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<文化祭編>第6時間目〜直前〜

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「さぁ、ついたよ。……本当に大丈夫なのかい?」
「はい、ここまでありがとうございます」
「これ、もって行って。大事な用事が済んだらかけてきてね」

その人は小さな紙を取り出した。そこには電話番号と住所などが記されていた。
交通事故の後始末とか色々だろう。新しく自転車も買ってもらわないと。

車から降りると再び足が痛むのが感じられた。だが、こんなことで痛がっていてはいけない。
今から自分は演劇をするんだから、これくらいじゃへばれない。
嘔吐感や疲労感などが襲ってきてはいたが、すっかり収まってしまった。
焦点も合っているし、右足を除けば健康そのものだろう。


思い切り扉を開け放つと、そこには暗い雰囲気が漂っていた。
私はみんなの視線を集めて恥ずかしかったが、今は仕方が無い。私のせいなんだから。
その瞬間、暗い雰囲気が一気にぶっ飛び、わっ、っと大きく沸き上がった。

「瑠奈っ!どうしたのその服装……」
「ちょっと転んじゃって――ごめん、足挫いたから衣装持ってきて」
「大丈夫なのか?高岡」
「瑠奈ちゃん……無理しないほうがいいよ」

みんなに心配されるなんて……これじゃ意味ないじゃない。
私は一人一人、その役の衣装に身を包んだ友人たちを見渡した。
その眼は安心しているというよりかは、心配しているといったような眼だ。
私はいい友達を持ったんだな……心からしみじみそう思った。

「着替え手伝ってあげる……さ、時間が無いよ」

私はその好意に甘えて、手伝ってもらうことにした。

私たちの発表は、午前のスケジュール。全生徒と外部の客が体育館に集まって行われるらしい。
今回の体育館での発表クラスは2~3年を併せて6クラス。各学年6クラスあるから半々と言った所か。
体育館での発表をしないクラスは、午後からの出し物となる。
専ら食べ物関係が多いのだが、一体何があるのだろうか。楽しみだ。
それにしても一番不憫なのが1年生である。入学してから3ヶ月しか経っていないことから、見学しかないのである。
確かに慣れてないとかバタバタしてるとか理由はあるのだろうけど、何かやらせてあげてもいいと思う。
あ、そうそう。ちなみに私たちのクラスの発表は4つ目。
綾香からの情報だと、今は3つ目らしい。かなりギリギリだったみたいだ。
と、こんな説明をしてるうちに着替えが終わった。

「恥ずかしいなぁ……おい」
「いいじゃん、似合ってるよ~」

鏡の中にはいかにも宝●劇団の男役の人みたいなやつが立っている。
キザそうな黒いスーツに、頭には真っ赤なリボン。明らかにおかしいだろ。
女役なのになんでこんなスーツなんだよ。
美樹はスカートであんなに可愛らしいのに……。

「なんかカッコイイな。似合ってるかもな」

剣崎君……嘘でもそういうことは言っちゃダメだよ……。うぅ、泣けてきた。


「今から私たちのクラスです!みなさん、気を引き締めていきましょう!」

先生の熱のこもった声に、クラス全体で大きな気合の塊が声となった。

「よし……やってやる。成功させるんだ――」

私の呟きは周りのうるささにかき消されて、時間とともに消えていった。
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