VOL.4 虜
壮絶な恐怖を味わいながら拉致という非常事態に陥った柳原若葉。彼女が連れ去られた先は首都から離れた県境付近の、昨年まで営業していたラブホテルだった。県道から僅かに離れ、旧道に繋がるトンネルの、そのまた傍らの雑木林に鎮座ます鉄筋三階建ての小ぶりな廃ビルに近づく者はいない。
「いやぁ―――ッ!!」
泣き喚き身悶える12歳の少女。ここに連れ込まれた時に、足首を結わいた結束バンドは切断され、両足の自由を取り戻していたが、手首の縛めは解かれていない。
「よし、カラダを押さえろぉッ!」
男の一人が力任せに、デニムのホットパンツのホックを外しにかかる。金色のボタンがはじけ飛んだ。足の甲までこんがり日焼けした健康的な脚を振り上げ、抵抗を試みたがジーンズ地のズボンは擦り下ろされたのち剥ぎ取られた。足首の拘束を解いたのはこのためだった。
「シャツも脱がせろよ」
女児から着衣を剥ぎ取るという暴挙に明らかに興奮しつつ、事態を冷静に俯瞰していた不気味な男が、若葉の幼くも瑞々しい肉体を晒すよう命じた。
「いやああぁぁ――――—ッ」
若葉の悲鳴に、布地が引き裂かれる音が入り混じり、さらに少女の受難の現場は生々しいものとなった。
が、衣服を剥ぎ取った男たちは、少女の女児体躯に張り付く紺色のスクール水着を目にした瞬間、別の意味で驚きの声を漏らす。と、同時に扇情的な色をその目に湛え、快哉を叫んだ。
「おお―――—、こりゃあ、良いぜぇ!! なんとッ、スク水かよ!?」
でっぷりと肥えた男が鼻を鳴らしながら、目尻を下げる。
「おいおいおい、しかもワンピースタイプの旧スクじゃあねえか!!」
シャツを引き裂いた狐目の男も、ブルマのような緩い角度のエンジェルゾーンから伸びる太腿に目の色を変えた。
「JC(女子小学学生)拉致するだけでも興奮モノなのに、スクール水着を生で拝めるとはこいつあ、幸運だぜえ!! おまけにメガネっ娘かよ、最高だな!!」
誘拐魔たちのテンションは著しく上がった。
「お前ら、勘違いすんな。その娘を拉致ること自体は手段であって目的じゃあねえんだ!!」
狂気の一歩手前という様相の二人を一喝したのは、若葉の衣服を剥ぎ取る命を下したその男だ。
彼はそれでも、捕虜とした少女の瑞々しく初々しいスクール水着姿には目を細める。反対に少女は嗚咽を堪えながら、眼鏡の下で瞳を潤ませる。
「私をどうする気…ですか? なぜ、こんな乱暴を?」
男は、ボーイッシュな若葉の黒髪を脳天で鷲掴みにすると、無理やり立たせ、爪先立ちになるほどに吊り上げる。
「い、痛いッ、止めてッ、止めてよッ、止めろぉ!」
「おうおう、可愛い顔していると思ったら、地はかなり小生意気なようだな。すぐに上から目線な態度を取りやがる」
素足の先で床を掻きむしりながら、憎まれっ娘のような表情を作り、男を睨む。根はなかなか勝気なのだ。それは、父母、ひいては祖父や一族など身内が、心底他者に頭を下げる姿を目の当たりにしないが故の態度とも見受けられる。
「恨み事なら、爺さんにいうんだな」
「…お、お祖父ちゃんの…だったら…やっぱり…」
若葉は察している様子だ。なかなか頭は良い娘のようだと男は思う。金持ちや品行方正な一族の子供は、そうでない家に比べ圧倒的に優秀で聡明でもある。このお転婆に見えるじゃじゃ馬も、その言動からは利発で小利口な様子も垣間見える。