何他人事みたいに言ってんだよ!!お前が折ったんだろうが!!」
______________
この骨、いや、正式名称はしみちゃんというらしいが(骨身に沁みるという言葉が由来らしい)、どうやら人体模型の付喪神らしく、あの枝みたいな骨は非常にありがたい神様の骨だったらしい。
「お前が折った三本はな!私が何百年とかけて育ててきた、かけがえのない骨なんだよ!!」
「あのそんな前から人体模型ってあったんですか」
「シャラップ!!!」
俺は正直もう帰りたかったが、しみちゃんは何とかしてこの枝骨を元通りにしないと帰してくれないらしい。
「どうすればいいですか」
「接着剤とかでいいから、取り敢えずくっ付けてくれ」
「あ、アロン○ルファなら今ありますよ」
「おお、それでいいよ。早くくっ付けてくれ」
早速俺はアロン○ルファを取り出し、しみちゃんに枝骨を接着する。こんな事で済むんなら大騒ぎすんなよって言いたかったが、口にするとまた怒鳴られそうだから止めとく。
「ほら、あと一本、さっさとくっ付けてくれ」
「はい」
最後の一本である。しかし、その前に接着した一本が、どうも位置的に変な気がする。もうくっ付いてしまっているが、もう一回折って修正したい。いいかな。いいよな。おらっ
「いてーーーーーー!!!!
何やってんだお前!!」
「いや、ミスっちゃったんで」
「は!?いや、ミスってないよ!
ていうか、今折られたのは別の骨なんですけど!!」
「あっ、ほんとだ」
よく見たら、俺が付けたのは今折った骨の下のやつだ。
ということは、変な所に生やしてた神様が悪いよな。
「な訳ねーだろ!!早くくっ付けろ!!」
まあ、そんな感じでアクシデントもあったが、その後は無事接着に完了した。
「あー…痛かった…まったく、もう折るなよ!」
「折りません」
「ふう、これで元通りか。よし、お前、ちょっと私を移動させろ」
どうやら、さっき骨をボキボキ折られたせいで、神パワーが減少しているらしい。まあ、数メートル先の龍脈まで運べば、それ以降は自分で何とか出来るらしい。
「じゃあ運びますよ」
「おう。…おい、枝骨をつかむな。また折れるだろ。おい。
聞こえてるんだろ。おい、お……」
ぼきぼきぼき
「いてーーーーーーーー!!」