駐車場からの階段を下りて、ガムテープで補強されたガラスの扉を開く。
人々が行き来し、屋台で食事や買い物をする、騒音と熱気に包まれた光景が広がった。
だが俺はそれらに特別な思いを持たず、先ほどの小さい屋台へと足早に向かう。
一分ほど歩くと、天井の青いシートに、そこらで拾ってきた木材の残りを組み、
そして地面に布だけ引き、その上に商品を並べている、なんとも貧相な店の前へ出た。
さらにその奥にはこれまた、布きれの様な服を着た貧相な店主が座っている。
頬は痩せこけ、髭や髪は伸び放題、辛うじてアジア系だという事だけ解る。
「今日は三本で」
俺は、その店に並んでいるジャンク品の機会類に一切興味を示さずに、
三本の指を立てながらそう、店主に伝える。店主も俺の顔を確認すると、
何時もの様にまた後ろをゴソゴソと探り始めた。
「デッカードさん、二本で十分ですよ」
「いいから、三本欲しいんだよ」
「二本で十分ですよ」
「三本だ」
ニ本で十分なのになあ………などとブツクサ呟きながら、
店主は店の奥から、真っ黒なVHSテープの箱を取り出す。
俺はそのふて腐れた様子に少々気分が悪くなったが、
目の前に欲しい物があるので我慢した。
「今日のはどんな?」
「それは中身を見てくださいよ、私ら、
どこで目が光ってるか解らないんですから」
「わかった、わかったから」
俺はポケットの中からクシャクシャの紙幣を取り出して渡すと、
三本のテープを受け取って、そのまま足早に駐車場へと戻った。