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<文化祭編>第8時間目〜Memories"中編"〜

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そして舞台は一転して暗くなる。場所が変わるための演出だが、正直くらいから私たちも動きにくい。

『そして、スクーロ国では』

「国王様、ムルーナ国より電報が返ってきました」
「ふむ、ご苦労」

そういって部下から手紙を受け取っているのは、荘厳なマントをはためかせている倉西君だ。

「な……何だと」
「どうしたんです?父上」

王子役は綾香だ。髪の毛が長い王子ってどうもなぁ……。
控え幕のところから見てても、そんな王子は居ないだろうと思えてくる。
と、王様は手紙をバラバラになるまで破り、大きく空へ投げ出した。

「ふざけるな……あんな弱小国が我々の申し込みを拒否しただと!?」
「そんな……エミールちゃんと結婚したかったのに」
「大臣!大臣はおらぬか!?」
「はっ。おります」
「攻め入るぞ!ムルーナ国へ!」
「ちょっと待ちください。父上」

顔まで真っ赤にしている王様を、王子は冷静に呼び止めた。

「私にいい作戦があります。この戦の指揮は私目に取らせてください」
「お前がじきじきに取るのか……よかろう!任せたぞ、ジルーガ王子!」
「はっ!ありがたき幸せ」
「大丈夫だジルよ。しっかりとスパイは送ってある。我々の勝ちに違いは無い」
「思い知らせましょう。この国……スクーロ国を敵に回したことの重大さを!」

『そして、再び舞台はムルーナ国に戻る』

その瞬間にパッとライトが消され、すぐに私にスポットライトが当たる。

「やはり戦になることは避けられなかったか……」

私のこの独り言は、次の舞台セットのための時間つぶしでしかない。

「でも、これもエミール様の想い。好いてない人と結婚するなんて……!」
「私は絶対に護ってみせる。幼い頃から良くして下さった国王様のため……エミール様のために!」

そして舞台の電気がつき、慌しく動き回る兵士たちが映し出された。
聞こえる会話は戦のことしかない。噂によると、今日敵が攻めてくるらしい。
と、その時。
大きな音が鳴り響き、城がビリビリと揺れる。地震か?とも思ったが、やはり違う!

「スクーロ国が攻めてきたぞ!」
「やはり……爆弾か!」

私は爆発のあった方へ走り出そうとしたが、足を止めた。
兵士たちがそっちに向かっているにもかかわらず、ロアは逆方向に走っている。

「なんで?……あ、そうか!」

私も押し寄せてくる兵士の波を押しのけ、彼の向かった方へと走り出した。

「今の爆発は兵士をひきつけて警護を薄くするため!だから敵は……」

王室につくと剣と剣とがぶつかっている金属音が鳴っていた。
兵士があちこちに倒れている。やはり、敵の目的はお嬢様だ!
と、動く人影を発見したから追いかけた。すると、相手は気付いたらしく歩を止めた。

「ほう、頭が切れる兵士が居たもんだ」

そこには口をガムテープで止められており、手を縛られているお嬢様を盾にする様に男が立っていた。
お嬢様の瞳にはいっぱいの涙が溜まっていた。その表情は、早く助けて!と叫んでいるようだ。

「お嬢様を離すんだ!」

私は腰に下がっている細身の剣を鞘から抜き取り、その男に突きつけた。
と同時にお嬢様の体がピクっと反応するのが分かった。

「ジルーガ王子、そいつの相手は私がやりますのでお逃げください」

どこかで聞き覚えのある声が耳に届いた。と、その瞬間、背後に鋭い殺気を感じ振り返ると……。

「ロア……?」

レイピアを片手で私に向かって突きつけるように構えているロアがそこに居た。
頭の中が整理できない……!なんでロアが?

「ロア?ああ、コードネームか。ライ、さっさとやってしまってくれ」

ライと呼ばれたロアは深々と礼をし、鋭い目を向けてきた。
――本気だ!

「やはり気付いたか。ナルキア」
「ロア、どういうつもり?」
「俺はスパイだったのさ、スクーロ国のな」
「!……そんな」

一気に剣を持つ手の力が抜ける。いつも一緒に励ましあってきたあのロアが?

「さ、王子。早くお逃げください」

その言葉に私はとっさに反応し、扉に近づかせないように間合いを取った。

「……すぐに終わりますから、見ていてください」

王子と呼ばれたやつは、お嬢様のガムテープをはがした。

「さぁ、お別れの挨拶を言うがいい」
「――ルキっ!」
「汚らしい手でお嬢様を触るな……」
「さぁ、今日で国家が一つ滅びる。俺はその立会人となる!」
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