第6話『初めての合コン（？）　後編』

「とりあえず、中に入ろうか」
拓人が提案した事で、全員遊園地へ。入園すると同時に充が俺に呟いた。
「俺ら、自己紹介してなくね？」
確かに。向こう側は自己紹介してくれたが、俺らはしてない。しかし、それに気づいたのか拓人が
「俺ら自己紹介してないよね？俺、拓人よろしく。ほらお前らも」
「千浩です！！」
コイツ、元気いいな
「充です」
あれ？いつもよりトーン若干高くない？
「湊佑ッス、よろしく」
見ての通り、帰りたいです。とは言わなかった。拓人たち（主に千浩）に恨まれそうだしな。それより俺はマジで目が丸くなるんじゃないかと思う光景を目の当たりにした。それは、充が俺らにしか見せた事のない笑顔で女子と話してる…！学校の女子にはまず見せない笑顔だ…！
「ど、どうかした？えーっと湊佑くん？」
そう話し掛けてきたのは、カナちゃんだった。あれ？もしかして今日ツイてる系？
「い、いや何でもない」
うはｗｗｗなんかテンション上がりそうｗｗｗ
　昔から俺はそうだったな。行きたくもないところに連れて行かれても、結果として楽しんで帰ってくる。学校行事なんかそうだ。体育祭なんかも面倒くさいと言っておきながら、最終的に楽しむからな。
「なあ！提案あるんだけど！」
一番前を歩いてる拓人が大きな声で言った。それと同時に立ち止まった。みんな拓人の近くに寄って
「“イチイチ”でまわらない？合コンなんだしそれくらいいいっしょ？」
「「「「賛成！！！」」」」
女子の声と千浩の声がハモッている。うわ～、そういうの苦手。
「どうやって決めんの？」
充が尋ねた。確かに俺も気になる。
「合コンだから簡単っしょ。今一番気になってる人と行動する。ＯＫ？」
はは～ん、なるほど。簡単だ。けれども俺はあいにくカナちゃんを誘うほどの勇気は持っていない。その時充が……！
「じゃあ、一緒まわろうか。ミカちゃん？」
誘ったよ。充が誘ったよ。なんだよ今日に限って積極的か？オイ。誰かに操られてるとか？
「ハァ…」
溜め息を漏らすのとほぼ同時に、カナちゃんと目があった。
「い、一緒にまわる？」
誘われたよ。やったよ。
「あ？ああ、じゃあよろしく」
という訳で、なんか俺ツイてます。とりあえずこんな感じの組み合わせになりました。

拓人＆マミちゃん
千浩＆ナナちゃん
充＆ミカちゃん
俺＆カナちゃん

ま、いんじゃない？なんか楽しくなりそうな気がしてきた。ん？さっきと供述が変わってるぞ？俺。
「じゃあ、ここからは各自自由にってことで。集合時間は、今11時でしょ？だから4時くらい？5時？どっちがいい？」
「間とって4時30分でよくね？」
「ＯＫ、じゃあ4時30分ここ集合で。かいさ～ん」
さて、どこに行こうか。ここには来た時全くないからな。
「とりあえず、あっち行こうか」
ジェットコースターがある方向を選んだ。遊園地と言ったらコレでしょ。
「え？う、うん」
やっぱりまだぎこちないな。まぁゆっくり仲を深まればいいっしょ。
　ジェットコースターに近づくにつれてカナちゃんは緊張していってるみたいに見える。もしかして、ジェットコースター怖いのか？
「どうしたの？」
「え？あ、えっと恥ずかしいんだけど、アタシ、ジェットコースター怖いんだよね。だから少し乗りたくないなぁと思って」
ビンゴ！
「別に恥ずかしがることじゃないと思うよ？ジェットコースター怖いって人いっぱいいるじゃん」
「え、あ、でも」
「とりあえず乗ろうよ」
少し強引すぎたか？嫌なものに無理無理乗せるのも少し気が引けるな。
　と、いうわけでジェットコースターの列の最後尾に並ぶ。けれども、次から次へと他の人が並ぶから一瞬で最後尾ではなくなった。
「実はアタシ…」
カナちゃんが重たそうに口を開いた。
「今日あんまり来たくなかったんだよね…」
あら、まぁ奇遇。
「実は俺もなんだよ」
「え？本当？」
「本当だよ。昨夜他の友達から出かけようってメールがきてね。それに昨日急に今日のこと教えられたし。」
「アタシも！急にマミが合コンする～って。他の二人は乗り気だったから仕方なく…」
カナちゃんの表情が明るくなった。気がした。
「俺も同じようなもんだよ」
会話が弾み出したらもう止まらない。あっという間に自分達にジェットコースターの順番がきた。
「あ、でもジェットコースター怖いっていうのは本当。」
「本当の事を言うと俺も絶叫マシーンは乗りたくない」
そう俺は小さい頃に親父に無理矢理コイツに乗せられて以来、絶叫系が怖くて乗れない。

