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第4話「ワガママ女ミク」後編

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第4話『ワガママ女ミク』後編

「ちくしょー。どこ行きやがったんだ」
 さすがに大声でミクの名前を叫ぶわけにもいかず、俺は一人スーパー内を歩き回ってミクを探している。
 幸いにも今日のスーパーは非常にお暇なようで、俺はまだ客を2、3人しか見ていない。この2、3人の客も全員パソコンなんて使った事もなさそうなお年寄りばっかりだ。
 これならミクが見つかって騒ぎになる事もないだろう。
 しかしどこ行ったんだ。
 お菓子売り場、惣菜売り場、パン売り場、飲料売り場。
 即席で食べられる商品がある場所はすべて回ったがどこにもミクの姿が見当たらない……。
 食べ物以外にミクが興味を引くものなんてここには売っていない。
 さすがに生肉なんて食べやしないだろうし、残るは野菜売り場のみだ。

「いた……」
 最後の最後に当りを引くなんて俺はついていないな。
 ミクはきょろきょろと辺りを見回しながらゆっくり歩いている。
 俺はその後をミクに見つからないようゆっくりと追いかける。
 こんなに探させやがって、少し驚かせてやろう。
 なんて悪巧みをしていると、ふとミクが立ち止まった。
「おいおい……」
 ネギ……。長ネギの前で立ち止まりやがった……。
 律儀にそんな設定が反映されてるのか? 別にネギが好きでも問題はないんだが。
 じっとネギを見つめていたミクはおもむろにその中の一本へ手を伸ばした。
 ヤバイぞ。食うかもしれん。ミクが俺との約束を覚えているかなんて怪しいもんだ。
 すこし急ぎ足、いやかなり急ぎ足でミクの元に向かったおかげか、俺がミクの元へついた時もネギを握って眺めているだけの状態だった。
「探したんだぞ。勝手に歩き回らないでくれよ」
 ミクはネギを握ったままこちらをチラリと見てプイッと視線を逸らした。
「なんだよ……。まだ怒ってんの?」
 ミクは拗ねた表情でこれ見よがしにさらに視線を逸らす。
 なにがなんやら……。
「わかったって。好きなもん食わしてやるから機嫌直してくれ。な?」
 俺が思いっきり甘やかした態度で言ったお陰か、拗ねた表情はそのままにミクはゆっくり頷いた。
「んで、ネギが食べたいのか?」
 俺の質問にミクは不思議そうな顔をしている。
 なにが不思議なんだ? 食いたいなら頷けばいいし、食いたくないなら首を横に振れば良いじゃないか。
 ミクは俺に問い掛けるように、ネギを指差し首を傾げる。
「そう。ネギ。ネギが食いたいのか?」
 再びミクはネギに視線を戻し不思議そうな顔をしていた。
 なんでこんなに不思議そうな顔をするんだろうと俺が考えているのも束の間、なんとミクはネギを勢いよく頬張りやがった。
「な、なにしてんだ!」
 あまりにも不意な出来事に、ついついミクの後頭部を引っ叩いてしまった。
 俺に引っ叩かれた衝撃でミクは手にもったネギに顔面から突っ込み顔中がネギだらけになっている。
「食べちゃだめっていっただろ!」
 ミクは何が起きたかわかっていないような表情だ。
「なんで食ったんだよ!」
 未だにミクは何が起きたかわかっていないようだ。
「わかった、わかったって。過ぎた事は仕方がないからゆっくり訊くぞ?」
 ミクは困惑した表情のままゆっくりと頷く。
「勝手に物を食べないって約束したな?」
 ミクはこれにも頷く。
「んじゃあ、なんでネギを食ったんだ?」
「…………?」
 なんでそんな顔で俺を見るんだ。自分が悪いと思ってない表情じゃないか……。
「ネギを勝手に食べただろ? 食べないって約束したのに」
 この言葉を聞いた途端ミクから「心外な!」って言葉が聞こえてきた。
 実際にはそんな事一切喋っていないのだが、表情とリアクションと俺を指差すポーズを見ると、俺の妄想補完によって脳みそに直接聞こえてきてしまった。
