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<文化祭編>第9時間目〜Memories"後編"〜

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「まず聞きたいことがある……王様をどこへやった?」
「ふっ、そんな国の主を生かしておくと思うか?」

いつも見てきたロアの笑い。裏があるように思えて仕方なかった笑顔も、今なら納得できる。
これで、この国はもう将来的には終わりである。けど、お嬢様を渡すわけには行かない。
お嬢様が望まない結婚なんて……私が許さない!

「ロア……あんたがやるなら私も手加減しないわよ」
「手加減?俺がいつお前に負けた?」

不敵に笑い続けるロアを横目で睨み、ジルーガと呼ばれた王子の動向を探る。
どうやら動く気配は無く、じっとしたままだった。
正直そうじゃないと、二人を同時に相手しているみたいできつい。

「その減らず口を終わらせてあげる!」

私は力の限り地を蹴り、細身の剣を振り上げ空を斬る。だが、彼の姿はもうそこに無く虚しく空ぶるだけだった。
耳元で空を切る音が聞こえた。くる!
私は体を捻ってその一撃を辛うじてかわす。残念そうなロアの顔が目に入る。

「さすが兵士の中でもトップクラスだな。女にしとくのはもったいないな」
「そりゃどうも。そっちこそ、さすがナンバーワンだよ」

それだけの会話を交わすと、再び斬りに掛かった。今度は単調な斬りだけでなく、追撃の突きも繰り出した。
しかしロアは剣で受け流し、そのまま川の流れの様にカウンターを決めてくる。
服が数ミリ斬れた。あとわずか数センチ前に居たなら、体は真っ二つだっただろう。
しかし、それで怯んでいるわけにはいかない!私は勇猛果敢に攻めた。
だが、次の瞬間。私の剣は手から離れて宙を舞った。
後ろの方で地面と金属がぶつかった音がした。――終わった。
私の喉下に突きつけられたその剣は、冷酷なまでに鋭かった。

「勝負あったな。投降するなら命は保障する」
「バーカ。誰が降参するか」
「……なら終わりだな」
「私のあだ名を忘れたか!二刀流のルキってね!」

私は素早く懐から短剣を取り出し、鞘を払い捨て投げつける。それまでの所要時間は約1秒。
勢い良く放たれたそれは、ロアの剣が私の喉を刺すより早く、彼の胸に突き刺さった。

「ぐ……まさか」

そのままロアは倒れて動かなくなった。私は一息つくと体中の緊張を解いた。

「ルキっ!」

とっさにロアの剣を取り上げ振り返る。が、もう遅い。
下腹部にものすごい熱を感じる。目の前にはあの王子が笑っていた。

「面白い勝負だったよ」
「く、そ」

私の放った最後の一振りは全く届かなかった。だが、最後の力を振り絞り一突きを浴びせる。
剣先が胸に沈む。その場所から鮮やかな赤色の液体が流れ出した。

「……見事だ。一人で二人を討つなんて。だが、もうじき父上が来る。お前たちも終わりだ」

それだけ言い残すと崩れ落ちた。私も限界に達し地面に膝を折る。

「ルキ、ルキっ!」

お嬢様が目に涙をためたままで駆けつけてくる。私は手を縛っている紐を切り、お嬢様に抱きついた。

「無事でよかったです……本当に」
「ル……キィ」

お嬢様の言葉は嗚咽となり、はっきり聞き取れなくなっていった。
目が霞んでき、なんだか無性に眠たくなってきた。体の感覚も麻痺してきてるし。

「すみません、私はここまでのようです」
「私は一体どうすればいいのよ!死なないで、ルキ!」

泣きじゃくるお嬢様に私は優しく頭をなでて、そっと呟いた。

「私はいつまでも貴方の中で生き続けていますよ」

そこで意識が途絶えた。手にも力が無くなり、重力に従いダラリと落ちる。

「いやぁぁぁぁぁ!」

徐々に暗くなる照明。
完全に暗くなり、数秒したところでエミール皇女が一人佇んでいる姿がライトアップされる。
何かを思い出しているような懐かしむ表情で空を仰いでいる。瞳には大粒の雫が溢れている。

「ナルキア……あの話の続きはいつ話してくれるのですか?」

そして足元の墓石を見つめ、そう呟いた。

――そして、幕は閉じた。
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