第十二戦:呼び出しを喰らったミドレンジャー
数日後、ミドレンジャーの面々は、東京の科学研究センターへと向かっていた。順子の運転する軽乗用車、ムーブは首都高をひた走る。その車中、助手席の洋助は無論、後部座席の巧に、『社長席』からせり出す様に陣取った肥満体の貴はおし黙ったままだ。
「そんなに深刻にならないでよ、みんな」
と、問題の主、順子だけは朗らかに皆を鼓舞するように言う。
「科学技術庁の人たちだって鬼でも悪魔でもないもの。同じように悪を、ジェノサイドを憎んでいる人たちよ。事情を話せばきっとわかってもらえるわ。」
彼女の言う事情…。それは今日、ミドレンジャーの面々が呼び出しを喰らった理由を意味する。ミドレンジャーが事件を解決できなかったのは、ジャングルの倉庫事件が初めてのことだ。その失態は、極秘裏に戦隊活動を支援している当然科学技術庁に報告された。つまりは、ミドレン・ピンクが敵の手に堕ち、拷問までされたという痴態も報告せざるを得ず、当事者の順子にも呼び出しがかかったわけだ。すなわち今日の招集は順子の査問を意味する。
「でもさ、僕ら、今回は事件を解決できなかっただけじゃなく、仲間の一人がジェノサイドに捕まったわけじゃん…」
と、順子のあられの無い敗北シーンを思い出したのか、オタッキーな顔を紅潮させ俯く貴。順子も申し訳なさげに、ペコっと頭を下げるが、ペロッと舌を出して微笑んで見せる。案外タフネスで、気丈な女のコなのだ。
「いい加減に妄想を止めろよ、貴」
と、友人のスケベ心に釘をさす巧。
「ただ、敵の実態すら今回はつかめなかったことは不味いよな。結果的に俺たちは負けたも同然だし…そこを科学技術庁の連中は問題視しているんだろうな」
と、巧は冷静に呟く。
「なーに言ってんだよ。役人なんて杓子定規にマニュアルに沿ったことしかできねえ、無能な連中だぜ。俺ら現場の苦しみなんてわかるかよ。順子、お前も今回の事は気にすんなよ。ミドレンジャー辞めろっていうんなら、辞めてやれ、俺も一緒に辞めてやる」
と、本人も役所勤めをしているくせに妙に反骨精神旺盛な洋助は、霞が関の官僚に敵意を剥き出しだ。
「ありがと、洋助君。でもね、ミドレンジャー辞めるなんて言って欲しくないな、私。…誠さんの思いを引き継ぐ目的でやってるんだし、みんなにも正義の心を大切にしてもらいたいから…。それに私もみんなと一緒に戦っていると、昔のまんまでいられるみたいで愉しいし」
順子は高校時代のマドンナの表情で、男たちに微笑みかける。
「あとね…」
続いて順子は悪戯っぽくクスリと微笑んでみせる。
「今日、私たちを呼び出した科学技術庁の政務官って、誰だか知っている?」
順子は今度は屈託なく微笑む。
「話題の政治家、大泉信一郎クンなのよ! 彼、イケメンでカッコいいもんねぇ! いっぺん逢ってみたかったのぉ~~💜 これも役得だよねえ!」
と、かなりのミーハーさんだ。
「なんだよ、やっぱりお前もイケメン好きかよ!?」
と巧が突っ込み、貴は不貞腐れる。
「女ってやつはぁ…」
と、洋助も肩を落とすのだった。が、この時、この政府のイケメン政務官からの御呼出しが、どれほど淫靡なものになるか…予期していたものは少ない…。