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42・プロデューサー爆誕!!

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早速カミナリマガジンの社長と編集長がホテルにやってきて、希春と僕に駆けつけ土下座でペコペコと頭を下げた。

澪奈さんも頭を下げているのを見ると心が痛い。

たまらず僕は
「ほら希春、こうやってわざわざ来て頭を下げてくれてるんだから損害賠償とかもういいじゃ無いか」と促した。

希春は
「では、このたびの損害賠償として、この藤咲 希春を『暁のファンファーレ』のアンバサダーに指名する事!
それとプロモーション活動のプロデューサーにして。
これで手を打ちましょう♪
あ、もちろん正規のギャラは頂きますけど♪」と歌うように言い放った。

僕をはじめ全員が目を合わせる。

希春は
「どうせ『暁のファンファーレ』のプロモビデオ作ってYouTubeとかに流すのでしょ?
中途半端なものを出されたらイヤだから、あたしがその総指揮を執るの♪
これを飲むのなら今回の件は訴えたりせずに不問にします!!」

社長も村井編集長もブンブンと頭を縦にふる。

社長は
「それで許してもらえるのならこちらも願ったりというか、藤咲様がプロモーションしてくださるのなら……へへぇー」と頭を下げる。

「よし♪じゃ決~~まり!!」

さすがトップアイドル……欲しい仕事はこうやって自分に有利な形で取っていくんだ……





というワケで現在、カミナリマガジンの会議室に動画製作用PCを持ち込んでプロモーションビデオの作成中。

エリナが描いた設定画を元に3Dアニメにしてプロモ動画を作っている。

僕はといえば……特にやることもなく側で座って見ているだけなんだが。

希春は挿し絵や設定画を見るなり
「凄い! フーガ世界を完璧に表現しているのね♪」とご満悦の様子。

エリナは
「jya! 当たり前でしょ!
あたくしとダーリンの共同製作だもの。
言わば愛の結晶。ま、二人の赤ちゃんみたいなものね」

希春はその言葉を無視して
「ねぇエリナ、トーアの口を動かせる?」

「……ムシカヨ……
大丈夫、いま3Dモデルに張り付けたから。
このマイクで話せば自動でリップシンクロするから」

希春は渡されたマイクに向かって
「我が名はトアー!
絶対にこの城に戻ってみせる!!」と『暁のファンファーレ』の最後のセリフを呟いた。

それは僕の想像したトアーそのもの……いやそれ以上だ!

エリナも
「ちょ……凄いじゃない!まさにはまり役ね!」と感動している。

「当たり前でしょ♪毎日ずっとなりきり音読してるんだから♪
それにトアーのモデルはあたしなんだってヒツジくんが言ってたわ」と笑う。

ビキッとエリナのコメカミに青筋が走る。

希春は手を大きく天にかざす仕草をして
「で、トアーはこうポーズを取らせてみて」と言う。

エリナはそれを見ながら3Dモデルに指示を入力する。

カチカチ ターン!
「ん……こんな感じ?」

「うーん、手をあげる前に少しタメを入れて。
で動きの最後を少しゆっくりして、こうしたら同じ動作でも大きく見えるし躍動感も生まれるから♪」

カチカチ ターン! と再生してみせる。

「överraskad! 本当!!! 躍動感が全然違う!!
さすが女優やってるだけあるわね」

「ま元の絵がいいから映えるのよ♪」

エリナと希春はクリエーター同士のなせる技なのか直ぐに実力を認めあい、仲良くなっていった。

美少女同士が仲良くしてるのは目に優しくて微笑ましいなぁ。

「Jya! そうね、あたくしあってのフーガ世界だもんね!」

「フン……ペチャパイのくせに」

「Nej! 比較の問題でしょ!
希春なんてあたくしに比べたら短足じゃ無い!
そんな胴長サンがアイドル気取りなんてヘソでティーが沸騰ピィ~よ!!」

「ひ……ひどい! エリナが煽るから言い返しただけじゃない!」

「sluta svära!! キハルからマウント取り始めたんじゃない!!」

前言撤回!

美少女同士のバチバチ状態、あわわわ僕はどうすれば……

ガチャ

楓ちゃんがティーセットを乗せたトレイを手に入ってきた。

ホッ!

「お兄ちゃん!エリナちゃん希春さん、お疲れ様!
お茶にしましょ!」

続いて桜子さんと愛里が大きなトレイを抱えて入る。

「お待たせ、給湯室お借りしてスイートポテトを作ってみました」

「ウチも手伝ったべ」

三人はプロモの一般視聴者サンプルモニターとして来てもらっていたのだ。

僕は空気を変えようと
「うわ♪ おいしそー
桜子さんは料理の天才なんだよ希春!」と大声で言った。

希春は摘まみ上げると、ひとかじりした。

「んっ♪おいしー!
今まで食べたお菓子の中で一番おいしいかも♪」

「ほらほらダーリン! こっち座って! お口をアーンして」

「ナニやってんのよ!ヒツジくんはあたしがお世話するの♪」

ガチャ

澪奈さんが入ってきた。

「どうですか進捗は?」

「んーまぁ大体こんな感じね」とエリナは作ったばかりの動画を再生した。

楓ちゃんと桜子さんと愛里、澪奈さんがモニター画面をじっと見入る。

「お兄ちゃん凄いよ!映画の予告みたいでワクワクする!」
「これが牧野さんの世界観……キレイ」
「うわースゲー!!牧野クンこれ絶対バズるって!」

澪奈さんも
「うん、これなら話題↑爆上がりね。
このペースなら早々にキャンペーン打てそう、さすが優秀なプロデューサー」と満足顔。

希春は、ふぅとため息をついて
「あとは音楽をつけるだけ……だけなんだけど……
この世界観を表現できる、そんなミュージシャンがいないのよ……
色々探したりしたんだけど全くいなくて。
それだけが残念……」と肩を落とした。
42

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