46・5号室の新住民!!!
僕は事情を説明して、取り敢えずその夜は桜子さんのお宅に真琴を泊めてもらう事にした。
チュンチュン
翌朝、真琴と桜子さん楓ちゃん、エリナと愛里がうちにやって来た。
桜子さんが説明するには、真琴は小さい頃にお父さんが亡くしたそうだ。
母親は再婚したが継父との折り合いは最悪で、真琴は中学を卒業すると家を追い出されたらしい。
頼れる親戚や知り合いもいなくて、
お父さんの形見のギターを抱えてネカフェ難民みたいな生活を送っていたという。
真琴は
「でも……桜子さんにいっぱい話を聞いてもらって落ち着きました。
本当のお母さんよりもお母さんらしいというか……初めて年上の人の暖かさを知った気がします……」と桜子さんに寄りかかった。
さすが桜子さんのママみパワー。
「それに……大好きなウサロック先生が……こんなにキレイなコだったなんて……」
「jya! マコちんよく分かってるわね!
そしてあたくしエリナは牧野ヒツジ先生の公私に渡るパートナーだからね!
ダーリン取らないでよ!」
その言葉にニコリと微笑む真琴。
桜子さんは
「それで考えたんだけど、取り敢えずこのアパートに住んでもらおうかと思って。
ほら、空き部屋の修繕もちょうど済んだし。
使わないと部屋も痛むからタダでも構わないから」と聖母さまのような笑顔で話した。
「それなら僕がアパート代は出します!
桜子さんには迷惑はかけられません。
真琴が自活出来るようになるまでは責任をもって面倒みます」
「うーん ……じゃあ牧野さんが保証人だから敷金、礼金はサービスって事で。
真琴ちゃん、3ヶ月はお家賃サービスするからね、焦らずにこれからの事を考えればいいから」
真琴は
「いえアルバイトしてちゃんとお金は払います。
どんな仕事でも構わないので早く見つけますから」
桜子さんは
「でも真琴ちゃんまだ16歳でしょ?
雇って貰える所も限られるでしょ」と諭す。
「あたしは……その……別に……夜の仕事でも構わないのです……」
胸に手を当てて不安げにつぶやく。
うーん構わないって表情じゃないよ。
僕は
「真琴はお金の事なら心配しないで。他に自活できる方法なんていくらでもあるんだし」と言った。
真琴は
「なんだか本当のお父さんが言ってくれてるみたいで嬉しい……
はい!
頑張って何かバイトを探します」と嬉しそうに決意を述べた。
「仕事か……あっ!そうだ!
僕の本のプロモビデオを手伝ってくれる作曲家を探していたんだ!
昨日、真琴の音楽を聞いてすごく僕の世界観にピッタリだから、あれを使わせてよ!
もちろんお金はちゃんと出版社から出るはずだし。
もし少ないなら僕が付け足すから」
真琴は
「本当……? 嬉しい……」と言ってうつ向いて照れるように笑った。
桜子さんは冷静に
「ひとまず家と収入はどうにかなったとして、真琴ちゃんは16歳でしょ。
学校は?」
真琴は
「その、高校に行かせてもらえなくて……本当は勉強したかった……」とうつむいた。
桜子さんは
「行く気があるなら大丈夫よ。
鈴花女学園の理事長さんが近くに住んでいるから頼んでみるね」
「え!高校行かせてもらえるんですか?」
「今年は定員割れらしいからね。
でも編入試験はあるから勉強はしないとダメよ」
楓ちゃんが真琴に
「合格したら一緒に通学しようね」と笑う。
「うん……嬉しい」と真琴は涙ぐみながらうなずいた。
桜子さんは
「あ! 愛里ちゃんも一緒にどう?」
「同い年の友達みんないなくなったから、真琴が行くのならウチも……」
「うん真琴のボディーガードにもなるし」
「よしっ!じゃあ早速5号室に入居の準備しましょうか」
「5号室って僕の隣じゃないですか? 桜子さんの隣、2号室空いてますよね?」
「女の子が一階に住んだら危ないでしょ、それに何かあれば牧野さんが隣なら安心だし」
「でも桜子さんだって一階だし」
「ママは元ヤンだから大丈夫なの」
「こ、こら楓!」
ううエリナと真琴に挟まれて暮らす事になろうとは……