B-三話「N号作戦」
――亮視点で、
「離せッ! 俺を何処に連れて行く気だ、コンクリートの檻に詰め込む気かっ」
「あ~もー煩い! わかったわよ、もう知らないからっ!」
そう言って首の襟元を放して教室の方に行ってしまった、
むむ、解放されたはずなのに何だろうかこの寂しさと言うべきか悲しさというべきか、
もやもやと晴れない感情が頭の中をとりまく、
「……ちぇ、わかったよ行けばいいんだろ後で解剖されるのも嫌だしな」
そう適当な言い訳を一人ぶつくさ言いい、立ち上がろうとしたら。
「コラっ! もうとっくに予鈴は鳴ったぞ早く教室に行けっ!」
あまり迫力に先生かとおもい逃げ出しそうになったが、
振り向いて見たらそこに立っていたのは幼女……、もといい佐々山だった。
「なんだ佐々山か焦って損した……」
「む、なんだとは何だ、失礼な奴だな君は、いやそんな事よりさっさと教室に行け」
やれやれ、宇宙人と同じことを言いやがる、
この晴天の日の下でコンクリートの檻の中、微分やら積分やらをするより、
自分の好きな事を自由気ままするほうがよっぽど有意義だ。
それを何故理解しないのか、否、理解しようとしないのだっ!
そんな不穏な思考を読みとったのか、彼女は眉を顰めている。
「よし、決めた……、今日一日は遊びに行く一万円ポッキリコースだ」
「は……?」
佐々山は一体何を言っているのかわからない、という表情をする、
しかしすぐに取り直し亮を睨みつけた。
「君はいったい何を考えているんだ、理解できん、
馬鹿なことを言ってないでさっさと教室に行ったらどうだ」
小言は無視するにかぎる、
なにか説教を垂れている佐々山を無視して玄関の方に歩き出した、が。
「ま、待て、何処に行く気だっ!」
腕を掴まれ行くことを阻止されてしまった、
しかし何だ、腕にしがみつき必死に止めようとするこの姿は……、
なにかグっとくるものがある、実にイイ。
「放してくれ、男には死ぬとわかっていてでも行かにゃならんときがあるのだ」
「何をふざけたことを……」
何とか止めようとするが体格が体格なだけにズルズルと引きずらる、
そこに何かを思い出したように亮は足を止めた。
「佐々山、お前もくるか?」
「冗談じゃない、何で私が行かなくちゃならないんだ」
「なら放してくれ、俺は遊びに行く、お前さんは教室に行くOK?」
「いいはず無いだろ馬鹿っ!」
お堅い奴だ、たぶんこいつは放課後も寄り道などせずに真っ直ぐ帰宅するタイプなのだろう、
そう思うとちょっとした悪戯心が芽生える……。
「んじゃ、お嬢様一名昼の街にご案なーい」
「待て待て待て、私は一言も行くとは言って……」
そう狼狽する佐々山の腕を掴んで、颯爽と太陽が昇る真夏日の街にくりだすことにした。
何か大事な事を忘れているような気がしたが、気のせいだろう、
なんせ天気がいいのだ、こんな日に外に出て馬鹿をしないのは社会の歯車になる、
佐々山が何か言ってるが、無視の意向だ、by脳内会議より。