「俺が食べて良いなんていったか?」
 ミクは勢いよく頷く。
「…………」
 俺は食べていいなんて絶対に言っていない自信がある。ミクの脳内補完で食っていい事になってしまったのか。本当に訳がわからない。
 まあもういいや……。
「わかったよ……。とりあえずこれで顔を拭け」
 そういって俺はポケットからハンカチを取り出しミクに手渡した。ミクはそのハンカチで顔を拭いているんだが、俺のコートがネギの汁まみれだ。恐らくハンカチもネギまみれになるんだろう。
 食べ物を粗末にするのはあまり好きじゃないが、このネギは捨てるしかないな。あとで店員に正直に言って代金を払おう。
「拭き終わったか?」
 ミクが頷いた事を確認して拭き終わったハンカチを受け取ったんだが……。
「……ネギ臭え」
 俺の何気ない一言を聞いたミクは顔を真っ赤にして驚いた表情をしている。と思いきや即座に俺の手にあるハンカチを奪い取りまたしても顔をそっぽ向けて歩き出した。
 別に馬鹿にしたわけじゃないんだが、どうやらこの言葉はミクの気に障ったらしい。俺はデリカシーのない男だからな。言ってからじゃないと気付かない。
「まて、ミク」
 今度は逃がさないぞ。
 俺は半ば無理やりにミクの手を掴み続けて言った。
「ごめんって。俺が悪かった。ミク自体は別にネギ臭くないから、一人でどっか行かないでくれよ」
 無理やり歩みを止められたミクは、振り向くと共に俺が掴んでいる手を激しく振り解いた。
 もしかして、あの時の入り口のって手を繋がれるのが嫌だったのか……?
 そうだとしたらなかなか可愛らしいところがあるじゃないか。
 なんて呑気な事を考えている俺とは違い、ミクはどうやら怒っているらしい。顔が赤いままで腕を組み俺の方とは反対の方向を向いている。
「な、なんか、ごめん」
 なにも反応してくれない。
「頼むから許してくれよー。マジで悪気なんてないんだって。手に触れられたくないならもう二度と触らないようにするし、もちろんネギ臭いなんて二度と言わない。だから頼む! 許してくれ!」
 そう懇願する俺をミクはゆっくり疑念の目で見つめる。
 どうにも俺はミクの喜怒哀楽の怒哀の表情が苦手だ……。この目は怒哀に疑まで混じってるせいで俺には非常に辛い眼差しだ。
「ゆ、許してくれない?」
 ミクは俺に向けていた疑念の目をまたしても逸らした。もう俺にはこのリアクションが何の意味を持っているのかはさっぱりわからない。
 しかしまた歩き出すんじゃないかという俺の心配をよそに、ミクは俺へと手を差し伸べた。
「えっ? 許して……くれるのか?」
 ミクはそのままの姿勢で頷いている。この手を取れってことなのか?
 しかしここで尋ねるのも紳士的ではない気がする。
 間違ってたって構わないさ。
 俺がミクの左手にそっと右手を乗せると、ミクは俺の手のひらを握り締め歩き出した。
 スタスタと俺の手を引き歩いてる様子から見て、どうやら一応は許してくれたようだ。
 正直言ってあらためて意識して手を繋いでいると俺も恥ずかしさを感じた。
 だけどミクがだんだんと楽しそうな表情に戻っていき、二人で店内を歩き回っているとそんな恥ずかしさなんて自然に何処かへ消えていった。
 言葉はないけれど晩御飯を何にするかなんていう相談を二人でするのは俺だって本当に楽しかった。
 レジのお姉さんがぐちゃぐちゃのネギやミクを奇異の表情で見たり、周りのおばあさんがミクの髪を見て「やだ、なにあの色」なんて悲鳴じみた声を上げてはいたが、俺にとってはそのおばあさんの紫ヘアーの方がよっぽど意味がわからないし、なによりもミクといるとそんな事はどうでもよく感じた。
 別に恋やなんかの異性に対する感情が俺を楽しませているわけじゃなく、ただ単純に心が純粋なこのボーカロイドに振り回されて、意味のわからない我がままを必死で聞いてやる事が楽しかったのだ。
 今まで親友と呼べる友人なんていなくて、ただ流されて生きていた俺にとって新鮮だったってのもあるかもしれない。

