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第七話『Game`s up』

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「ふー・・・・・・・・・・・。」

疲れた。

二、三歩よろめいてから、萱原は手近なソファに倒れこむようにして座った。

こめかみに手をあて、そのままずるずると横になる。

―――――――全く、あの馬鹿め。

心中で、先程応急手当をしてやった男に対して愚痴を呟いた。

「お疲れのようだね。」

横になっている私に突然、背後からそう声が聞こえた。

「そりゃ、疲れますよ。 甲斐谷さん。

仕方なく迎えに行ってやったら、待ち構えていたのは大手術ですよ?

それと、足音殺して背後に立つのは止めてくれますかね?」

恐らく、起き上がって後ろを振り向けば

スーツを着込んだ満面の笑みの優男が居るだろう。

「ハハハ、すまないね。

これは、どうしても癖になっていてね。」

実を言うとこの優男が私の雇い主、つまり【JOAT】の社長だ。



甲斐谷 涼。

「JOAT」の代表取締役。

先代である父と同じく、若き頃から数々の戦場を

渡り歩いてきて生ける伝説と化している傭兵。


でもまぁ、何処から見ても私にはそこいらに居る

優男にしか見えてない。

それで私は雇用者である訳なのだが、ソファに寝転んだまま応じている。

彼の性格からして、そういう物は一切気に止めないだろうと思ったからである。

第一、だらしのない姿なら何度も見られている。

今更、気にすることも無いだろう。

「全く、信じられます?  あの馬鹿、

腹部に四発も弾丸受けたままずっと気付いてなかったんですよ?」

「ほうほう、それはそれは。 いやー、元気な子だね。」

・・・・・・・・・・・・元気って。

「康平も喜ぶんじゃないかなぁ。  それは、そうと萱原君。」

瞬間――。

甲斐谷の両の瞳が鷹のように鋭くなった。

「―――――――それでアレに異変は、なかったかい?」

「は・・・・はい、特に何も。」

寝転んだままの状態であっても

周りの空気が一瞬にして、変わったのが分かる。

胸に妙な圧迫感を感じる。

一瞬の静寂。

萱原の眼鏡をかけた怜悧な顔に冷や汗が垂れる。

「そうか、ならば良いんだ。

その件については今後とも、宜しく頼むよ。

では、ボクはこれで失礼するから。」

いつも通りの陽気な声で返答して甲斐谷は部屋を出て行った。

ガチャン、と扉が閉まる音がそれに続く。

あとに残された萱原は、そこでようやく安堵の息を吐いた。

「ぷ、ぷはぁっ・・・・・なんちゅう人だよ、全く。」

たまに、あんな風に無意識に威圧してくるから困る。

「はぁ・・・・・・・・・ニュースでも見るか。」

ソファの上で起き上がって、リモコンを手にテレビに電源をつける。

不意に、ブンと小さな、そして耳障りな音。

それに続いて、賑やかで空々しい人の声が耳に入ってきた。

「・・・・・・・・・・・・・・。」

無言でチャンネルを切り替えていってると、

一つのニュースが緊張が抜けてぼやけていた意識に引っかかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・へぇ。」

流れていたニュースを聞いて、萱原はニヤリと笑う。

「・・・・・・・・いい笑顔するじゃないか。」

其処には、力強いガッツポーズをしている青年の姿が映し出されていた。











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今日あった大惨事の一部始終を伝えている

ニュースを私は、ぼけーっとして見ていた。

「ねぇ、これあんたの仕業でしょ?」

帰ってくるなり、奥のベッドに飛び込んだ男に問いかける。

「・・・・フェアじゃない、フェアじゃないな、御前。」

「・・・・・・・・。」

・・・・・・駄目だ、寝言しか返ってこない。

「・・・・・・・・・・・まぁ、いいか。」

どうせ無駄な事だ、と私は四角い画面の中へ再び視線を戻した。

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