その男の顔をうまく思い出せなくなっている。安アパートの中で、隣室に聞こえているであろう喘ぎ声をあげながら、際限なく交わりあったというのに。
「俺の話を聞いているか」とよく言われた。私は返事をするのも面倒になってある日「聞いてない」と正直に答えた。すると男は「お前に必要なのは俺じゃなくて、俺のちんちんだけなんだろう」と怒り始めた。私もつい「そうよ」と正直に答えてしまった。
男はちんちんを置いて出ていった。
以来私はちんちんと暮らし、まんまんに挿入したり添い寝したりして過ごしている。男と暮らしている時には煩わしく感じていた会話も、言葉を話さないちんちんと過ごしていると懐かしくなってきてしまう。
「何が食べたい?」そう聞いてもちんちんは答えない。遠くで男が食べる食事から栄養を受けているようで、精液を出し過ぎてしょんぼりすることはあっても、倒れて動かなくなることはない。おしっこに行きたい時は私をつんつんとつついて催促してくる。最初のつんつんはてっきりセックスしたい合図だと思って、撫でたり舐めたりしていたら、部屋におしっこをぶちまけてしまい大変だった。
たまにはちんちん以外も抱きたくなり、行きずりの男を連れ込むこともあった。そんな時のちんちんは自主的にクローゼットの中に隠れたりもする。ドアの隙間からちんちんの視線を感じることもあった。ちんちんの視線ってなんだ。漏らしたおしっこが涙に見えた。
一時ほどまんまんにちんちんを挿れなくなっていたある日、風邪気味になって会社を早退した。いつもなら帰らない時間に家に帰ると、ちんちんが他のちんちんと絡み合っていた。「浮気かあ」私も人のことは言えないので、責めるつもりはなかったのだが、二本のちんちんは慌てふためいていろんな汁を出していた。
以来、二本のちんちんと私は暮らしている。どちらが元々一緒に暮らしていたちんちんだったか分からなくなっている。どっちでも良くなってきている。二本で協力して料理を作ってくれるようにもなった。だいたいしょっぱい。