はぁはぁ。
私、どうしてこんなに息が荒くなってしまうのだろう。
身体は萌える新緑のようなみずみずしさに満ちている、それなのに。
わかっている、わかっている。それは、あの日が刻一刻近づいているから。
女の子が、女の子であることを全身で表現する革命的な日。
二月十四日。
大人と子供の中間領域に位置する高校生であるがゆえに、ある種神聖な祭典だった。
それが私の心を苦しめる。伝えたい気持ち、届かぬ想い、現実・秩序という名の壁。
わかっていても、あの人のことを思うと真っ赤に焼けた鉄のように胸のあたりが火照ってゆく。
女子の多くははみんな好きな人のことを想いキレイになりたいとファッション雑誌を読みふけっている。でもあの方は女子高生には似つかわしくない難しそうな新聞を睨んでいる。いや、見ているのは新聞じゃあない。もっと先を長い目でみているのではないか。
少し変わっているからクラスでも目立つ存在だけど、二月十四日とは無縁といった顔して飄々としているであろう。
そういう私も無縁。
……無縁なはずだった。
あの日が訪れるまでは。