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ミシュガルド聖典把握記14

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カーリマーターは戸惑う神である。
何もかもを夢として表現して、
曖昧模糊のまま人々を投げだして、
感傷に耽る戸惑う神である。
しかし農耕の神である。
故に人に伝えずにはいられない、
フロンティアはある、と。


「ミシュガルドが夢を見せる、か」
カノヤ・バーンブリッツは、
戦時中は甲皇国の陸軍航空隊に所属、
虫戦車搭乗のエースだったが、今は、
「こっちに渡って来てから、
 変な噂ばかりで聞き飽きたな」
スズカ・バーンブリッツの弟である彼は、
「といって甲皇国に今さら帰れないし
 大交易所で何かクエストでも探すか」
護身用の少ない装備と軽装で気ままに、
一人旅ときているから、危機感が薄いのか、
「なあに、気楽にやるさ」


「本になってるのね、夢の話が」
パラパ・ランペエジは、
熊勝春樹の草原の夢を手にして、
読み始めた。
「ふんふん」
読み終えた、感想は、
「見た夢の話が仔細書いてあって、
 なかなか興味深かったわ、
 私が見た夢と同じだものね、
 こうやって才能のある人が、
 書いて残してあるのは大事なことよ」
と、仕事である、
「カーリマーターという農耕の神が、
 ミシュガルドにいるというのなら、
 当然ミシュガルドにも民話や、
 神話、伝承があるはずよね」
当然そのはずである。
「ミシュガルド研究の最前線に、
 一度、行ってみる必要があるわね」
パラパ・ランペエジは、
地図を手にすると、聞き込みに入った。


「血を流せ!血を!」
スカロプスは観客と一緒に白熱していた、
SHW商業連合所属、
暴力のサーカス団団長のスカロプス、
「いいぞ、生き残れよ!!」
「殺せ!殺せ!殺せ!」
今まさに観客が熱狂する戦いが、
舞台で繰り広げられている。
様子は想像に任せる。
だって怖いから。
「ひひひ、子供には見せられんな!」


「んんー、冒険の匂いがするな!」
ホイップ・ルーデントは自称探検家、
アルフヘイム出身、
「ミシュガルドの未開地に行かなきゃな!」
ミシュガルドの果てまで行かなきゃな!
「そうそう、いい景色見に行こうぜ!」
ホイップ・ルーデントは走りだすと、
道無き道を選んで進むのだった。


「やれ!カプリコ!」
カプリコ・カプリコーンは、
相手にしている賊にキックを食らわせると、
「さぁ、死ぬまで踊りましょう」
賊の足を払い、こけたところを起こして、
また足を払って、一方的なダンスを踊り始めた。
そう彼女は暴力のサーカス団の団員、
いままさに挑戦者がいたぶられている所、
「いてて、助けてくれ」
「いやあねえ、まだ踊りは始まったところ」
無理矢理引っ張りあげて、投げては、
蹴り、蹴りあげてはくるりとバレリーナ、
やめるつもりがない、
そもそも体力が尽きることが無い、
「長いぞ! とどめを刺せ!」
「はい、とどめ!!」
グルグルと挑戦者とともにまわり始めると、
勢いをつけて壁に叩きつけて、
その上から思いっきり飛び蹴りを喰らわせた、
「ぐぇえええ」
吐血し絶命する挑戦者。
「し、死んだ!」
「死んだぞ、ハハハハハ!」
「死んだ、死んだ、死んだぁ!」
さあ!
暴力のサーカスはまだ始まったばかりだ!


「やあやあ、はっはっは、こんにちは」
アイアン・ストーンランドは甲皇国の医師である。
「今日も怪我人が多いね、未知の病気に、
 かかってなければいいが」
昨今の夢のフロンティア騒ぎで、
甲皇国でも入植者の新天地介入が相次ぎ、
道中で怪我を負って帰ってくる人が、
後を絶たなかったのだ。
「さて、仕事だぞ、手伝ってくれ」
アイアン・ストーンランドはそう言うと、
防刃素材に身を包んだいかつい姿を、
白衣で包みこんで、医療を続けた。
「なあに、軽いけがだよ」


「カデンツァ様と来たら、自由すぎる」
ファイサルは警察将軍 兼 武装親衛隊将軍、
元々丙家領内の治安維持にあたる警備隊長で、
アレッポの上司。
「ここミシュガルドでの軍のたるみは、
 取らねばならん」
別々に担っていた甲皇国の治安維持を、
甲家の威を借りて一元的に自分の指揮下に、
置くべく、親衛隊に入隊してその傘下組織たる、
秩序保安警察を結成した。
「とくにマルクスは上げねばならん首だ」
ことマルクスの「五月一日反乱」鎮圧に貢献したことから、
現在に至るもマルクスを付け狙っている。
「とにかくミシュガルドの綱紀粛正を
 はからねば、な」
ファイサル、彼は夢を見ない、
現実的な男だったのだ。


機甲闘人 ブシンラインは静かに眠っていたが、
緑の平原の夢を見たことから、
はっと目覚めることがあった、
しかし首から下が埋まっていたので、
再び石にもどると、
深い深い眠りについた。


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