 スーパーでの買い物がここまで楽しかったのなんて初めてで、少しだけ名残惜しく感じたりもしたが買い物を済ませた俺とミクは駐車場に戻って車に乗り込んだ。
 後部座席に荷物を乗せてエンジンを掛けた俺はゆっくりと車を発進させてスーパーの敷地内から出る。
 次は昼飯を買うために家の方面にあるマクドナルドへ行くつもりだ。
 しかしなんだ。なにか変だ。ミクの方から……。なんかくさ……。
「ネギくっ、…………」
 ヤバイ。辛うじて最後まで言う前に気付けたが、すでにミクは非常に怒っている。
 きっとコートについたネギの汁から匂って来たんだろう。しかしミクに対して言ったわけでわないとはいえ、二度と言わないなんて言ったからにはこの発言は失言の極みだ。
 ミクは俺を思いっきり睨んでいる。なにもそんな……昭和のヤンキーみたいな目で……。
「ご、ごめんって。忘れてたんだよ。もうコート脱いでいいから許してくれ」
 ミクは顔を俺から逸らしたが怒ってはいないようだ。たぶん俺に悪気がないって事はわかってくれてるんだろう。
 コートを脱いだミクは行きとまったく同じでイヌのように外を眺めだした。
 こうやって外を見るのに夢中になってくれていればさっきの俺のネギ臭い発言もいつの間にか忘れているだろう。
 今度はコートを着ていないが、よく考えて見ればミクがミクだとわかる奴は顔と髪を見れば気付くからな。いまさらコートなんて関係ないのだ。

 そうこうしながら無事にマクドナルドのドライブスルーでハンバーガーを購入した俺は次の目的地の方向へハンドルを向ける。
 ビックマックは食べにくいぞという俺の忠告を無視したミクはポロポロとレタスをこぼしながら、必死で昼食を取っている。
「こら! 落ちたレタスを手で掴んで食うな!」
 こんな事を言ってたら自分がミクの保護者か何かなんじゃないかと思ってきてしまう。保護者と言ってもミクは俺の言う事なんてほとんど聞かないから名前だけの保護者だけど。
 しかしミクは何を考えているのかわからないな。
 マクドナルドでメニューを選ぶときも運転席にいる俺の上に乗ってハンバーガーを選んでいたが、手を繋いでいるのは恥ずかしいけどあんなに近づくのは恥ずかしくないのか?
 俺は上に乗られる方がよっぽど恥ずかしいけどな……。