ギャアアアアアアアアアアアアアア！！

やっと終わった。怖ェよ。なんであんな高い所まで行って、急な角度であのスピードで落ちるなんて、誰が考えたんだ。ちくしょう。
「ふーっ！怖かったね！」
「あれ？カナちゃん。怖いって言ってた割には、顔色スッキリしてないッスか？」
ぶっちゃけてしまった俺達は会話が普通にできる。
「次、お化け屋敷行こうよ！」
なんだか実はもの凄く明るい娘なんじゃないか？この娘。

色々なアトラクションに乗り、4時30分　集合場所

「あ！観覧車乗るの忘れた！」
カナちゃんがそう言った。そういえば乗ってない。
「安心しなさい。カナ。これから乗るから。メールで知らせたはずよ？乗っちゃダメって」
「あ、ホントだ。」
「というわけで、最後に観覧車に乗りまーす」
俺達は一番最後に乗った。

観覧車内

「わー！高ーい！」
カナちゃんは子どもみたいに目を輝かせていた。
「アタシ達ってお互いフルネーム言ってないよね？」
「あ？ああ。そうだな」
「アタシ、岡本香奈（おかもとかな）」
「俺は二見湊佑。」
「そうだ！電話番号とメアド教えて？今度は合コンとしてじゃなくて、二人でどっか行きましょ？」
おや？おやおやおや？この展開はフラグが立っているという解釈でいいよな？な？
「いいよ。お誘い待ってまーす」

観覧車から降りまた集合場所

「このまま、解散でいいよね？」
「いんじゃない？」
やはりこの場はマミちゃんと拓人が仕切っている。
「じゃ、今日は楽しかったでーす。タックンありがとね」
「いやぁ俺達は特に」
おい、拓人。女の甘い言葉に負けるんじゃない！お前はそんな奴じゃないはずだ！
「じゃバイバーイ♪」
女性陣が先に帰った。電車は俺らとは違う方向だ。
「今日は実に楽しかったな。なぁ、充。俺は女の子と一緒に…」
千浩はよっぽど楽しかったのかニヤニヤしながら、充に話し掛けている。
「そう、だったなぁ」
充、お前やっぱり今日変だ。いつも女子に関してニヤニヤしないはずだ。でも、分からんでもないぞ。俺も楽しかったからな…
「お前ら振り返ってるところ悪いんだけど、急行くるよ？」
拓人にしては、いい気遣いだ。
　俺達は慌てて乗り込んだ。駆け込み乗車はご遠慮できませんでした。スイマセン。

なんやかんやで家路

　拓人たちとは駅前で解散した。今日は楽しかったが疲れた一日だった。しかし、なぜだろう。家に近づくにつれて、妙な胸騒ぎがする。それもどんどん大きくなる。
　家に着いた。扉を開けようとすると、開かない。鍵がかかってる。まずい親父が帰ってきている……！