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<文化祭編>第5時間目〜不屈〜

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「ね~知ってる?校長先生が生徒に体罰したってPTAと言い争ってたの」
「へぇーそうなんですか。校長は昔の教育を引きずってますからね」
「そうなの。校長は教育の一環だとか言って体罰と認めない。でも、生徒の親御さんは猛烈に反対してる」
「そこらへんが曖昧ですからね……」
「でも、その生徒には痣ができてたらしいの。けど、それは体育の時間にできたものかも知れないって……」
「体罰?までの経緯ってどうなんですか?」
「文化祭で浮かれてたんでしょうね、その生徒が悪ふざけしてガラスを割ってしまったんです」
「せっかくの文化祭なのに、校長も気の毒ですね」
「まぁ文化祭だからってのもあるよね。気が緩んだって言うか」
「それにしても……瑠奈来なかったわね」
「たぶん、緊張して寝れなかったんでしょうね。きっと寝坊ですよ」


ペダルを踏む足に思いっきり力を入れる。久々の自転車だが、疲れたなんていってられない。
昨日はめちゃくちゃ緊張して寝れなかったから、台本をずっとチェックしていたらいつの間にか寝てて……。
というか、寝坊したのよ!簡単に言うと!
背中にびっしりと掻いている汗がなんとも気持ち悪い。今すぐこんなことは止めたい。
しかしバスは駅を経由して行くから、寝坊したのに乗っていたら間に合わない!
ただえさえ、今日は大切な日だって言うのに!
私は焦る気持ちを抑えて、必死にこぎ続けた。
真正面からぶつかってくる風と必死に戦いながら、ただ闇雲に足を動かした。
学校に着いたら髪の毛セットし直さないと……剣崎君にわらわ――

その瞬間、世界が大きく流転した。体が水に包まれたような無重力感に支配される。
次に右足から全身にかけての激痛が走り回る。何かに思いっきりぶつかった感じだ。
踏ん張って痛みを和らげようとするが、足が浮いているからそれもできない。
そして最後に叩き付けられる感じがし、何かの上に倒れこんでいる。
目の前が暗い。何も見えない。口の中が鉄の味で染められてきた。
気分が悪い……今すぐにでもケーキを食べて口直ししたいぐらいだ。
……誰かの声が聞こえる。大きな声で誰かに話しかけている。
きっと私じゃない誰かに。

――行かなきゃ……寝てる場合じゃないよ

私はまだ痛む足をかばいながら立ち上がろうとするけど、なかなか上手くいかない。
呼吸が乱れているのが分かる。平衡感覚さえ失っており、目の焦点が合わない。

「きみぃっ!大丈夫か?」

目の前でそんな声が聞こえたような気がした。視界はぼやけているが、そこに人はいた。
私はバランスを崩し、その人にもたれ掛かるような感じで倒れこんだ。

「すまなかったね。今すぐに病院にいこう!」

軽く肩を持たれ、私は完全にその人に体を預けていた。え?ちょっと待って。病院?
私はそんなところに行っている時間など無い。いち早く学校に行かないと。
綾香が……剣崎君が、クラスのみんなが私の事を待っているんだ。私に代用は無いんだ!

「聖華高校へ車を出してください……」
「な、何を言ってるんだ!?そんな状態で学校に行くというのか?」
「お願いします。私にはやらなきゃいけないことがあるんです。――待ってる人が居るんです!」
「……わかった、じゃあ学校へ行くよ」

私はそこまで聞くと急に体が軽く感じた。重くなった体を引きずることも無く、車に乗り込む。
そして、車は学校に向かって出発した。いける……これなら本番までには間に合う!
9

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