「ほら、ついたぞ」
 マクドナルドからは三十分もかからず到着した。俺の家からは歩いて五分もかからない程の近所だ。
 ミクはここがどこだかわかっていない。
 住宅地にひっそりと佇む小さなマンションのテナント。古ぼけた看板を掲げただけの小さな店。
「ここは古本屋だ」
「?」
 ミクは古本屋に連れて来られた理由がまったくわかっていないのだろう。
「まあいいから、入ろう」
 理解できずに頭の上にはてなマークを作っているミクを促し、俺は店内に入った。
 この店を選んだ理由の一つはミクの正体を見破るような人間はここには来ないと云う事。
 ここは漫画なんか置いてなくて、日焼けした文庫本やら年季の入ったハードカバーの純文学ぐらいしか在庫がないような店だ。
 こんなところにはまず間違いなく若者はこない。事実、俺だって中に入るのは今日が初めてだ。
 しかし理由はそれだけではない。
 この店だからこそ取り扱っていそうな本を買うことが今日の目的なのだ。
「すみません。詰将棋の本って売ってないですか?」
 店内のレジに座っている店主と思われる初老の男性に声を掛ける。
「あるよあるよ。そこの左奥の下の段だよ」
 俺は簡単な礼を言いミクと共に店主に指差された場所へ行く。
 店主の記憶は間違っておらずそこには様々な詰将棋の問題集が並んでいた。
「多少難しい漢字があっても読めるか?」
 ミクは詰め将棋の本に気付いていないようで、未だ不思議そうな顔をしつつ頷いた。
 俺は並べてある中の一冊『楽しむ詰将棋第一弾』を手に取りミクに広げて見せた。
「これは詰め将棋って言うんだ。ほら、これが問題でこれをここに書かれてある通りに――」
 俺は本を片手に持ち、もう片方の手で問題を指差しながら説明する。ミクは俺が持っている本を覗きこむような形で真剣に聞いている。
 俺が説明を終わる前にはすでに、ミクは詰将棋とは何かを理解しいるようだった。
「意味はわかったみたいだな。んじゃあどれにするか選びなよ。買ってあげるから」
 よっぽど嬉しかったのかミクは俺に対して満点の笑顔を見せてくれた。
 さっき怒哀の表情が苦手だと思ったが、どうやら俺は「喜」「楽」の表情も苦手だ。心がくすぐったくなって少し恥ずかしい気分になる。
 本を出し開いては次の本を取って見ているミクは、喜んでくれているんだろう。
 ミクが出しっ放しにしている本を片付けながらも俺はミクが喜んでいる事に安堵した。
 どうやらすべての本を確認し終えたようなので俺はミクに声を掛ける。
「どうだ? 良い本見つけた?」
 俺の問いを聞いたミクは困った表情をしながら首を傾げた。
 意外だな。詰将棋がいらないって訳ではないだろうし、一体なんなんだろうか。
「どれも内容がつまらないのか?」
 ミクはゆっくりと首を振り、辺りを見回して本棚から取り出している本の背表紙を指差した。どうやらタイトルの一部分を指し示しているようで、そこには『簡単』と書いてあった。
「全部簡単なのか?」
 ミクは頷く。
「んー……。困ったなぁ」
 ここにミクの満足する本が置いていないなら大型店舗に行かなきゃならないかもしれないな。
 大型店舗にはミクを連れては行けないし……。
 そんなこんなを真剣に悩んでいると俺の後ろから誰かが声を掛けてきた。
「そのお嬢ちゃんが詰将棋するんかい?」
 話しかけてきた人物は店主だった。
「そうなんですよ。でもこいつにとったらどれも簡単みたいで。この場所以外には詰将棋の本って置いてないんですか?」
 俺の言葉に店主はすこし驚いた表情をしている。
「ほー。そりゃたまげた。このメンコイ嬢ちゃんがねぇ。よしちょっと待ってろ」
 そう言った店主はレジの奥の部屋へと入っていった。
 待つこと五分程。店主は一冊の本を持ちこちらへ帰ってきた。
「ほら緑色の嬢ちゃん。これは難しいぞー」
 店主はそう言って手にもった本をミクに手渡す。
 ミクは本を開き中身を読み始めたが、さっきまでとは様子が違う。
 徐々に本を顔へ近づけていき、至近距離で小難しい顔をしながら本と睨めっこをし始めた。
 もしかして本当に難しい本なのか……。
「あれは難しすぎて売れんかった本なんよ。ここに来る将棋好きのじいちゃんらでも解けんかった。そのせいもあって、普通の難しい詰将棋の本は売切れてるんだわ」
「なるほど。そういうことだったんですか」
 しかしそこまで難易度の高い詰将棋をミクが解けるのか?
「なぁミク、それはちょっと難しすぎるんじゃないか?」
 真剣な表情で問題を読んでいたミクは本を閉じて俺に手渡す。
「これで大丈夫ってことか?」
 ミクはなんでもない顔をして頷いたが、ホントにこれでいいんだろうか?
「一問も解けなくてもしらないぞ?」
 この問いにミクは、ウィンク親指立てるのポーズをビシッと決めた。
 ミクは俺の心配もよそに、この本をえらく気に入ったようだ。
「んじゃあこの本売ってください」
 そう言って俺が本を店主に差し出すと店主は、
「持ってけ! 相棒!」
 なんて事をいいながらミクとまったく同じポーズを取りやがった。
 一体俺にどう反応して欲しいのかはわからないが、
「ありがとよ! 相棒!」
 とだけ言い残し俺はミクと店を出て車に乗り込んだ。
 なんだか相手するのが面倒な気がしてこんな対応で店を出てしまったが、いつかまたこの店には来よう。これを機会に純文学に目覚めるってのも悪くはないかもしれない。

