――姉視点で、
トイレに行くと言い残し弟は教室を出てしまった、
たぶん美希の所に行ったのだろう、
まったく弟のシスコンぶりにも困ったもんだ、
君への愛なら誰にも負ける気はないというのに。
「おらー、席につけー」
おっと、担任の先生がきたみたい、退散退散と。
廊下を出たが、朝礼が始まってるので当然生徒の姿は無い、
のんびりと教室を横目に歩く、自分の担任は来るのが遅いから、
このペースでも問題はないはず。
そうぷらぷら歩いていると、いるはずのない生徒の人影が、
遅刻でもしたのかな?
どうやら相手もあたしに気づいた様で、近づいてきた、
「おろ? 雪ちゃんじゃない、どしたのもう朝礼始まってるよ」
「あ、奈々さん、亮の奴見ませんでした?」
「んやぁ見なかったなぁ、また亮君逃げたのかい」
そうなんです、と言い雪ちゃんは肩を落としてしまった、
こりゃ相当ショックみたいだね……。
よし、ここはお姉さんが相談にのろうじゃないか、
1現まで時間はあるし、ちょうどいい。
と、言うことで渋る雪ちゃんを無理やり連れて、
サボりをするならココ、屋上にやってきた。
「奈々さん、本当に大丈夫なんですか~」
普段は立ち入らない場所だけに雪ちゃんが心配そうな声を出す、
「大丈夫大丈夫、あたしたまぁに、ここでお弁当食べるし」
「そうじゃなくて……」
諦めたようにうな垂れてしまった。
何か変なことでも言ったかなあたし?
立ったままじゃ落ち着かないので適当な場所に腰を下ろす、
それを見てか雪ちゃんもその横に座った。
「さて、お姉さんに何があったか話してごらん」
「えぇっと、さっき言った通り亮が帰っちゃったみたいで……、
その……、亮が帰ちゃったのは私のせいなんですっ!!」
そう言い切ると雪の顔は今にも泣きそうだった、
「私が、もう知らないって言ったから帰っちゃったんです、
後から来ると思っていたんですけど……」
言い終える前に俯いてしまった、
「うーん、でも亮君が途中で帰っちゃうのは何時もの事だし、
そんなに思いつめなくてもいいんじゃないの?」
「でも……」
あーはいはいはい、なるほどなるほど、
つまる所、あなたがいなくてさびしーのって奴なのかな
「いやぁ、亮君も愛されてるねぇ~」
キュポンッという擬音が聞こえそうなぐらい雪は顔を赤くした、
その姿がなんとも可愛らしくて思わず抱きしめそうになる。
「わわわ私はただ、その、えぇっと、亮が少しでも皆と馴染めるようにゴニョゴニヨ……」
そう腕をパタパタして説明されても、可愛さが倍増するだけで、
あぁもう、可愛いいなぁちくしょう、
「はわわわ」
気がついたら雪ちゃんを抱きしめていた、
う~ん無意識とはいえ自分が恐ろしい。
「大丈夫、彼は君の好意を無碍にするような男の子じゃないよ、
彼のああいう奇抜な言動や行動は全て照れ隠しなんだよ、
言っちゃえば愛情の裏返しかな?」
雪ちゃんは腕の中で下を向いて沈黙している、
どうやら照れてるみたい、耳まで真っ赤かだ。
「だからね今日はきっとたまたまだったんだよ、うん」
小さく、でもはっきりと「ハイ」と聞こえた、よしよし。
これで少しは楽になったかな?
「でも、慢心しているとポっといきなり出てきた女にとられるちゃうよ」
そうおどけた様に言うと、彼女はムムムと渋い顔をした、本当にわかりやすい子だ。
「まぁそんな事にならない様に日々の努力を怠らないようにしなくちゃね、
ちなみにあたしの一番のおすすめ知りたい?」
「是非っ!!」
目を輝かせながら身の乗り出してきた、
「それはね」
「それは!」
少しだけ焦らす、
「フフ、それはね―――だよ」
その単語を聞いた瞬間の狼狽振りはというと、
見てるこっちも恥ずかしくなるぐらいだったとか……。