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35・愛里ふたたび

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目覚めると朝7時30分。

うー、今日はかなり寝坊したな。

昨晩は希春の事を考えるとなかなか寝付けなかった。

未だに希春とのあのドライブは夢の中の出来事と思えてしまう。

顔を洗い、朝の散歩に出るとアパート前の坂道をポニーテールにしたスウェットスーツ姿の桜子さんが走ってきた。

たわわなお胸がぶるんぶるんと暴れ回って揺れて目が釘付けになる。

もちろんブラとかしているのだろうけど、布だのワイヤーごときではあれほどの巨大質量を抑えきれるハズもない。

桜子さんはフラフラと僕の前で立ち止まると苦しげに息をついて
「牧野さん……はぁはぁ、おはようございます……」と挨拶した。

うっすらと汗をかき肌をピンクに上気させ、喘ぎ喘ぎ息を整える桜子さんを見るとドキリした。

「ゴクリ……お、おはようございます。
ジョギング始めたんですか?」

「え、ええ。
若い人に負けないように体を絞らなきゃと思って……はぁはぁ。
で……でも、もうダメぇ……
ちょっと動いただけで……もう、こんなになっちゃって、はぁはぁ」

激しい息づかいに合わせて胸とポニーテールが上下に踊っている。

すごい魅力的で若い子に負ける要素ゼロじゃないですか……

ブォンブォン

ちょうどその時、野太いエンジン音が響いたかと思うと一台のバイクがやってきた。

乗っているのは紫の特攻服にどぎつい化粧の……

キッ!

愛里は僕たちの前で止まるとバイクを降り
「牧野クン、桜子さんおはようございます」と頭を下げた。

この前とは打って変わってなんだかしおらしい。

愛里は
「あの……ご迷惑かけたからパパとママがこれをもってけって」と菓子折りの入ったビニール袋を差し出した。

桜子さんは
「わー!ありがとう。
でも二人には気を使わないでと伝えてね」と言い、
「愛理ちゃん、まだならウチで朝ごはんでもどう?」

桜子さんの部屋で朝食の準備を手伝っていると

カンカンカン

外階段を降りる音がし、エリナが入ってきた。

ガチャリ

「ふぁーgod morgon!
おはようございまーす」

愛里はエリナを見るなり
「げっ!外人さん!!ハ、ハロー」と慌てて言う。

エリナは笑って
「大丈夫、日本語ペラペラのペラ之助だから。
あたくし3号室の栗栖エリナ!
あなたは?」と聞く。

「ウチは桜子さんの親戚で、牧野クンの舎妹の愛里……」

「愛里ちゃんね、よろしく。
Nej、それにしてもその服と化粧ダサすぎない?」

え?エリナ!初対面でいきなりダメだってそんな言い方……

愛里が立ち上がり
「はぁ!?
なんだテメー!!
ケンカ売ってんのか!!」と叫んだ瞬間、エリナは部屋から出ていった。

カンカンカン

階段を上がる音がしたかと思うと、メイクボックスを下げてすぐ降りてきた。


エリナは
「あなた、なかなかの美少女ちゃんと見たけど、そのお化粧がダメだめ駄目のダメ子ちゃんね」と言うと洗面所に引っ張っていって愛里の化粧を落とし始めた。

「わー何すんべ!!」

化粧を落とした愛里は凛とした可愛らしい少女だった。

エリナは手早くササっと愛里にメイクを施すと美しさの解像度が上がっていく。

愛里は手鏡を見ながら
「これが……ウチ?」と呟いた。

エリナは愛理の髪を編み込みアップにしながら
「ね、どう?」とたずねた。

「愛里ちゃんそっちの方がずっといいわ」と桜子さん。

楓ちゃんは
「あたしもそっちの方が好き!!」と叫ぶ。

愛里は恥ずかしさで赤らんだ頬を両手で隠しながら
「ま、牧野クンはどう思う?」と僕をチラ見する。

「うん、そっちの方がずっと似合ってて可愛いと思うよ」

「じゃウチずっとこれにする……
ところでこの外人さんは留学生か何か?」

エリナは
「あたしはこの牧野先生の公私に渡るパートナー」と胸を張った。

「ぱ、パートナーぁ?」と愛里。

「ja! 分かりやすく言うと奥さんってところね」

「ちょ待てよ!!!
牧野クンはウチと結婚すんべ!」

「僕と!?なんで?」

「だって……裸見られたし……
ウチは裸を見た人と結ばれるって決めてるから」

頭ラブコメか!?

「ままま牧野さんっ!
愛里ちゃんの裸を見たんですか!?」

「桜子さん、その……いわゆるポロリ事故だったんです!!」

エリナは
「あ、あたくしだってダーリンにはヌード写真送ってるし!
ほらほらほら!」とiPhoneの画面を愛里に向ける。

そこには手ブラで浴槽に浸かるエリナの姿が。

桜子さんが
「牧野さん!
どういう事なんです!
未成年にこんな写真を送らせるなんて!
こういうのが欲しいなら言ってくれたら……う、やっぱり若い子の方が……」と涙目になる。

「いやいや僕からは頼んでません!
ちゃんとほら、僕はLINEからは削除してるし」と自分のスマホを見せる。

「ダーリン!もー消すなんてÖverraskad!!信じられない!!」

「ウチは先っちょまで生で全部見られたし!」

「み、見てない見てない!
すぐ目を瞑ったから!」

「牧野クン、目ぇ見開いてたべ!」

うぐ……バレてたか。

「ダーリン!!
あたくし今から脱ぐからその目に焼き付けて!!
そしたら同点だし」

「あわわわ!エリナ止めなさいっ!
桜子さんまで何エプロン外しているんですか!
楓ちゃんからも何とか言ってよ」

「じゃあたしの勝ちね。
お兄ちゃん、あたしの全裸を見たし」

「え……いつ?」

「2年生の時、うちのお風呂が壊れてお兄ちゃんちの借りた時!」

「あ、あれは……
楓ちゃんがお風呂場から飛び出してきて……
それノーカンじゃない??」と言ってるとエリナと桜子さんがせっせと服を脱ぎ始めている!

わー!!!!

僕は事をどう収めていいか分からず思わず部屋から逃げてしまった。

アパートから道路に飛び出すと

ドン!

と誰かとぶつかった。

「牧野先生!」

ぶつかった相手は澪奈さんだった。

「わ、澪奈さん!!
すみません!」

「すみませんじゃないですよ!!!
ワケをお聞きしたくて出張を中断して戻りました!!!」

どうしたの?澪奈さん……

こんなに怒って……?

35

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