 本屋から家までの道のりはほとんど時間なんてかからなかった。
 俺はミクを家に帰してそのままレンタカーを返しに行った。
 すでにミクはテレビのチャンネルを自分で変える事が出来るようになったし、今のミクには詰将棋の本があるので心配はなかった。
 案の定、俺が帰ってきた時のミクはコタツ机に将棋セットを広げて詰将棋に熱中していた。
「ただいまー」
 ミクは本と睨めっこしたままで、「行ってらっしゃい」とでも言いたいのか俺にゆっくりと手を振る。
 ちゃんと話を聞けっての。俺は今帰ってきたの。
 あとは飯を食って、風呂に入って寝るだけだな。少し疲れたが後一踏ん張りだ。
 今日のメニューは秋刀魚だ。旬から少しずれてはいるがミクたっての希望だからな。
 さすがにわざわざ七輪を使うほどこだわりはしないが、俺は焼き網を使って焼いてやった。ミクの初秋刀魚を出来る限りおいしく食べさせてやりたいと思ったからだ。
 ミクはその間ひたすら詰将棋をやっていたが、どうやら一問も解けていないようだった。
 しかし飯を食ってる最中も、将棋セットをコタツ机の端に置いたまま詰将棋の本を眺めていたので、ミクにとってはこれぐらいの難易度が丁度良いのかもしれない。
 このときにはすでにミクは体重の事を忘れているようだった。
 秋刀魚一匹でご飯を四杯も食べたくせに、今も詰将棋をやりながら買ってやったお菓子を食べ続けている。
 変なトラウマを作らずに済んで安心したよ。
 俺が風呂から上がってもミクは体勢一つ変えずに詰将棋と睨めっこをしている。
「なあミク」
 ミクは俺に声を掛けられ詰将棋との睨めっこを止めてこちらに振り向く。
「敵との戦いはどうなってるんだ?」
 ミクはゆっくりと首を横に振り俺を見つめ続ける。
「そっか、それだけだから。詰将棋、続けて良いよ」
 ミクは頷き、詰将棋を再開する。
 いつも俺の問いかけを無視したりするが、ミクは俺が本当に訊きたい事を尋ねた時は絶対に茶化したりしない。きっと声色やなんかで判断しているんだろう。
 ミクが俺の事を適当にあしらったりするのは、別に嫌いだからとかそんな事じゃないのはわかってる。
 ミクは俺の事を考えて自分の行動を選んでくれているんだ。
 優しいボーカロイドだよ。ホントに。

「なあミク」
 ミクはもう一度詰将棋を止めてこちらへ振り向く。
「将棋、やるか」
 そう言って俺がミクの向かい側に座ると、ミクは詰将棋の本を買ってやった時の何倍もの笑顔を俺に見せて大きく頷いた。

第4話完
4

石目 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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