番外-「銭湯(戦闘)①」27
夕食も食べ終わり、テレビなど見ながら各々和んでいる所に。
姉が何やら色々な物を抱え込みお馴染みの微笑を浮かべながら一言。
「銭湯に行こうっ」
【番外-銭湯(戦闘) ①】
刺す様な寒さに震えながら外に出る、吐く息が白い。
夜中11時となると人通りも少なく夜道を歩いてるのは自分達とさっきすれ違った酔っ払いぐらいだ。
姉の話によると、お湯を沸かす湯沸かし器が故障したため。
しばらくは銭湯通いだそうだ。
雪はまだ降らないがこの季節夜道は寒い。
そんな中手をこすり合わせながら歩くとなると現在進行形で憂鬱だ。
しかしながら寒中だというのに何故か姉や妹は上機嫌だったりする。
「ふんふふーん♪」
「そんなに銭湯に行くのが楽しみなのか?」
何時の微笑二割り増しに鼻歌と軽い足取りそんな姉の姿が不思議で思わず問いかけてしまう。
「ん~? そう見えるかななぁ~」
「少なくとも悲しそうには見えない」
ニコニコ笑みの姉の背景にはもう楽しみでたまらんとですオーラが、
姉ちゃんとしようようのOPと共に滲み流れていた。
「所で姉様、銭湯とはどんな感じの所なんでしょうか?」
「ん? 美希ちゃん行った事なかったの?」
「あれだ、あれ、家の風呂がでかくなった感じだ」
「兄さんには聞いてませんっ」
少し涙が出た。
もしかしてまだあの事を根に持ってるのか(A-4話参照)
「う~ん、大雑把に言っちゃえば風流の言った通りなんだけど、ま、入ればわかるよ」
そうなんですか、と姉の答えに満足した妹はハッと思い出したようにこちらに振り向いた。
何時もはホワホワとした表情がキッと引き締まり自分を睨みつける。
「兄さん、毎回言いますけど覗かないでくださいね」
「私は大歓迎なんだけどなぁ~」
今度は両方の意味で涙が出た。
妹は姉の背に隠れ、姉は猫みたいに擦り寄ってくる。
大歓迎ならまだいいが背中を洗ってあげるという名目で入ってくるのだけは勘弁だ、切実に。
まぁ、姉としたら単なる弟に世話妬いてるつもりなんだろうけど、こっちは思春期なんだよバカヤロー。
「頼むから一緒に入ろうとか言い出すなよ」
「えっ!? あは、あはははははやだな~」
笑ってごまかす所ずぼしか。
あんたには羞恥心というものが無いのか。
「あ~あ、昔はお姉ちゃんと一緒じゃないと嫌だーなんて言ってたのになぁ、お姉ちゃん寂しいよっ」
んな事言ってねぇっ、と否定しようと振り向こうとしたら。
「に~~い~~さぁぁぁぁんんんんっっっっっっ」
……鬼、面を剥いだ鬼がそこに居た。
その姿は紛れも無く最愛の妹であり、そして鬼だった。
本能が、体が、危険だと警報をけたたましいほど鳴らす。
美希が何故そこまで怒っているかは判らないが。
とにかく逃げよう、怒りが収まるまでーー……。
それから銭湯までの道のりはリアル鬼ごっこ化した。