「その陰にいる者は誰だ?」作:38(t)(3/4)
歩いていると、日なたと日陰の境目に、人が一人立っていた。
顔はすっぽりとフードに覆われて、横からでは見えない。
この明るい日の中で、人目か日差しでも気にかけているのだろうか。
だが、その「人物」は顔の日焼けなど気にしてる場合ではないように思えた。
ふと下方に目を逸らすと、下半身が丸出しになっている。
それも尻が見えるどころではない、人の骨盤が白骨化しつつも背骨を支えてしっかりと立っているのだ!
これは生者ではない!そこで自分の正気を確かめるため前に向き直ったため、
腰から下を見る機会はついになかった。
その者の前を急いで通り過ぎ、フードから顔を覗き込まなかったのには、むしろ自分に感謝すべきだろう。
思い返してみると、単なる人体骨格標本を使ったいたずら以上の物が目に映っていたことに気付いたからだ。
頭のフードから骨盤に目を移す間の一瞬のさらに半秒見えたもの、
それは思い返すと肋骨でも腕骨でもなく、動物の骨質とも植物の木質ともつかぬ、
無数の枝がその者の背骨から生え、ゆっくりとこちらに伸びてくる様子だったのだ!